第13話突撃、隣の犯人!
予定通りにホームセンターから物資を調達し、周波数を合わせて小型無線機のイヤホンを耳に付けるとテスト、テストとツバキは喋る。
聞こえていると2人から返事があるのを確認し、インターホンを鳴らす。
やはり出ない。
これは予想内だったので、元住んでいた住人の名前で声を出す。
「佐方! おい、佐方!俺だ、赤見だよ! ここの家を取り壊すって話だから、それを聞きに来たんだ!」
我ながら荒唐無稽で、台本もない台詞だった。
ドアをバンバン叩き、インターホンを連打するのに我慢出来なくなったのか、不機嫌な様子で出てきた容疑者に内心でツバキはほくそ笑む。
掛かったなと。
「なんですか?」
「実はこの家が取り壊しになると聞いて! 佐方は!?佐方はどこに居ます!?」
「……っ。大声で言わなくても聞こえてますよ!!」
大声で叫ぶ僕に、舌打ちをして怒鳴る容疑者。
これで火口君にはこちらが話していることが分かるはずだ。
あとは万事上手く行けば申し分ない。
[被害者、寝てます]
火口君からの連絡が来る。
「わ、分かりましたから。大声で話をしないでぐださい。それで予定通りに壊すのですか?」
相手は眼鏡を付けた中年男性。
ワイシャツにジーパンの細い身体をしている。
やつれている感じからか、あまり脅威を感じない。
だが左手は隠してあることから刃物等を持った可能性が高かった。
扉から半分だけ身体を出していることも含めて直ぐに逃げられることも考え、僕の役割は出来る限り話を伸ばすことだ。
正直、この手の話はぶっつけ本番、アドリブだらけ。だからこそ必死に頭を回転し続ける。
「知らないですよ! 何ですか、こんな時間に!」
「いや、待ってください。ここにこの土地の登記簿があって、これが他の人に渡ると聞いていました。私は代々この土地を守ると佐方から聞いていましてね。確認も兼ねて聞き──」
無意識だった──。
隠れていた左手に持っている包丁がこちらに向かってくるのを身体が躱したのは。
「っ!?」
「うるさぃ!うるさぃぃぃい!!! せっかく! 成功したのに──」
[被害者確保、外へ退避]
火口君からの連絡に僕はここに居る意味もなくなり、怖がった振りをして逃げる。
幸い、追っては来なかったが下手をすれば自分が刺される恐怖に冷や汗がでる。
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