第2話
「ていうか…。噂になってたけど、なんかした?」
「あ、だから妖力がすごい上がってたんだね。特に何もしてないよ」
にこりと笑う彼女は、妖怪だ。
この妖怪は、妖怪の貴族のひとり。
この妖怪は、妖狐の王族のひとり。
この妖怪は、かつて人間界に悪名を轟かせたひとり。
親につけられた名は、とっくの昔に捨て、
現在は『
人間界に留まっている。
私は、幼少期からこの妖怪と共に過ごしてきた。
そのうち、王の妖力の影響を受け、妖怪と成ってしまった。
「九も尻尾あるの?」
「生やそうと思えば、いけるんじゃない?」
「そんな簡単に生やせるものなの…?」
持っていた荷物を自分の部屋に置き、
彼女のいるリビングへと向かう。
どうやら、この家には妖術がかかっているらしく、
自分や、彼女以外の人間には、この家は古民家に見えているらしい。
ちなみに自分には結構真新しい家に見える。
自分の家に友達を呼んでみたいものだが、
この家に呼ぼうものなら、
くそホコリまみれの、汚い廃墟に見えるだけだろうから、
呼ぶことは敵わない。
「あ、ねここ、卵買ってきて〜」
「わかった、買ってくる」
彼女からお金を受け取り、近くのスーパーへと向かう。
近く、と言ってもそこそこ遠いのだが。
そうやって、道を歩いていたら。
うしろから肩をぽん、と叩かれた。
「やっほ、月見さん。もしかしてお家このあたりなの?」
渋々後ろへと振り返ると、
ヘアピンを沢山つけ、
薄灰色の髪に、
扇くんが後ろにいた。
「扇くんも、このあたりなの?」
「うん。ていうかそこだし。何かお買い物?」
制服にパーカーって、それが私服?、と扇くんは言った。
確かに私の服は、学校の制服の上に
灰色がかった青のパーカーを羽織っている、というかなりラフな服装だった。
ラフというか、雑というか。
「まあ、そんなところ。……じゃあ、これで」
「うん、ばいばい。また明日学校でね。」
「明日土曜日だけど…。またね」
そう言い残し、軽く走ってスーパーへと向かった。
***
「ただいま、買ってきたよ」
「うい、ありがとね〜」
「ちなみに今日のご飯は何?」
「今日?今日はね、いなり寿司!」
それのどこに卵が必要なんだよ、とツッコミをしたくなるが、
卵を使うレシピなのかもしれない、と即座に思考を切り替えた。
まあ何分、人並みにしか料理ができないので、
自分が口を出すのはおかしいだろう。
自分の部屋のベッドに転がりながら、
スマホを触る。
パッと開いたのは『MINE』。
少しスクロールして、友達のアカウントを選択する。
MINEでの会話は、以下の通り。
ーーー
「ねえ、扇くん」
「何〜?ヾ(≧▽≦)ノ」
「学校周りで、何か噂ってない?」
「相変わらず噂大好きだねぇ〜┐(´д`)┌ヤレヤレ」
「あるとすれば、『去り猫』とか?(・ε・`)」
「去り猫?」
「来週学校で話そっか。長い話になるし( ノ╹ヮ╹)ノ」
ーーー
「去り猫…。知らないな。」
調べてみたものの、特に目立った文献も無く。
「なんだろう…。知ってるかな」
「ねここ〜、ご飯できたよ…って何してるの?」
現在の私の部屋は、妖怪に関しての文献が大量にある。
つまり、散らかっている。
きったね。
気づかなかった。
「えっと…。調べもの。」
「ふ〜ん、なんの妖怪の?アレだったら私が知ってるかもよ」
「去り猫だって。…文献になかったから多分このあたりだけの妖怪かなって」
「へぇ、私もそれは聞いたことないかも…」
二人でしばらく去り猫について討論したものの、
結局はお腹がすいたから、ご飯食べようという話になったのだった。
***
私の日課は、ねここが寝静まった頃、外に出て散歩すること。
このあたりは結構田舎だし、あんまり人がいないから、
人目も気にしなくていいので楽だ。
「っと…。ついにお出まし…。いや"ついに"じゃあないか。」
にゃあ、と鳴く、猫の妖怪は、朱の瞳を光らせながら、
こちらに近づいてきていた。
「来なよ。言っとくけど、私そこそこ強いからね?」
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