公開空地
天川
第0話 公開空地
公開空地、なるものがあるという。
都会のなかで、ぽっかりと空いた……他者の視線と喧騒からいっとき離れられる、ほんの少し切り取られた空間。或いは、こじんまりとした催し物を供するための、ちょっとしたユーテリティ・スペースとして。
言葉の意味としては、ビルの入口動線や、空いた空間に設けられた緑地……、その他建ぺい率や消防法対策関連で必要になった空間───。そういった、込み入った都会の中でぽっかりと浮いた空間を、企業などが公開スペースとして解放する。
それが、公開空地と呼ばれるものだ。
単に隙間の空間として、静かに喧騒の隅に佇んでいる場合もあるが、その幾つかは緑化されていたりベンチが置かれていたり……。そこを訪れる人が、過ごしやすく落ち着ける空間として設えられていることもある。
公園、とは違い……そこには明確な所有者が存在する。だが、そこに立ち入ったり休憩したりすることをことさら咎められることはない。何気なく通り抜けている人もいれば、お気に入りの休憩場所として利用している人もいる。中には、夜間だけ訪れて……趣味を楽しむ空間として利用している人もいるだろう。
内情的には、ビルなどの建築物の中に広い空地を設けることにより、容積率や高さ制限に緩和ボーナスが付くという、……建物所有者側の都合も含まれている。
まぁ、そこは今回は置いておこう。
趣旨は、そこではないのです。
都会に住む者にも、喧騒を離れる時間と空間があっていいはずだ。
田舎から出てきた者が、いっとき心を落ち着け……しばし佇む空間があっていいはずだ。
それら、建物と建物……ひいては、人と人の隙間となる空間。
それが公開空地。
隙間であるが、本質は人と人をつなげる空間だ。
その隙間……余白がなければ、きっと人同士はとても息苦しいものになるだろう。
物事には余白があっていい。
杓子定規に、ルールに……概念に縛られてばかりいては、新たな発想も他人に対する寛容さも生まれないだろう。
社会の中にある、公開空地。
物理的なスペースだけでなく、誰かの癒やしとなる……ふとした時に立ち寄れる空間が、ここにあっていいと思う。
何か、話したいことがあるなら、ここに書き残すのもいいかもしれない。
誰かが目にして、それに誰かが応えるなら────
このエッセイは、カクヨムにおける公開空地に成りうるのだから。
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