第1話 シェアボトル
元々は、転勤族が見知らぬ土地で一人さみしく酒場で飲むという場面で、誰かがご自由に、と提供してくれたボトルがあったら───世のおとーさん方の心にそっと寄り添えるのではないか。……転勤族同士が、自由にシェアできるボトルキープというものがあったら、慣れない赴任先に行くのがちょっと面白くなるのではないか、という思いつきから始まったらしい。
そして、慣れた頃に……また転勤。
そんな時に、ようやく慣れた任地の先達が、後から来る転勤初心者に残す、シェアボトル───。
残ったボトルを、誰かのために公開する。そんな、ちょっとした心遣いが転勤族には嬉しいのかもしれない。
転勤族以外でも、特定のアーティストのファンであるなら、それはもう飲み仲間。そんなシェアの仕方もあるという。
あるいは、特定の作品の読者同士……そういうのも、おもしろい。
同好の志が、次に訪れるかもしれない同好の誰かに、一杯のお裾分けを残す……。
殆どが、スマホ越しの交流しか持たない現代人に───ふわりと舞い降りた、手触りの関係。
どこの誰だか知らないけれど、そんな心遣いがあってもいいかもしれない。
ここに、作品を書き残す人たちの多くはきっと、職業作家ではなく───どこかで誰かが、それと知らずにすれ違うような、そんなありふれた仕事についている人がほとんどだろう。
そんな中でも、同好の志だけがわかる符丁でも添えて、カクヨム・ライターなら誰でも使えるボトルが置いてあったら─────。
旅先の何気ない思い出が、かけがえのない記憶となってくれるかもしれない。
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