第2話寿探偵事務所

「ストーカー、拉致監禁、性的対象、性癖、その他エトセトラ、エトセトラ」

灰色のバインダーに挟まった紙を読みながら肩を竦ませて、黒いデスクチェアに身体を預けながらため息を吐く。

「1度、女児暴行事件で豚箱入りした奴がシャバに出た後の再犯率高くないっすか?」

半月の形をしたお盆に魚の漢字が書いてある湯呑みを持ってきた制服を着ている美少女は、世間話をするようにそう言ってデスクテーブルに湯呑みをおく。

「更生したと判断されたとしても人間の根っこはそう変えられないもんだ。1度の快楽からまた味わいたい、また同じことをしたい、と思うのは人間の性だ。で? この湯呑みに青汁入れるのはそろそろ止めよう、あかりん」

「気取った言い方もさることながら、現役女子高生にあだ名呼びする20代後半の男の人もそろそろ止めた方がいいんじゃないっすか? 令和の時代なのでセクハラだと言えば捕まるっすよ?」

「これは中学時代の深夜アニメから受け継がれてる癖みたいなもんだ。それよりもコラコラ、痴漢冤罪みたいなこと言うもんじゃない。それに僕は高校生に欲情するほどヒットラインは広くない。僕は!熟女好きだ!」

「若さ溢れる高校生に生々しく絶妙なカミングアウトは素直に引くっすね? いや、かなり気持ち悪いっす。そんで飲むんっすか? 飲まないんっすか?」

美少女が身体を抱いて、顔を青ざめて1歩下がる様子に苦笑いを浮かべた青年はお礼を言って、一気に飲むなり頬を引き攣らせて目を閉じる。

「ツバキ所長、受けるっすか。いや、もう受けてるんっすよね?」

「うっぷ。し、正直、これの案件は探偵じゃなくて警察の分野だろ? 引き受けるつもりなんてなかったけど、舵さんがこの手に1枚噛んでる」

「人を食い物にすることしか脳がない、それに愉悦を感じる鬼がっすか?」

あまりの苦さに子羊のように身体を小刻みに震えながら言う寿探偵事務所所長、寿ツバキ《コトブキツバキ》

そして辛辣な言葉を放つ助手、もといワトソン君で貴重なブレインの蛇嶺灯《ヘビミネアカリ》ちゃん。

その他二名を含んだ4名が寿探偵事務所の総員になる。










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