第6話

「あー

もうちょっと頑張って !!」


 さっきから、ピコハンでスライムを叩こうと、カエルみたいに跳ね回るラッピュー。

 一発も、当たらないどころかかすりもしない。


「頑張ってますって! めっちゃすばしっこくって

ぬあーーッ」


 そりゃあそうだ。

 なにせ、ラストダンジョンにいるスライムは、すばやさがマックスまで上がっている。


「思い出すなぁ………」


 つい、リアル世界の自分を投影してしまう。


「なにをですマスター ??」


 マリンは、首をかしげる。


「いや

転生する前のことをな」


 ブラック企業で、社畜をしていたなんてマリンに話してない。


「そうですか

どんな生活をしていたのですか ??」


 真っ直ぐに、オレを見るマリン。


「詳しくは言えないが 大変だったよ」


 昼ごはんが、夕方5時とか挙げればキリがない。


「そうですか」


 さみしそうに、笑うマリン。


「サフィスに出会えてなければ どうなっていたことか」


 唯一の、ストレス発散であるネットゲームフレグランスで、女神サフィスに出会わなければ人生が詰んでいた。


「女神とはいえマスターの奴隷

わたしとさほど変わりありません」


 自分と、差がないと豪語するマリン。


「それを言うな

どこかで聞いておるかも知れんぞ」


 女神は女神だ。

 こんな、マリンの無礼な発言を聞かれでもしたら………


「アハッ

奴隷におびえてどうするのですマスター」


 あくまでも、強気なマリン。


「うむ

そうであったな」


 ちょっと、変な汗が出そう。


「そんなのより

目の前の───」


 オレに、抱き付こうとするからかわし、


「あっそうそう

サフィスも気になるけどエドワードも気になるよね ??」


 実は、ネコのモンスターをペットにしていた。


「あのネコが気になるのですか ??」


 はぐらかされ、少し機嫌が悪くなるマリン。


「あぁ

2人ともラストダンジョンに入らないように言ったからな

帰って行ったのかなって」


 別れが、つらくなって判断力がにぶらないように連れて入らなかった。


「きっと、帰っていますよ

だってネコと女神ですよ ??」


 気まぐれだ、とでも言いたいマリン。


「まぁ そうだな

帰って来ないとわかればいなくなるよな普通」


 そりゃそうだよなぁ………


「そりゃあそうですよ

だから あの女のことはわすれてわたしと───」


 そう、マリンが言いかけた時、


「わー

ウ゛ンンンンンン」


 スライムに、不意打ち攻撃を受けスライムを飲み込むラッピュー。


「なに している? スライムなんて生で食べたら腹を壊すぞ」


 ダメだよ、そんなことしちゃあ。


「ハァハァ

別に 食べたかったわけじゃあないわ !!」


 なぜか、キレているラッピュー。


「それは 悪かったな」


 思わず、謝るオレ。


「ねぇ

これどうやれば出て来るの ??」


 お腹を、さするラッピュー。


「まぁ 6時間もすれば出て来るよ」


 仕方ないよね。


「なーんだ………

ってどっちから出るのォ ??」


 顔色が、青くなるラッピュー。


「貴様 マスターのクチからそんな下品なことを言わせるつもりか! 下の穴に決まっておるだろ!」


 キレるマリン。


「イヤ゛だーーーッッ」

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