第七十話 二日目の旅の旅の朝

「ふわあ、眠い……」

「ワフゥ……」

「グルル……」


 翌朝、馬車乗り場には昨日と同じく眠そうな一人と二匹の姿がありました。

 今日も、朝早くの出発です。

 馬車に乗れば寝ることができるので、何とか頑張って貰いましょう。


「今日からセレスティア伯爵領に入る。街道沿いに森が広がるから、何が現れるか分からないぞ」

「「「はい!」」」


 ブライアンさんの話に、私、トールさん、マヤさんが答えました。

 グミちゃんとハナちゃんも手を挙げているから、きっと大丈夫でしょう。

 今日は一般のお客さんもいるけど、警戒は続けないといけないね。

 ということで、次の村に向けて出発です。


「今日は曇り空だし、天気悪くなるかな?」

「うーん、多分大丈夫だよー」


 曇天の中、馬車は街道を進んでいきます。

 ハナちゃんの勘では今日は問題ないそうなので、雨具の心配はなさそうです。

 ちょっと気になったことを、ハナちゃんに聞いてみましょう。


「ハナちゃん、妖精ってこの辺には多いの?」

「うーん、結構いると思うよ。魔力があるから、妖精が集まりやすいの。あと、美味しい果物も多いよ!」


 ハナちゃんの回答に、グミちゃんもうんうんと頷いていました。

 この前のゴブリン騒ぎはあったけど、森の中は動植物でいっぱいだった。

 薬草もとても豊富だし、冒険者にとってもとても良い環境だった。

 妖精にとっても住みやすいのでしょうね。

 そんなこんなで森に入ると、狙っていたかのように五頭のオオカミの群れが私たちの前に現れました。


「「「グルル、ガウガウガウ!」」」


 オオカミは、大声をあげて私たちを威嚇しています。

 普通だったらかなりの脅威なのですが、どうやらオオカミは眠れる獅子を起こしたみたいです。


「うるさーい! せっかく気持ちよく寝ていたのに!」

「アオン!」

「グルル!」


 馬車の中ですやすやと眠っていたカナさん、タマちゃん、ムギちゃんが、滅茶苦茶怒りながらオオカミの群れに突っ込んでいきました。

 うわあ、オオカミをボッコボコにしているよ。

 五分もかからずに、オオカミは沈黙することになりました。

 そして、一人と二匹は直ぐに馬車に戻ってきてまた寝ちゃいました。

 うん、後始末は私たちがするのね。

 グミちゃんが血抜きをして私の魔法袋にしまうけど、オオカミに大声で起こされた恨みを思いっきりぶつけています。

 うーん、これは買取査定はマイナスになるだろうなあ。

 そんなこんなで馬車は進んで行き、休憩スペースに辿り着きました。


「うーん、もう少しお菓子を食べたいな」

「おい、流石に食べ過ぎだぞ」

「だって、朝食殆ど食べてないんだもん」


 トールさんに突っ込まれながらも、カナさんは大量にお菓子を食べています。

 因みに、タマちゃんとムギちゃんは眠くても朝食はしっかりと食べる派です。

 でも、かなさんと同じくお菓子を食べているけど。


「ほらほら、そろそろ出発……」


 ブライアンさんが苦笑しながらカナさんたちに声をかけた時、視線を森の方に向けました。

 グミちゃんも、ブライアンさんと同じく視線を森に向けます。

 その間に、私は広範囲探索魔法を使用します。


 シュイーン、ぴかー。


「何かがかなりの速度で近づいてきます。えっと、反応は一つです」

「一般客を馬車に乗せて、馬車を囲むように陣形を取れ!」

「「「はい!」」」

「アオン!」

「グルル!」


 私の話を聞いたブライアンさんが、素早く指示を出します。

 そして、私は反応が向かってくる方に対峙します。

 なんか、嫌な感じがするよ。

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