第33話 過去のこと④ 『願い』

ヤツ『最悪』の一部とはいえ、”イレギュラー”には変わりはない。

私は『精神世界』で全力で逃げていたが、段々と距離を詰められていった。


そして、遂にその時がやって来た。


「ツカマエタ」

「ッ!」


『最悪』が私の手を掴んだかと思うと、ぐっと力を込め、私の精神体が崩壊を始めた。


そして、魂のみだけとなった私を見ながら『最悪』は叫んだ。


「コレデ我ノ願イが叶ウ。小娘ニハ願イノ生贄ニナッテ貰オウ」


何かを『最悪』が唱えた後、ドンという衝撃が私に走り―――。




消えゆく意識の中私は思った。

こんな現実を見せられるぐらいなら、私が関わることが出来なくても、夢にでも閉じこもっていたかったな、と。




―――私は一度、そこで死んでしまった。


❖ ❖ ❖ ❖ ❖

※三人称視点


『最悪』のイレギュラーはスイリエルの『魂』を砕いた事を確認すると、『魔術』の詠唱を始めた。


「天ヲ流レ行ク星ヨ、ソノ刹那ノ燦キヲ輝カセ、虚無ヲヌケ、コノ魂ヲ贄トシテ、我ノ願イヲ叶エテ貰オウ」


そして、発動句を述べる。


「”流星ノ燦き”。サア、我ノ願イヲ叶エタマエ!!」


『最悪』の感情が驕り高ぶっている中、ある者が彼の後ろに立って、声を掛けた。


「あのねぇ、”イレギュラー”君。君、やり過ぎなんだよ」

「誰ダ!?」


”イレギュラー”が後ろに振り返るが、その姿は見えない。


気の所為かと、前を向くとそこには、流れ行く流星のような髪と、無限に連なる宇宙のような瞳をした女性が立っていた。


「私は流星の虚愛者、アイ。”イレギュラー”君の願いは叶えられないかな?」

「ナゼダ!我ノ計画ニ穴ハ無カッタハズ…!」


すると、アイは”イレギュラー”に諭した。


「君はね、自身による対価を支払えてないんだよ。”願い”を叶えるには対価は必要なんだ」

「ソウナノカ……!」


悔しがっている”イレギュラー”を見ながら、アイは何処からか剣を取り出した。


「ま、君は”イレギュラー”だから消えてもらうけどね?」


そして、剣を”イレギュラー”に翳すと、”イレギュラー”は剣に吸い込まれ、消え去った。


「……。でも、対価を払ったあの子の願いだけは叶えてあげてもいいかな」


アイはスッと手を上げ、主がいないため、崩壊を始めた”精神世界”に過去からコピーしたスイリエルの魂を貼り付け、ある”制約”を課す。

次に、現実世界に戻って、時間はそのまま、全ての事象を巻き戻した。

そして、彼らにも、”制約”を課した。


その結果に満足したアイは自身の分身体を作り出し、スイリエルの横に配置した。

偽物の友愛でも、”友人”と呼べるように。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

どーも、のこじです。

別作品上げたいけど、これの本編を完結させてからにします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る