第六十八話 フリーダムな妖精

 道中は動物や魔物の襲撃も全くなく進んでいき、二時間程進んだところで休憩を取ります。

 小さな森が近くにあるけど、基本的には長閑な平原が続いています。

 流石にタマちゃんとムギちゃん、それにカナさんも目を覚ましています。

 今日は二回休憩を取る予定で、御者も馬の手入れも行います。


「オン、アオン」

「グルル」

「「ブルル」」


 グミちゃん、タマちゃん、ムギちゃんは、馬車を引く二頭の馬とお喋りしています。

 その横では、マナさんが水魔法で桶に水を入れています。

 回復魔法をかけるほど疲労していないので、私は何もやることがありません。


「おーかーし! おーかーし!」

「カナ、少しだけだぞ。今食べたら、昼食が入らないぞ」

「トールちゃん、大丈夫だよ。美味しいものは別腹だから」


 うん、トールさんはカナさんのお守りで忙しそうだ。

 私は、ブライアンさんにこの辺りのことと今後の予定を聞くことに。


「まあ、基本的に村までは平原が続く。村の近くには、畑が広がっている。そして、この辺りの森は妖精の森と言われていて、妖精が住んでいると言われている」


 何ともメルヘンっぽい話が出てきたけど、私にはスライムにコボルト、はたまたドラゴンの子どもがいるのだから、妖精がいても不思議では無い。

 害をなす存在じゃなければ、特に気にしなくて

 さてさて、私もお菓子を食べようっと。


「みんな、私が作ったお菓子もあるよ」

「アオン!」

「ガウッ!」


 おお、タマちゃんとムギちゃんが勢いよく私のところにやってきます。

 グミちゃんは、ムギちゃんの背中に乗っていますね。

 私が作ったお菓子は、甘さ控えめのクッキーとマフィンです。

 グミちゃんは何でも食べるけど、タマちゃんとムギちゃんの健康を考えたものです。

 ドライフルーツも入っているので、みんなに大好評です。

 自然な甘さってものですね。

 さてさて、私もお菓子を食べようっと。


「「ガブガブ」」

「うまうま」


 私がお菓子の方に手を伸ばすと、美味しそうにお菓子を食べるタマちゃんたちに混じってマフィンを食べている羽根が生えた小さなものがいるよ。

 私の手のひらサイズで、ぷにぷにのグミちゃんをまるで駄目になるビーズクッションのように使っている。

 淡いパステルカラーの綺麗な髪やドレスに羽なのに、食べ方やくつろぎ方がかなり豪快です。


「あ、あの、あなたは誰かな?」

「うん? ハナだよー。もぐもぐ」


 フラワー系妖精で、名前がハナってまんまですね。

 他に妖精は……


「「「むしゃむしゃ」」」


 ハナちゃんよりも小さな妖精が何匹? いて、ハナちゃんが食べているマフィンを食べていた。

 状況が良く分からないので、ブライアンさんに聞いてみましょう。


「妖精は、程々の甘さの菓子が好きらしい。マイの作った菓子が丁度よかったみたいだな。その証拠に、カナの食べている菓子には全く寄り付いていないぞ」


 ブライアンさんも、私の作ったクッキーを食べています。

 実はカナさんが手元にあるお菓子を使って妖精を集めようとしているのですが、全く寄り付きません。

 というか、私のお菓子が凄いことになっています。


「「「むしゃむしゃ、ぱくぱく」」」

「ブライアンさん、妖精がお菓子に群がっている虫みたいなんですけど……」

「ふむ、俺も妖精を見たことはあるがこれはスゲーな。まあ、マイが魔力を持っているのもあるだろう」


 全く手を付けていないマフィンに、妖精が十匹以上集まって食べています。

 グミちゃんたちもクッキーをバリバリと食べているので、結局私はお菓子にありつけませんでした。


「げっぷ、お腹いっぱーい」


 そして、他の妖精が森に帰ったのに、ハナちゃんだけはタマちゃんの頭の上に乗って寛いでいます。

 というか、大の字になって寝ていますね。

 うーん、念の為に話を聞いてみよう。


「ハナちゃん、私たちは武道大会に出るためにセレスティア伯爵領に行くの。貴方はどうするの?」

「面白そうだから、ついて行くー」


 うん、やっぱり妖精はフリーダムです。

 自由気ままって感じですね。

 出発するのでみんなで馬車に乗り込んだのですが、ハナちゃんはタマちゃんの頭の上に乗ったまま寝ちゃいました。

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