第2話

「それじゃあ ダンジョンクルーズの内容を簡単に説明しちゃいますね」


 今日の、1人目はアラサーの動画配信者だ。


「はい

おねがいします」


 動画配信者にしては、地味な身なりをしている。


「まず最初に

私のことはマスターと呼びなさい」


 よく、聞いてみると動画配信者と言ってもいわゆるVチューバーというキャラクターになりきって配信するみたいだ。


「はいマスター

ちょっと質問イイですか ??」


 神妙な面持ちで、右手を上げる女性。


「はいなんでしょう?」


 今のところ、引っ掛かる内容はないはずだが。


「これ 動画で生配信したいのですが大丈夫ですか ??」


 動画配信の、許可が欲しかったようだ。


「あー

たしかゲーム内にスマートフォンの項目があったから大丈夫でしょう」


 配信自体は、大丈夫なんだけど。


「あっ よかったです

さっそく始めますね

ヤッホーみんなーラッピューだよーおはピヨー」


 いきなり、人格がガラッと変わったように話し始めるラッピュー。


「あの 説明の続きがあって………」


 重要なことを、伝えないといけない。


「みんなー今日ねーピヨはーなんとダンジョンにやって来たのらー

ドンドンドンパフーパフー」


 自分の、世界に入っているようなラッピュー。


「あの 自撮り棒はダンジョン内に持ち込めませんので出入口に置いていって下さいね」


 光の、粒になってしまうよ。


「えーみんなキいたぁ? マジショックー」


 自撮り棒を、ブンブン振るラッピュー。

 配信を、見ている人は動画酔いしてないかとかわいそうになってくる。


「それと ダンジョン内の ある程度の場所までしか電波がとどかないので途中で生配信は切れます」


 これは、仕方ない。


「えーさらにショーック」


 スマートフォンを、食べるのかという具合に顔面に近付けるラッピュー。


「ダンジョン内では 奴隷として私の指示に従ってもらいます」


 ゲームの、システム上仕方ないんだけど。


「へーそうなの」


 あまり、ピンと来ていない様子のラッピュー。


「モンスターを倒した報酬の取り分は私が80であなたが20です」


 最初に、具体的な数字を言っておかないと後でモメたくないし。


「えーなんでなんで ??」


 こういうところだけ、食い付くラッピュー。


「私が モンスターを倒す武器を提供します」


 苦労して、集めたアイテムをレンタルするんだからね。


「あーはいはーい

武器なら持って来てまーす」


 にこやかに、右手を上げるラッピュー。


「えっ?」


 なんか、イヤな予感がする。


「これを見てチョンマゲ」


 風呂敷に、包まれた棒を取り出すラッピュー。


「こっ

これは」


 やってくれたよ、この女。


「日本刀の長船ちゃんでーす

いつも動画でクッキングに使ってまーす」


 これで、キュウリの輪切りをして配信しているらしい。


「あーそれね

ダンジョン内には持ち込めないから」


 この説明、何回しなきゃならないんだ。


「え゛ーーーー」


 なんか、変な目をするラッピュー。

 この顔を、配信しろ!


「私も ジュラルミン製の盾をネットで買って持ち込んだら………っておい」


 いちいち、説明をしてやっているのに全部聞かずに、ドアの向こう側に入るラッピュー。


「へへーん

ちゃんと 持ち込めたよー」


 中腰で、ピースするラッピュー。


「おい 早く出ろ !!」


 ヤバいって。

 あの刀って、30万くらいしそう。


「なにが 持ち込めないって………

あれ」


 自撮り棒と、日本刀が光の粒になっていく。


「もう遅い………」


ガチャリ


 スマートフォンが、地面に落ちる。


「だから 言わんこっちゃない」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る