第20話


次の日。


達也くんは普通に学校に来ていた。


「おっすミヤ、おはよ」


「___た、つやく…ん」


「ははっ、なんだよその顔。」


はは、と笑う達也くん。


一昨日までの控えめ印象はどこにもなく、


明るく、活発な少年だった。


もはや別人。


名前と見た目が一緒な、別人のようだった。


「どういうこと?達也くんは昨日…」


「おう、死んだ。ってか死んでたけどな。どう?ビビった?」


死んでいた?


どういうことだろうか。


「ついでに言っとくわ。俺、幽霊なんだよ」


「え…、冗談?」


「いーんや、本気。マジ。」


「やめて、そんな冗談…。笑えないから」


冗談じゃない。


そう分かっていても、体が、心が拒否してしまう。


達也くんの顔が、いつにもまして真剣に、


真面目に、神妙なのだ。


「俺な、幽霊なんだよ。生まれたときから。」


ああ、死産って訳じゃねえ___と。


達也くんは、すこし間をあけて。


「母さんも父さんも幽霊だし、その間の俺も幽霊なんだ。」


「ユウレイ…」


「だから、飛び降りたっていうか、ジャンプしたってイメージ。」


「俺からしたら死ぬって感覚がよくわからないんだよな」


「だから”死ねる”のかなーって気になっただけ」


「ほら、お前言ったじゃん」


「『アイツらもビビるかもよ』ってな」


大事な秘密。


自分が幽霊だという告白。


「なんで、たつ」


「あのさ、俺思ったんだよ。やっぱ自分って大事だなって」


「幽霊って、やっぱ怖いじゃん。」


「でも、昔の俺はかっけーなって思ってたんだよ」


「だから、皆に言ってた。」


「俺は、幽霊だぞ!ってな。」


「でも、それを聞いた奴らはみんな口を揃えていうんだ」


「怖い。近寄らないで。気持ち悪い___」


「その頃から俺は塞ぎ込んでしまった。」


「大きな声を出すのをやめ、静かに、控えめに過ごした。」


「そしたらコレだよ。」


「小中学生の壮絶ないじめ。」


「俺、気付いたんだよ」


「隠すより、ひけらかした方がいいなぁ___って」


「だから……別人みたいに?」


別人に見えてる?俺___と。


「やっぱイメージついちゃってる?まあ無理もないけど」


「俺さ、今日からコレでいくわ」


「もう、怖くない」


「もう、負けない」



「だから、応援しとけよ、ミヤ!」



「___うん。応援する!」


久し振りに、お互い笑顔になった気がする。


懐かしく、心地よい。


また、戻れたと思うと。


心が躍り、軽くなるものだなあ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る