第11話

「人間だ 人間がおる」


 一つ目の、オーガがあらわれる。

 お腹には、真一文字に傷あとが残っている。


「キャッ !!」


 マスターレベルになると、これくらいでは動じないが、ハマオニールは大きさにビックリしている。


「あぁ いたら悪いか?」


 挑発するオレ。


「あん ??」


 オレと、目が合う一つ目。


「叩き切るぞ」


 剣に、手を伸ばし音を鳴らす。


「あんときの

ウワーッ」


 あわてて、逃げ出す一つ目のモンスター。


「ふう」


 抜きかけた剣を、戻すオレ。


「たのもしいんですわね」


 すごい、まばたきをたくさんしながらオレを見るハマオニール。

 ネズミー作品じゃあないしなぁ。


「ああ

ごめんね あのモンスターを倒せばかなり経験値が増えただろうに」


 ちょっと、話を変えるオレ。


「イイんですよ

先を急ぎましょ」


 なんだか、すごく頼られて久しぶりにイイ気分だね。


「マスター

なんでそんなに下からなんですかー ??」


 奴隷に、手厚いと不満を言うマリン。


「いや

別に 問題ないだろ反抗しないんだから」


 実に、奴隷として有望株でしょ。


「あの子の目

笑ってないですよ ??」


 鋭い、指摘をするマリン。


「だからって そんなの関係ないだろ」


 おっと、言いすぎたかな。

 たしかに、目が笑ってないのは事実だよね。


「チッッ

どうなっても知らないわよ」


 めちゃくちゃ、イラついているな。

 これが、終わったらスイーツでも食べさせるか。


「よし あそこのドアが このダンジョンの出入口だ」


 このあたりに、ビッグラットというウサギの耳が短いヤツがエンカウントして来るのだが、


「マリンさん

アタシのこと憎いですか ??」


 ハマオニールが、マリンに不満をぶつけだす。


「なっ………

なんだよ急に」


 多少、うろたえるマリン。

 この、タイミングでケンカするのかよ?


「さっきからアタシの悪口ばかり」


 大声を、出すハマオニール。


「おい 何のマネだこの野郎」


 ついに本性を、出したなとマリン。

 ハマオニールの、胸ぐらを掴む。


「やめろ

その手を離せ」


 マリンの、腕を掴んで引き離そうとするが、


「いや やめない !!」


 ハマオニールの、胸が出るくらい離さないマリン。


「助けてマスター」


 泣きそうなような、目をするハマオニール。


「泣いているではないか」


 ハマオニールが、かわいそうだろ。


「こいつ

クソッ」


 なんとか、ハマオニールを掴んでいた手を離すことが出来た。

 もう一方の手も、伸ばすので両手を押さえるオレ。


「暴れるな」


 もがくマリン。


「ベー」


 オレの、背中で舌を出すハマオニール。


「ぬあーッ

クソ女」


 暴走してしまっているマリン。

 困ったな。


「暴れるなと言っている

聞けないのか」


 完全に、マリンを地面に押さえ込むオレ。


「あいつ

あいつが」


 マリンは、なにか言いたげだが地面とキスする。


バタム


 ドアの、開閉音がした。


「………あ」


 顔を、上げるオレ。

 ハマオニールが、そこにいない。


「全部 ワナだったんですよマスター」


 押されながらも、言うマリン。


「いや お前がコワいから逃げただけだろ」


 そうだ。

 回避行動に、違いない。


「そんなワケない !!」


 今度は、マリンが泣きそう。

 もー、やめてよ。


「早く 助けに行かないと」


 助けなしで、猛獣のオリに飛び込むようなモノだ。


「放っときゃイイんですよあんなの」


 イジけちゃってるマリン。


「そうはいくかよ

信用問題だぞこれは」


 ハマオニールを、連れて帰らないと大変なことが起きるんだよ。


「なんですかそれ ??」


 ピンと、きていないマリン。


「とにかく 探し出すんだ」

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