第七十一話 襲撃者

 すると、前方の森から布で顔を隠した者が物凄いスピードで突っ込んできた。


「はああああ!」


 ヒュン、ヒュン、ヒュン!

 ガキン、ガキン、ガキン。


 布で顔を隠した者は、私に狙いを定めて両手に持ったダガーで切りつけて来た。

 声と体格からすると男性っぽいが、魔力は感じられないのに身体能力強化を使っている様な感じだ。

 私は魔法障壁を展開してダガーを防ぎつつ、蹴りなどを多用して男を牽制していきます。


「マイに下手に近づくな、巻き込まれるぞ! 距離を取って、一般人を守る事に専念しろ」

「「「はい!」」」

「アオン!」

「グルル」


 私と男の高速戦闘を見るや否や、ブライアンさんは周囲に守りに徹するようにと指示をだします。

 ハナちゃんも一般人の前に浮かんで、魔法障壁を展開して万が一に備えます。


「ちっ……」

「あっ!」


 ダダッ。


 すると、男は一般人をちらりと見るや否や、突然私から距離を取って森に消えていきました。

 私は男を追いかけようとしたけど、ブライアンさんが呼び止めました。


「マイ、深追いするな! 一刻も早く、ここを離脱するぞ」


 僅か数分の出来事だけど、中々衝撃的な出来事だった。

 休憩自体は十分に出来ているので、私たちは直ぐに馬車に乗り込んで足早に休憩ポイントから離れた。

 暫くの間馬車内は周囲を警戒しつつ全員無言だったが、森を抜けたところでようやく一息着く事ができた。


「あいつは、間違いなく冒険者を襲うという謎の人物だな。一般人の存在があったので、奴は慌てて逃げて行ったんだ」

「ああ、間違いない。奴は、冒険者だけを狙っていやがった」


 ブライアンさんとトールさんが間違いないと話をしているけど、私も全く同意見だった。

 すると、トールさんは私に先程の男の強さについて聞いてきました。


「うーん、いきなり全力で来た感じがします。先手必勝って感じでしょうか。魔力もないのに力もスピードもあって、厄介な感じがしました」

「俺もそう感じた。あと、奴の剣筋は滅茶苦茶だ。ごり押しでやっている感じがあるぞ」


 確かに力任せに剣を振るっている感じがしたから、誰からも剣術を習っていない感じがした。

 いずれにせよ、暫くは警戒をしないとならなそうだ。


「カナもマナも、武道大会出場者を狙っている馬鹿がいる可能性がいるから、十分に気を付ける事だ」

「だね、本当に嫌になっちゃうよ」

「私も警戒します!」


 カナさんとマナさんには、村についたらトールさんが話をすることになりました。

 しかし、盗賊って感じでもなかったし一般人を襲うこともなかった。

 事前の情報通り、冒険者のみで行動している者を狙っている感じだった。

 そして私たちは夕方前に村に着いたけど、今日は余計な外出をせずに夕食も早いうちに食べることにした。

 すると、ハナちゃんがとあることを話してきた。


「うーん、あいつから変な臭いがしたよ。何かの薬っぽい臭いだった」

「薬か。魔力がないとなると、薬で無理やり身体能力を向上させているのかもしれないな」


 ブライアンさんが言葉を続けたけど、確かにドーピングをしている可能性はある。

 いずれにせよ、近い内にまたあの男と相まみえる気がしてならなかった。

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