第六十七話 セレスティア伯爵領に向けて出発

 そして、旅の出発の朝、私は早起きしてベッドなどを綺麗にします。

 きっとベッドメイキングはするだろうけど、次の人も気持ちよく使って欲しいな。

 簡単に、部屋の中も生活魔法で綺麗にします。


「アオン……」

「グルル……」


 タマちゃんとムギちゃんは、朝早いのもあってだいぶ眠そうです。

 まだ目をしょぼしょぼとさせていて、完全に覚醒していません。

 仕方ないので、荷物を持って二匹を抱っこします。

 部屋を出ると、グミちゃんが部屋の鍵をしてくれました。

 俺に任せろと、やる気満々です。

 そのまま、カウンターに向かいました。


「おはようございます。鍵を返却します」

「あら、大きな赤ちゃんが二人いますわね。また、ご利用下さいませ」

「ありがとうございました」

「アオン……」

「グルル……」


 タマちゃんとムギちゃんは、尻尾をフリフリさせて受付のシスターさんに挨拶をしていました。

 うん、私の胸に顔を埋めているのは変わらないね。

 グミちゃんは、ぴょーんと私の頭の上に飛び乗りました。

 これで大丈夫ですね。

 私たちは、集合場所の冒険者ギルドの前に向かいました。


「ブライアンさん、おはようございます」

「おっ、一番乗りだな。何だ何だ? でっかい赤ん坊が二人もいるぞ」

「キューン……」

「グルル……」


 ブライアンさんまで、ねむねむなタマちゃんとムギちゃんを見て赤ちゃんだと言ってきました。

 ここでもタマちゃんとムギちゃんは尻尾をフリフリさせて挨拶をしています。

 グミちゃんは、私の頭の上で元気よく触手をフリフリとしていますね。

 そして、幼馴染三人組もやってきましたが、案の定一人は眠たそうです。


「「おはようございます」」

「……ます……」

「カナは、眠りながら歩いているのか?」


 やはりというか、カナさんはマナさんに手を繋がれて殆ど眠りながら歩いていました。

 ほぼ返事もできないところをみると、ある意味大きな赤ちゃんだと言えそうです。

 全員揃ったので、馬車乗り場に向かいます。


「「ふしゅー、ふしゅー」」

「トールちゃん、限界……」

「だあ、あと少しで馬車に乗るから少し待て!」


 タマちゃんとムギちゃんは私に抱っこされながら再び寝息を立てていて、カナさんももう限界っぽそうです。

 やっとのことで馬車乗り場に到着し、目的地の村行きの馬車に乗り込みました。

 オープンタイプかと思ったら、幌馬車タイプなんだ。

 私は空いてる席に寝ているタマちゃんとグミちゃんを座らせて、お金を払います。


「すみません、あの二匹の分はどうしますか?」

「一席に二匹いるから、ちょうど一人分だな」


 席を占有しているのもあるので、キチンとお金は払います。

 私はこれで大丈夫ですけど、カナさんが大変でした。


「すー、すー」

「この年になって、膝枕するとは思わなかったよ……」


 トールさんに膝枕されながら、カナさんはすやすやと眠っていました。

 シチュエーション的には、男女が逆な気がします。

 お金はマナさんが払ったので、問題ありません。

 他にも、村に行く数人が馬車に乗ってスタンバイ完了です。


「では、行きますよ」


 馬車がゆっくりと進み始めました。

 生まれて初めての馬車だけど、力強さにビックリしちゃいました。

 そして、街を出て街道に入りました。

 天気も良くて、とても気持ちいいです。


「「すぴー、すぴー」」

「くー、くー」

「ブライアンさん、半分寝てますね……」

「早朝だから仕方ないだろう。休憩を取りつつ、順調なら昼過ぎに村に着くぞ」


 微笑ましい光景だと思いつつ、私は馬車の後方で流れていく景色を眺めています。

 いよいよ、セレスティア伯爵領に向けて出発ですね。

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