第3話 バレ事変②
学校へと登校中、俺はある違和感を感じていた。
普段であれば俺という存在は誰にも認知されず、いつの間にか学校にたどり着いている日常が繰り返されていたのだが今日は違う。
「あれってもしかして…」
「うん、そうだよね。どうしようかな。話しかけちゃおうかな」
なんていう女子たちの会話が聞こえてくる。
誰の話をしているんだろう、なんて疑問が沸いていないわけではない。どちからといえば興味しかない。
「同じ高校だったんだ。めっちゃうれし~」
声のする方へと振り返ってみると話していた女子と目が合った。
と同時に、
「きゃ~~」
と悲鳴が上がり、俺は目を逸らす。
これは、俺を見て気持ち悪くて泣いてるのか。それとも…いや、余計なことは考えないでおこう。
「おっす椎名!」
「おはよう、前田」
突然話しかけてきたこいつは俺の親友であり、幼馴染でもある前田である。幼稚園の頃に出会ってから今に至るまで同じ進路を歩んできているきっとこれからも離れることが無いであろう男だ。
前田の本名は前田瑞昭で、ちなみに俺は椎名颯太である。椎名って苗字はアニメとかラノベにも多くあるものだからちょっとした優越感を感じている。
ま、そんな話はおいておいてっ。
「なあ椎名。俺、めっちゃ女子に注目されてないか?ついにモテ期襲来か?」
とにやけた顔で俺に尋ねてくる前田をよそに学校へと向かう。こいつは調子にのったらとことん自爆するタイプだから放っておくのが得策だ。
「ちょ、おい!無視はあんまだろっ」
学校へとたどり着いた俺と前田が教室の隅で昨夜見たアニメのことについて熱い報告会を行っていた。
こいつとは昔から一緒にいるのも相まって趣味がほとんど同じ。唯一違うのは女子に対する貪欲さだろう。
前田は隙さえあればすぐにナンパしようとする癖がある。逆に俺は女子を避ける傾向にあるわけだ。
「やっぱさ、俺女子に注目されてない?」
報告会の途中で前田が登校中と同じような発言をした。確かに廊下の方に普段ならいるはずのない上級生と下級生が数人いる。
誰か知り合いがいるという雰囲気ではなさそうだ。
「椎名、ちょっくら俺行ってくるわ」
「お、おう」
前田は謎のキメ顔をして廊下の方へと歩いていく。
あいつのそういうところは尊敬できる。なんで見知らぬ人、その上異性にあれだけグイグイいけるのか理解できない。
しばらくして待ちかねた俺が読書をしているところに前田が戻ってきた。
「ちょ、前田おまどうしたんだよ」
嗚咽を吐きながら前田は彼女たちは俺に用事があるらしいと言う。
「え、俺?」
「悔しい。お前いつの間にあんな可愛い子たちと知り合ってたんだよ。紹介してくれてもいいじゃないか!」
俺も知らねぇよ、とは言い返せなかった。
とりあえず前田がいっていることが本当なら俺は彼女らの話を聞かなければならないだろう。
ここから見た感じ、俺の知り合いではないことは分かる。
一体俺になんのようなんだ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます