第2話 誘い

「ところで…。どんな噂?」

意外にも、食いついたのは柊夜だった。

「それはね~…。夜に学校に行くと…。『オイデサン』がでるんだって!キャー!」

はて。オイデサンとは何だろうと思った矢先。

「べべべ別にそんなん嘘だろ!あ、あはは…」

柊夜がビビりなのに気づいたギャル美は、目をギラリとさせ、ニヤリと笑った。

「あれあれ、柊夜くん、怖いのぉ~?」

挑発的な目で柊夜を煽るギャル美。

「あら、ギャル美さん、言い方がよろしくないですわよ。」

そんなギャル美を窘める姫野。

「さっきからご飯進んでないじゃん。食べなよ。」

少し声が震えているが問題はない。

何故なら教室が寒いからだ。

「おお、確かにな。というかギャル美、ご飯中にそんな話すんなよ。ビビるだろうが。…ねここ、サンキューな。」

「ううん、別に。…ところでギャル美、オイデサンってなに?」

「えっ、ねここ知らないの?!今すごい話題になってるのに。…オイデサンっていうのはね、夜中に子供を『オイデ…オイデ…』って言ってきて、そこにいくと、おじいさんがいて、そのおじいさんに…食べられちゃうんだって!」

柊夜の方から、「ひえぇ…」という情けない声がするが、どうでもいいのでいったん無視する。

オイデサンの中身は、老人らしく、声に釣られて行ってしまった者は、食べられてしまう…というなんとも嘘臭い噂だった。

だが、嘘臭くても、怪異は噂で強くなる。

どれだけ変であっても、噂の量が多かったら、とても強い妖怪になってしまう。

「ねぇギャル美、被害者ってでてる?」

「うん、10人の被害者がでてるよ。…もしかして、『生徒会のお仕事』?」

軽く私は頷き、すぐまた考える。

「では、生徒会長の仕事をやらせていただきますよ…。柊夜さん、情報データを。」

そう。

姫野は生徒会長。

そして、この場にいる全員が、生徒会なのだ。

「…。噂の量、380の290で、赤。規模、280の142で黄色。見た目は老人で、オイデ…の繰り返し。しがれた声15。危険性、1000の460で緑。被害者数は10。総合危険度10000の500で緑。……これが得られた情報だ。」

生徒会長含め、生徒会全員は、能力を持っている。

そのうちの柊夜は「情報」。知ったもの、事象、人。すべての情報を知ることができる。

「ふむ…。緑ですか。いいですね。まだその程度の時にやれるのは喜ばしい。……皆さん、放課後、用はありますか?」

「特にないかな~」

「ないな。」

「ない。」

…長い長い私達の物語が、今、始まる。



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