第3話 終幕
危険だというのは当たり前の話だが、この
その音を聞くと、聞いたものは命を落とす。最初に聞いた時は本当かと怪しんだが、実際に死者が出ているから仕方ない。
そして
噂じゃ古代には何か地上で災厄が起きたから、そのための避難場所だったんじゃないか、実は古代人のへそくりなんじゃないか、なんて言われているが、真偽は不明だ。
ただ、誰かと一緒に入ること。そして先に入った者と同じ場所へ行くことはできる。
……その人間の、血液を持っていれば。
「……よしっ」
倒した魔物が塵になって消えていく。
そんな謎だらけで危険な場所ではあるが、一人になりたい時はありがたい。常に綱渡ではあるが、それでもここなら邪魔は入らない。
「そろそろアッシュも帰ったかな……」
ここに来てからはしばらく時間が経っているはずだ。アッシュも俺に愛想を尽かしたことだろう。
幼馴染への義理からくる恋愛感情、もしくは男を知らないだけか。
人付き合いは得意な方じゃない幼馴染だが、国から誘いが来たとなれば周りは放っておかない。
田舎村から出てきた一般人の俺と、才ある美女じゃ釣り合いも取れない。
「俺も帰るか……眠てぇな」
さっきからひどく眠い。いろんなことが立て込んでたから無理もないか。人騒がせな幼馴染だったが、言いすぎたかと今更に後悔が襲ってくる。
あれぐらい言ってやるのが、本当の優しさかもしれない。アッシュも分かってくれる、きっとそうだ……。
「……ッ!?」
何かの気配がした。おかしい、俺は誰かと入ったりもしていないし、誰かに"血"を渡してもいない。
……いや、渡していた。でもわざわざ、俺なんかのために来るか?
─────国が、俺のために動くのか?
「コプッ」
思考の末に、俺は口から血を吐いていた。冒険者じゃない人間が見れば、悲鳴を上げるような量の血だった。
俺の胸を貫く何か。まるでナイフのような鋭さをしていたそれは、間違いなく俺の心臓を狙っていた。
ぼやけた視界に映る、赤黒くて脈を打つモノが転がっていた。見たこともないのに、間違いなく俺の心臓だと理解してしまった。
そうして俺の人生は、あっけなく幕を閉じた。
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