第12話


まあ、僕達が至ったのは、結局ご飯の問題だった。


「洗濯機あるけど、ミヤ服洗濯する?」


「遠回しに僕に服を脱げって言ってるよね?!」


「あれ、お前今日はスカート履いてないのか」


「履かないし履いてたらどうするつもりだったの?!」


「うーん、どうしてほしかったんだ?」


「そういう感じか~~、いや、何もしてほしくないよ?!」


「あー、まあ、うん。やってほしいってことか」


「何もしないでって言ってるの!」


なんかジリジリと近付いてきてるけど。


「一応さ、その…。お菓子はあるんだけど」


「お菓子持ってきてたの?!言ってよ!」


「いや、これ…、お前好きか?」


「うわああ?!学校にそんなの持ってこないで!?!?」


なんというか、その…。


お菓子のパッケージが、いわゆる…


えっちな感じのパッケージだったのだ。


「いやあ、欲には抗えなくって、はは」


「『はは』じゃないよ?!学校のルールにまで抗わないで?!」


「えへ☆」


「もお~~~…。いいけど、知らないよ?」


「大丈夫だ、そうなった時はお前が女装してくれれば問題ない」


「いやだよ?!」


とまあ、不思議な会話を達也くんとしながらも、


手はてきぱきと食料を探していた。


と言っても、家庭科室には豊富な調理器具があるだけで、


食材はさらさらないのだが。


「……よし、もう一回職員室行くぞ」


「え?なんで?」


「行けば分かるよ、行こう」


***


「本当にあったよ…」


達也くんの意見はこうだ。


職員室にある、山田先生の机を掘り起こし、


食料になりそうなものを見つけるということ。


ないだろうな〜、と思いながらがしゃがしゃやってたら、


見つかったのはグミだった。


「……って、山田先生もこのグミ食べてるの?!」


「まあそのグミ教えてくれたの山田先生だし」


「職場に持ってくるなよ?!」


そう。


見つかったグミは、


なんかちょっとえっちなパッケージのグミだった。


職場になんて爆弾持ち込んでいるんだ…と思いながらも、


中身が結構無くなっているところを見ると、


グミ自体はおいしかったんだろう。


「〜〜、〜〜〜!!!」


「げ、」


「ん?ミヤあれ知り合い?」


「ううん全っ然知らない人!(早口)」


なんか自分の見たことある見た目の人がいるけど、


多分見間違いだよ、おそらく!!


と。


その人は張り付いていたガラスをぶち破って、


職員室の中に入ってきた。


「うそん…」


これにはさすがの達也くんもびっくりしたらしく、


若干オネエな口調で驚いていた。


「扇くん〜、大丈夫〜〜?」


「し、しとね従兄にいさん…」


平額褥ひらびたいしとね


それは僕の従兄弟の名前であり、


恐ろしいストーカーの名前だ。


「扇くんが困っている感じがしたから、駆けつけたんだ」


「どうやって感じ取ったの…」


「盗聴器」


「ひえーっっ?!?!」


怖い、怖いよ褥従兄さん?!


「で、なんで来たのさ」


「はい、おかず。食べるものなくて困ってたんでしょ?」


「え、あ、ありがと…」


なんだ。


いつもまともじゃないからついつい。


「感謝したってことは僕を受け入れたってことだよね。じゃあ…」


「ストップストップ、暴走してるよ」


別に受け入れてないから。


「あ、これとこれは温めてね。あと…」


と。


褥従兄さんが言いかけたところで、


褥従兄さんのスマホが振動した。


どうやらメッセージか何かがきたみたいだ。


「…………………」


とてつもなく凄い内容が書いてあったのだろうか。


従兄さんはスマホをじっと凝視して。


僕に「またね」と言って去ってしまった。


幸いなことに、おかずは残しておいてくれたらしい。


「えっと……、ミヤ」


「あー、その」



「その猫耳、どうしたんだ?」


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