第5話

「仕方ないな

ハッ!」


 剣を、ぬいて横に振るオレ。


ズブシュ


 剣から、波動が起きてオーガの腹に当たる。

 手加減して、20パーセントほどのパワーで切りつけたが、オーガはあわてて逃げて行った。


「はわわ

死ぬかと思った………」


 産まれたての、仔鹿のようにプルプルと立ち上がるラッピュー。


「本来このダンジョンは初心者が来るようなところでは無い」


 なにせ、ラストダンジョンだからな。


「こっわー

最初に言っといてよぉ」


 足を、滑らせながら近寄って来る。

 なんか、哀れだね。


「なんだ

やっぱりAランクはハッタリか」


 追い込むように、言うマリン。


「んーくやしいー」


 地団駄を、踏むラッピュー。


「まずは マリンに礼を言いなさい」


 なんで、防御してもらっておいて礼が言えないんだ。


「………命をすくってくれてありがとう」


 しぶしぶ言うラッピュー。


「よし」


 多少は、素直になったかな。


「貴様 マスターに礼を言うのが先であろう」


 強く、つっこむマリン。


「うへーん

あ゛りがとう」


 ちょっと、泣かないでよ。

 マスカラ落ちてるよ。


「マリンよ

そのぐらいにしてあげようではないか」


 笑いを、こらえないとね。


「マスターが お望みとあらば」


 頭を、下げるマリン。


「それよりさ

なんで さっきのモンスターを逃がしたの? 取り分の20を取り損ねたじゃない」


 いきなり、変な主張を展開するラッピュー。


「えっ………」


 思わず、面食らうオレ。


「マスターは 無益な殺生はしないのだ

わかったかザコ!!」


 怒りが、頂点に達したマリンの口調が荒くなる。


「うわ………

コワこの人」


 どん引きのラッピュー。


「なにか言ったか ??」


 にらむマリン。


「イイエ !!」


 ビシッと、立つラッピュー。


「それなら サッサとスライムを探せ !!」


 廊下の奥を、指差すマリン。


「はぃぃ~」


 ヨタヨタと、歩き出すラッピュー。

 下着まで、濡れて寒くないのだろうか。


「たしか この先の右手に部屋があってそこにスライムがいたような」


 思い切り、ヒントを出すオレ。


「はいマスター

確認します」


 そーっと、のぞきこむラッピュー。


「また コロッと性格が変わったな」


 どういう構造を、しているんだ。


「そのうち 元に戻るでしょう」


 あきらめ顔のマリン。


「だな」


 うなずくオレ。


「ここがぁーマスターにぃ紹介されたお部屋でぇーす」


 まだ、配信をやめないラッピュー。


「はええな戻るの」


 もはや、あっぱれ。


「きっと 反省なんてしてないですよ

根性を鍛えなおしましょうか ??」


 指を、鳴らすマリン。


「いやいらないよ

どうせ もう会うこともない人だろうし」


 1回きりでしょ。


「あっ

スライムを発見しましたー」


 ダンジョン内に、はずんだ声が響く。


「ちょっと どう戦うか見てみようか ??」


 手伝う気が、ちょっと萎える。


「名案です

Aランクとやらの動きを見物しましょ」

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