第7話赤沢ネネ

ボクとしては照れ臭いのが本心だった。

所長、普段はダラシナイ感じしかないのに土壇場で格好良くなるの狡いと思う。

早く行けとアイコンタクトで急かされ、せっかくの気分が台無しだと思いながら任された嬉しさで、説明された2階の角部屋の扉を3回ノックする。

「失礼します。寿探偵事務所の所長代理として来ました蛇嶺灯と申します。赤沢ネネさん、申し訳ございませんがお話を聞かせて頂けませんでしょうか?」

扉の前で自己紹介をして開けてくれるのを待つが、一向に反応がない。

あれ?無視なの?

ボク、キレそう。

「お話と言うのは現在行方不明になっている赤沢ミミさんの件です」

また無視された。

「事件発生から2日経過しています。容疑者である人物は未だ不明ですが、被害者が今、被害に合われてる可能性が高いと思えます。 有力な情報はありませんか?」

無視。

「……お願いします。何でもいいので教えてください……!」

無視、4回目。

流石にボクの仏様も修羅になりました。


蛇嶺灯の3分クッキング。


懐から取り出したのは棒状の束、ピッキングツール。

鍵穴を見て、二本を選んで鍵穴に挿してコネコネします。

手の感触が鋭利になるよう両目を閉じてやるのがコツです。

1本目の引っ掛かりを感じたら、押し込む。2本目はその周りを半円に沿うように回して引っ掛かりを探します。

そして引っ掛かかったら左に回します。

はい、開きました!


※これは蛇嶺灯の独自的な解説です




「ネネさん、お話を聞かせてください」

はーい。5回目も安定の無視が入りました!

5回目? 5回目ですよ!? ボク、扉に話し掛けてる痛い人みたいな感じになっちゃってますからね、これ!

受験生だろうと、1個年上だろうと容赦しません。


「赤沢ネネさん? 無視するなんて酷いじゃないですか?」


話し掛けてる間に扉を開けて中へ入ると、勉強机に頭を擦り付けて震えているセーラ服で顔色が悪い赤沢ヤヤが居た。


「なんで!? 鍵掛けたのに!?」

「いや?鍵掛かってませんでしたよ?

それより酷いじゃないですか、無視するなんて?」

「わ、私、何も知らない!!」

「はぁーお姉さんが酷い目にあっても?」

知らない、知らないと連呼する赤沢ヤヤにボクの堪忍袋の緒が切れる。

「あのさ、知らないって言ってますけど、こっちはある程度の情報はあるんです。ネネさん、お姉さんを誰かに擦り付けたとかありません? 例えば、自分のストーカー、もしくは加害者とか? 自分のSNSであげてる画像を住所か学校を特定されたとか?」

「ぇ……?」

心底、「なんで?」って顔をされると調べた甲斐がある。

だからボクは探偵風にこう捲し立てることにした。

「もう、ネタあがってるし、吐いたら?」

いや、これどっちかと言えば刑事風のネタか。




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