第3話


目が覚めた。


深夜の3時に。


眠いです。


寝起きは悪いほうなので。


まあどれだけ頭の中で言い訳を考えても、


目覚めてしまうような出来事が、近くで起こっていた。


うるさい。


とにかく、うるさい。


眠い、とかもう全部ふっとんだくらいうるさい。


「…あ、もしかして外で工事か何かやってるのか…」


スウェットの上にいつものパーカーを羽織って、


玄関のドアを開いた瞬間。


髪の毛が金色に光り、


幻想的で神秘的な炎を撒き散らす、


見慣れた妖怪、『月見紗綾』がいた。


もちろん戦闘中。


ちなみに、相手は、妖しい光が特徴的な、朱の瞳の大きな猫だった。


うにゃあ、と声を出す猫の背後からは、


大きな黒い手が何本も出ていた。


と。


「私は仙狐。あぁ、まだ500歳くらいだけどね。」


彼女は、仙狐の中でもかなりの変異種。


仙狐になれるのは、齢一万歳ぐらいでなれるものと言われているが、


彼女だけは特別である。


彼女は、500歳ほどで、仙狐の試験を受け、合格した。


異例中の異例であり、その中でのトップクラスの実力者なのだろう。


「っつーかさ、そろそろくたばったらどう?本体じゃないにしろ、さ」


イラついてきたのか、少し怒りを交えた声で彼女は言った。


狐のような、いや狐の目で猫を睨みつける彼女は、


威厳があり、高貴さがあり、恐ろしさがあった。


『あっはは、さっすが狐のお姉さんだにゃ。そうだ、俺は偽物にゃ』


危険を察知したのか、彼女はこちらに跳んできて、


自分を守るように立った。


『しかも、これは俺の身体じゃにゃいし。』


そう言う猫の声は、どこか、聞いたことのあるような気がした。


『用心しとけ。明日は攫いに来るにゃよ』


***


来週の月曜。


いつものように、自分の席に座り、


授業の準備をして、授業の予習、振り返りをする。


いつもとなんら変わらない。


姫野もいる。


ギャル美もいる。


柊也もいる。


ただひとつ、違うところがある。


二人が喧嘩していない?


___否。二人はさっき目玉焼きか卵焼きかで喧嘩していた。


姫野が馬鹿?


___否。姫野はさっき東大入試のための勉強をしていた。


では何が違うのか?



______いつものへらへら笑う、扇くんがいなかった。


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