第31話 似合ってる
すっかり昼間は眠ってしまった俺は、イビアに起こされて早速夕飯の支度に取り掛かる。
いきなりイビアが部屋にいた時は少し驚いたけれど、一人だったら夜まで寝てしまっていただろう。
そう考えると、こうして同居人がいるというのも悪くないな。
というわけで、今日は買ってきた総菜をメインに、あとはご飯とお味噌汁と簡単なサラダを作ろうと思う。
今日からまた一人増えるから、いつもよりも多めに作らないとな。
ずっとジョンと二人きりだったから、作る量も一人分だった。
でも今は、父さんと母さんがいた頃と同じように三人分の料理を作っている。
同居相手は、異世界の魔王と吸血鬼。
そんな個性しかない同居人だけれど、こうして人が増えて賑やかにな方がいいな。
「良い匂いがする」
「ん? これか? お味噌汁って言うんだ」
「おみそしる……」
匂いに釣られて、キッチンへやってきたリリム。
今日買った野菜やキノコを多めに入れたお味噌汁を、リリムは興味深そうに覗き込んでくる。
「わたしにも、作れる?」
「簡単だから、誰にでも作れると思うぞ」
「そう、じゃあ覚えたい」
どうやらリリムは、料理に興味があるようだ。
別に俺も得意なわけではないが、俺の調理工程を興味深そうに観察している。
ちなみにイビアはというと、今もリビングでジョンと楽しそうに戯れている。
ジョンも楽しそうだし、俺が手を離せない時も遊び相手が出来たことは素直に喜ばしいことだ。
こうして少しだけリリムにも手伝って貰いつつ、夕飯の準備が完了する。
イビアも呼んで三人で食べる食事は、やっぱり楽しくていつもより美味しく感じられるのであった。
食事を終え、あとは各々自由に過ごす。
相変わらずテレビが好きなイビアと、その隣にはこの世界のことを色々学ぼうとするリリム。
――リリムの服も買わないとだし、俺の気付いていない必要なものとかもあるだろうな。
例えば、生理用品とか……?
あとは女性用の化粧品とかメイク道具なんかも、必要だったりするのだろうか?
何もしなくても、二人とも綺麗な顔立ちをしているけれど、俺だけではよく分からないな……。
こういうのは桃花あたりに聞けば色々と教えてくれそうではあるけど、生憎連絡先は知らない。
まぁ一旦は、分かる限りで買い揃える感じで損はないだろう。
というわけで、明日はちゃんと買い物へ出かけることにした。
◇
次の日。
俺はイビアとリリムの二人を連れて買い物へとやってきた。
最寄り駅前のショッピングモールではなく、今日はもっと街へとやってきた。
地元よりももっと大きいファッションモールのあるエリアや、お洒落な路面店が立ち並ぶエリアなど、ここへ来れば一通りのものが手に入る。
今日の目的は、まずはリリムの服だ。
一応魔法で洗浄しているが、かと言ってずっと同じ服で過ごすわけにもいかないだろう。
Tシャツにジーンズとカジュアルな服装のイビアと違い、黒のゴシックファッションのリリム。
それはリリムによく似合っているが、今の季節的に絶対暑い。
しかし、同じような系統のファッションとなるとかなり限られてくるだろうと思い、路面店が立ち並ぶエリアへと先にやってきた。
「リリムは、どんなのが着たいのだ?」
「向こうでは、配下のものが用意してくれていたからよく分からないです……」
歩きながら、イビアの質問に申し訳なさそうに答えるリリム。
どうやら着ている本人は、全くファッションへの興味がないようだ。
「……許されるなら、わたしもイビア様と同じような服が」
「そうか。んー、でも今着ているものの方が、我はリリムによく似合っていると思うぞ?」
「そう、ですか……?」
イビアと同じものを欲しそうにしていたが、イビアの一言に満更でもなさそうな反応をするリリム。
「お、あそこなんか近いのではないか?」
何かに気付いたイビアが指差す。
指差した先にあるのは、今リリムが着ているものに似ているゴシックファッションのマネキン。
噂をすれば何とやらである。
中々他を見つけるのも簡単ではないだろうということで、早速入ってみることにした。
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