第4話 バレてる事変①
「あ、あの俺の何の用でしょうか?」
まず俺は一番手前にいた女の子に話かけた。すると後ろに立っていた女の子たちがジト目でこちらを見つめた。
この人たちみんな俺に用があるのか。夢か?
「え、えとここじゃお話しにくいので屋上に来ていただけませんか?」
話しにくい用事とは一体何だろう。見たところ下級生なようだけど、面識はない。俺はどの部活にも所属していないのだから当たり前なのだが。
それにしてもこの子はすごく可愛い。少なくともこのクラスの女子に彼女に匹敵するのはいないのではないかというくらい。
いや一人凄い美人がいたな。最近親の用事で学校に来れてないけど、確か今日からその子も登校してくるんだっけ。
まあ俺には関係ないことだけど、前田が興奮しようだな。
「屋上…って」
屋上と言えば俺の中ではリア充の溜まり場というイメージしかない。以前前田と共に昼食を食べに屋上に行ったときにイチャイチャしてるカップルしかいなくて諦めて帰った記憶がある。
「もし良かったらお昼に屋上に来ていただけませんか?」
理由は分からないけど、こんなに可愛い子からお誘いを受けているのだから断りにくい。
普段昼休みは前田と二人で昼食を取っているが、もし今日俺が彼女の誘いにのってしまったらあいつは一人取り残されてしまう。
(う~ん…)
なんと返事しようか迷っているとSHR開始のチャイムが鳴った。
「あ、時間ですね。じゃあお昼休みに屋上で待ってます!弁当も持ってきてくださいね!」
「あっ…」
返事していないのに帰って行ってしまった。しかも彼女の中では俺が屋上に来るのは決定事項として刻まれてしまったらしい。
彼女の名前もクラスも知らないし断りに行くことも難しいな。
仕方ないが、前田には謝っておくとしよう。
そして前田に事情を話すと、
「なんだとコンチクショウ!」
といって拗ねて机に突っ伏してしまった。
お昼休みになるまでの時間は短かった。実際には短くなっているわけがないのだが、今朝のことを考えているうちにいつの間にか時間が過ぎ去ってしまっていたのだ。
「椎名、お前を一生恨んでやるからな!」
去り際に本当に怨念がこもっていそうなありがたいお言葉だけいただいて、俺は屋上へとやってきていた。
今ドアの前まで来て思ったが、一人で屋上という魔境に突っ込まないといけないのか!?
今朝話しかけてきた彼女を見つけるまで俺は一人屋上を彷徨わないといけないことになる。
その間にもリア充たちがイチャイチャイチャイチャするものだから非リアの俺にとってはただの地獄でしかないわけで…
「あ、来てくださったんですね!」
「あ…」
ふと後ろから聞き覚えのある声が聞こえたと思ったら今朝俺に用事があるといった女の子だった。
後ろにもう一人いるな。またまたかわいい子だ。
やっぱり可愛い子には可愛い子が寄ってくる世の中の摂理なんだろうか。つまりフツメンの俺にはフツメンしか寄ってこないのか。世の中は残酷だな。
もう受け入れてるけど。
「すみません待たせてしまって。どうしてもこの子が付いてきたいってうるさくって」
「もう、桜花それは言わない約束でしょ!」
「でもそれ言わないとどうして着いてきたのってなるでしょ」
「う…その通りです」
「えっと…」
うん、俺明らかに場違いだよね?良かった周りに男子がいなくて。
「そういえば私たち名乗っていませんよね。私は絹井桜花といいます」
「えっと、私は清水碧唯っていいます。貴方の大ファンです!」
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