第34話 これまでの死に戻りはきっと彼と出会うために
「どう考えても敵だろというような顔をしてるな……」
普通にバレてた。どんな表情してたんだろ。
「いや、俺は敵じゃない」
「だって、破壊の賢者って名前からしてアレだし、破壊神になりそうだよね?」
「何言っているんだ?」
真面目な顔をしてユーリが聞き返す。私変なこと言ってないのに!
「破壊の賢者はこの世界の摂理の一部を担っている。朽ちるとか壊れるとか、そういうのがあるのは破壊の賢者のおかげだとな。だから、破壊は悪いことじゃない。どうも悪印象に思えてしまうのはしょうがないことだが」
私はそれを聞いて首を傾げる。やっぱり少し変だと思う。
「眉唾物に思えるのよね。因果の賢者の話でも思っていたのだけど、たとえば因果の賢者がいなかったら物事の論理が乱れてぐちゃぐちゃな結果になるとか、そうじゃない気がするんだけどね。破壊の賢者もそう。朽ちるとか壊れるって自然現象だと思うから。ユーリ、私達なら言っている意味わかるでしょう?」
だって、私達のいた世界ではそれは当然の理なのだから。物が朽ちるのは魔法の力ではなく、微生物や酸化のため。それに故に違和感がある。
「たしかに、考えてみるとそうだな……。いくら魔法があると言っても物理や生物学で説明のつく話だ。では一体、破壊とは……」
ユーリはぶつぶつと独り言を言いながら考え始めた。
「待って、破壊の賢者が悪いやつじゃないことはわかったけど敵ではないの?」
「ああ。破壊・生命・時間の賢者は同盟――と言ってもいいんだろうな。そんな感じだ」
「破壊だけすごく浮いてない?」
「まあ、字面だけ見るとな……」
破壊の賢者の加護を受けている彼は苦々しく笑って言った。
「じゃあ、因果・混沌・秩序が敵なわけね?」
「そうとも限らないらしいが、敵と見做しておいた方がいいとのことだ」
「浅学ゆえ、話はよくわかりませんでしたがロザリア様は敵じゃないんですね。本当によかったです」
アイナが胸を撫で下ろして言った。
「ねえ、ユーリ。敵じゃないってことは私を守ってくれるってことだよね!?」
「ああ、もちろんだ。できる限り俺は君を守る」
その言葉が、たとえそれが彼の任務だからとしても私はすごく嬉しかった。
それから、私は死に戻りについて話しだした。隣にアイナがいるけれども、死に戻りに関しては問題ない。
私はもう60回近く死んでいること。
ニャリ・ロゴナスという暗殺者に一家全員殺されてしまうこと。
死に戻りをしながら父に稽古をつけてもらったことで私は体術面に関して強くなったこと。
魔法が使えるようになったこと(隣にアイナがいるのでロザリアと話したことは伏せた)。
ニャリ・ロゴナスが圧倒的に強くて一人ではどうにもならないこと。
そんなことを私はすらすらと述べた。言葉が溢れてくる。不思議な感じだった。
きっと――私はこれまで孤独を感じていたのだ。家族、私の本当の家族ではない人々に囲まれていたけれど、私を本当に理解してくれる人はいない。
ロザリアの身体を乗っ取っていることなんて流石に優しいあの人達には話せない。アイナにだってそれは同じだ。たとえ、アイナがかつてのロザリアにいじめられていたとしても、今の私の方がいいと言ってくれたとしても――話せない。
ユーリは初めてこの世界で出会えた、同じ境遇の人間。
相変わらずアイナは死に戻りに関しては半信半疑なようで訝しげな表情はしている。
ユーリは私の死に戻りの話を全面的に信じてくれた。そもそも転生ということからして突拍子もないことだ。それに死に戻りが追加されても些細な問題だ。転生に関して分かち合えている人間だからこそ、私の話も理解してくれたのだ!
「私わかったの。なんで今回、一周目をなぞろうと私が思ったのか」
「それはどうしてなんだ?」
とユーリ。
私は椅子から立ち上がり、言った。
「それはユーリ、あなたに会うため。今までの積み重ねも、ここでユーリと会うためだった。でもその積み重ねは必要なことだった。きっと、この積み重ねなくして会っても、すぐにニャリ・ロゴナスに殺されてしまっていただろうから。私が強くなる必要があったの。ユーリの隣に立てるように」
光明が見えた。ユーリとならきっとニャリも倒せる。
「だから、ユーリ。私と一緒に来て。私をこの地獄のループから解放して!」
私は彼の方へと手を伸ばした。きっと、彼はこの手を握ってくれるだろうから。
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