第七十二話 セレスティア伯爵領の領都に到着

 翌朝、私たちは朝一番の馬車でセレスティア伯爵領の領都に向かいました。

 もちろん、あの襲撃者対策として一般の乗客と一緒です。

 問題がなければ、昼食前に領都に到着する予定です。


「くかー、くかー」

「フシュー、フシュー」

「グー、グー」


 今日も朝が弱い面々は馬車の中で寝ているけど、これも今日までだからと思いつつ周囲を警戒しながら馬車は進んでいきます。

 でも、領都に近いだけだって人通りも多いので、流石にこの状況で襲ってくる可能性は低そうです。


「いやー、人が多いって聞いたから美味しいものも沢山ありそうだねー」

「セレスティア伯爵領はこの辺では一番大きいから、果物とかも沢山あるそうよ」

「おー! それは期待大だねー」


 ハナちゃんはマナさんと仲良く話をしているけど、王都にも一週間あれば着くので農業だけでなく産業も盛んだという。

 人が集まるので、武道大会もかなり盛り上がるそうです。


「でも、襲撃犯は一体何をしたいのでしょうか?」

「冒険者だけを狙うってなると、武道大会の参加者を減らそうという意味合いもあるだろう。だが、武道大会には一般人も参加するぞ」


 うーん、襲撃者の目的が良く分からない。

 ブライアンさんも、思わずお手上げって感じです。

 一般人がいると通報される可能性があるから、敢えて冒険者だけを狙ったのだろうか。

 いずれにせよ、セレスティア伯爵領内でも十分に気をつけた方が良さそうです。


 パカパカパカ。


「あっ、防壁が見えてきたね!」

「アン!」


 そして村を出て数時間が経過したタイミングで、私たちの前に大きな防壁が見えてきた。

 要塞都市みたくかなり厳重に防衛されているけど、それだけ重要な都市でもあるんだ。

 私たちを乗せた馬車は防壁の門に到着し、入場の為の手続きを行います。


「はい、これで良いですよ。そういえば、道中何かありましたか?」

「例の襲撃者の襲撃にあった。一般人がいたから、直ぐに逃げ帰ったぞ」

「はあ、まだですか。武道大会出場予定者だけでなく、普通の冒険者も襲われているんですよね」


 門兵が溜息をつきながらブライアンさんに愚痴をこぼしているけど、もしかしたら腕試しみたいなことも考えているのかな?

 いずれにせよ、私たちは問題なく手続きを終えて、馬車乗り場に到着しました。


「じゃあ、これから冒険者ギルドに行って手続きをする。そのまま冒険者ギルド併設の食堂で昼食を食べるぞ」

「わーい!」

「グルル!」


 ブライアンさんの提案に、カナさんとムギちゃんは大喜びです。

 かくいう私も道中ずっと気を張っていたので、結構疲れています。

 ここは、美味しいものを食べてやる気も補給しないと。

 もちろん私たちはセレスティア伯爵領は初めてで右も左も分からないので、ブライアンさんに町を先導してもらいます。


 ガヤガヤガヤ。


「本当に人が多いですね。ライザンツ子爵領も人が多いけど、倍以上はいそうです」

「実際に、人口は倍以上いるって聞いたことがあるぞ。町の広さはそこまで変わらないが、とにかくゴミゴミとしているな」


 人口密度が凄いけど、武道大会が近いのも影響しているそうです。

 というのも、周辺の街からも観光客がやってきているそうです。

 こりゃ、治安は相当気をつけないとならないぞ。

 そう思いながら、私たちはセレスティア伯爵領の冒険者ギルドに到着しました。

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