第26話 魔法の練習

「おはようございます、ロザリア様」

 魔力を測ると40。あれは夢だったのかと思い、朝食後に魔法を試す。

 すると――できた。魔法を使う、と強く念じただけでできてしまった。今まではどうやってもできなかったのに。それはやはり、ロザリアと魂を一部共有したからだ。

 私は手のひらに生成した小さな血の球体を浮かべる。槍にするイメージ。剣にするイメージ。イメージごとにそれは形を変える。動けと心の中で命じると動く。

 アイナは一瞥すると、特に興味もなさそうに朝食の片付け作業に戻った。私は長い間アイナと過ごし、アイナは私が魔法を使えないだろうと認識していると思っていたが、時間的に見れば私が魔法を使えないと打ち明けた時間の方が短く、彼女は使えて当たり前と思っているのだった。

 血の刃に消えるように念じると、それは消えた。

 魔導書によると、魔法は基本的に詠唱はいらないとのこと。詠唱とは自己暗示であり、した方が威力は増すが隙も大きい。技名として叫ぶだけでも効果はあるとのこと。ちょっと恥ずいけど慣れる必要はありそう。

「ブラッドランス」

 私が生成したのは穂の部分だけの、血でできた槍。細めのドリルという表現でもよさそうだ。長さは肘から先くらい。どれくらいの威力があるか試したい。

「アイナ、今日の予定はキャンセルで! ちょっと試したいことができたから」

 もう、何十回目のキャンセルだろう。アイナはわかりましたと了承する。いずれ、魔導書を使っての戦闘もありかもしれない。ついでに魔力石も持っていこうとすると、魔力表示が39になっていた。先ほどブラッドランスを生成したせいだろう。

 私は屋敷を出た。10分ほど歩いて森に行く。庭にも木はあるけど、庭の木で試すのはなんだかなぁと思った。いくら死に戻りで元通りになる公算が大きいとは言え。森の入口の木で試すことにした。

「ブラッドランス!」

 槍を生成完了まで約1秒程度。その後、放つ。ブラッドランスは木に当たると固定化が解けて血になって表面に飛び散った。そうなると消えろと念じても消えない。血を操って移動させることはできるけれども。おそらく、当たるまでは魔力の状態なのだ。魔力の状態であれば消せる。

 気になる威力。断面を見た感じ、短剣よりは深く刺さったと思われる。剣と比べると負けてる気がする。

 魔力を測ると36。消費MPは2というところか。

 再度ブラッドランスを生成し、今度確かめるのは距離。どこまで動かせるか知るのは重要だ。取れる戦術の幅が広がる。色々動かして試したところ、私を基準に半径5メートルの球上というところ。一般的にこのレンジが長いのか短いのかはわからないが、私にとってはありがたい。今までの攻撃の最大リーチは剣だったのだから。ブラッドランスを消す。消して魔力を測ると34なので、消しても一度生成してしまうと戻すことはできないことがわかる。

「真紅の赤よ。血の薔薇が命ず。今ここに何人をも打ち貫く槍と化せ。穿て、ブラッドランス!」

 ブリーチ履修勢なのでこれくらいは余裕なのです。嘘。5分くらい考えました。

 血の槍の大きさはかなりのものとなった。通常のブラッドランスの数倍。木に向けて飛ばすと、大穴が開いた。

「うーん、実戦的ではないな」

 私はぼやく。

 血の槍の生成に10秒以上。おそらく、詠唱中に邪魔が入ったら魔法は解けてしまうだろう。そして、魔力は――残り24。やはり威力の分、消費も激しい。ハイリスク・ハイリターンではあるが、5メートル以内という制約があるのでつらい。

「次は血の操作を試そっか」

 武器としてではなく、何ができるか。

 硬くしようと思えば、硬くなった。薄く伸ばして盾のようにする。

「防御にはありね」

 ただ耐久度的に、攻撃を防げて一撃。鍛錬不足からだと思うけど。

 父がやったような血の鎧はまだ私にはできなかった。オートで防ぐのがどうやるのかわからない。せいぜい盾が限界。

「これも試さないとね。自分の血はどうなのか……痛っ」

 血で作った短剣で自分の手の甲を切ってみる。血が流れ出る。リスカ経験がない私には自傷はちょっとつらい。

 魔力生成した血と同じように普通に操作ができた。

 そして、かなり重要なことがわかった。それは血を生成するのではなく、自分の血を使うとほとんど魔力消費がないこと。血の生成に魔力を変換しているためだと思われる。

 私は大男対策を一つ思いついた。その方法では実戦で試すしかないのがつらいところだけど。

 お昼時間に近づいてきたので自室に戻る。

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