第六十五話 旅の予定ときな臭い話

 セレスティア伯爵領に向かう日が近づく中、現地に向かう面々が冒険者ギルドの個室に集められました。

 もちろん、私たちも集まっています。

 他にトールさんたち三人組に、五人ほどの冒険者が集まっていました。

 話は、現地に行く手順と宿の件です。


「道中は、二つの村を経由してセレスティア伯爵領に入る。安全を考えて、馬車での移動だ。セレスティア伯爵領に着いたら、指定の宿かあるから冒険者ギルドに確認するように」


 引率者のブライアンさんが、私たちに説明をします。

 どうも、過去に参加者を闇討ちする事件があったらしく、安全確保の為に宿は決まっているそうです。

 公平な大会運営をする上でも、こればっかりは仕方ないですね。


「俺たちは三日後に出発だが、他の連中は明日出発だな。道中観光しても良いが、受付開始する一週間後に間に合うようにしろ。冒険者ギルドに集合だ」


 初心者卒業している冒険者なので、ブライアンさんもあまり多くは語りません。

 私はまだ初心者な気がするけど、引率者と一緒だから大丈夫でしょう。

 トールさんたちの幼馴染三人組は、トールさんという存在がいるから大丈夫です。


「大会開始前までは、自己研鑽しても良いし大会準備の手伝いをしてもよい。大会準備は、きちんと報酬が出るから安心しろ。下手に他の依頼を受けて、怪我をすることは避けるように」


 セレスティア伯爵領は人口が多いらしく、その分不良とかも多いそうです。

 更に、他の地域からも沢山の冒険者が集まるので、無用なトラブルを起こさないようにとのことでした。

 ここで、ブライアンさんが私に話しかけてきました。


「マイは治療ができるのもあって、指名依頼が来ている。午前中は教会か守備隊の治療をして、午後は大会設営現場の救護テントにつめてくれ。大会中も、自分の出番以外は救護テントだな」

「確かに、建設現場は沢山の怪我人が出そうですね」

「といっても、建設現場は五日間だけだろう。大体のものはできているから、細かい装飾がメインになる。手があけば、自分の訓練をやってもいいぞ」


 そういえば、前世の武道大会時も無駄に大きな看板を作ったり、来賓席や審判席、更には更衣室や選手の控え室も必要でした。

 大きな大会になるから、準備することも沢山あるはずです。

 大会運営で実際に救護テントの手伝いをしたこともあるし、こういうことなら私もお手伝いします。

 それに、救護テントは大会会場のすぐ近くに設置されることが多いので、試合の様子を間近で見ることもできます。

 これで話は終了で、私たちは解散となりました。

 と、ここでブライアントールさんと私だけ呼びました。

 私たちだけ残すってことは、きっと厄介ごとです。

 グミちゃんたちは、カナさんとマナさんに連れて行って貰いました。


「どうもきな臭い話があってな、セレスティア伯爵領に向かう大会参加者を襲撃している奴がいるらしい。明日向かうのは商隊の護衛任務を兼ねているが、そういうのは大丈夫だ。冒険者だけで行動するものを狙っているそうだ」

「大会参加者を減らして、上位になるようにしているのかもしれないな」

「そこまでして上位になりたい、何かがあるのかもしれないです。いずれにせよ、要注意ですね」


 マナさんならともかくとして、カナさんだったら無理に襲撃者を撃退する可能性もある。

 馬車が襲撃される可能性も考慮しないといけない。

 うーん、中々難しい問題を抱えながらの道中になりそうです。

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