第六十三話 シスターシルクの熱血指導

 私は、朝の訓練だけでなく空いた時間でも身体能力強化の訓練を行なっています。

 魔力制御の訓練も併せて行なっていて、久々に訓練漬けの日々です。

 今日も、教会での治療をしながら空いた時間に魔力制御の訓練をしていました。


「うーん、マイは体に力が入っておる。体の力をダラーんと抜いて、心を無にして、魔力と対話しながら魔力循環と魔力制御を行うのだ」


 グミちゃんだけでなく、司祭様も鬼教師モードで厳しく教えます。

 でも、先輩魔法使いなだけあって、司祭様の教え方は理にかなっています。

 きちんと魔力循環と魔力制御ができないと身体能力強化の制御もできないので、こうして地道な訓練を続けています。

 そして、治療も真剣そのもので行なっていきます。


「もっと患者の体を意識して、ただどこが悪いだけでなくどの様に悪いかを感じとるようにするのだよ。そして、治療する時も必要最小限の魔力で行うんだよ」


 もう一段階上の治療をするようにと、ここでも厳しい指導が行われています。

 魔法の訓練にはなっているけど、司祭様はやはりギルドマスターの母親だと改めて実感しました。

 そして、私が真剣に訓練しているので、この二匹も合間を見て手合わせしていました。


 バシッ、バシッ。


「アン、アン!」

「ギャウ、ギャウ!」


 タマちゃんとムギちゃんが、武器なしで手合わせしています。

 お互いに真剣にやっているので、こちらも中々の迫力です。

 ムギちゃんもだいぶ体力が回復してきたので、素早い動きをしています。

 しかし、タマちゃんも負けじと攻撃をかわして反撃していますね。


「わあ、ワンちゃんとドラゴンが戦っているよ!」

「ほらほら、二匹とも治療中は一旦やめだよ」

「アオン」

「ギャウ」


 小さな子どもに二匹は大人気で、治療の間に相手をしたりしています。

 ムギちゃんも元々優しい性格なので、危険なことはしません。

 子どももドラゴンが珍しいのか、ニコニコしていますね。

 そして、冒険者も教会に治療にくるけど、ビシバシしごかれている私を見て苦笑していました。


「はは、シスターシルクに鍛えられているのか。シスターシルクは、やる時は凄いぞ」

「身をもって感じました。でも、魔法の良い勉強にはなっています」

「だろうな。シスターシルクの魔法は年季が入っているから、魔法使いになりたてのマイとは全然違うだろう」


 冒険者も、私と司祭様の魔力制御の違いを感じていました。

 まだまだ、私がひよっこ魔法使いってのもありそうです。

 こうして、ヘロヘロになりながらの教会での治療が終わりました。

 冒険者ギルドで手続きをしてから、宿兼食堂に向かいます。


「パクパクパク」

「ムシャムシャムシャ」


 グミちゃん、タマちゃん、ムギちゃんが美味しそうにお肉を食べる中、私はヘロヘロになりながらお肉を食べていました。

 今日はためになったけど、流石に疲れたよ……

 すると、私のテーブルにジェフさんとアクアさんが座りました。


「マイ、だいぶ疲れているな。今日は治療だったんじゃないか?」

「その、司祭様に徹底的に魔力制御を鍛えられました……」

「ああ、シスターシルクはスイッチが入ると熱血指導になるからな」


 ジェフさんが苦笑をしながらお肉を食べていたけど、流石に熱血指導をする相手は選ぶそうです。

 私は、その熱血指導をしていい相手に選ばれたみたいです。

 その結果が、この疲労なんですね。


「ふふ、可愛いわね。沢山食べるのよ」

「アオン!」

「ギャウ!」


 そして、アクアさんはタマちゃんとムギちゃんの頭を撫でながらお肉を食べていました。

 多くの冒険者もムギちゃんに慣れたので、こうして頭を撫でる人もいます。

 といっても、ムギちゃんもやたらに頭を撫でさせはしないけど。

 こうして夕食を食べ終えた私は、部屋に入ると早々にタマちゃんとムギちゃんとともに眠っちゃいました。

 明日は、もう少し自分なりに考えた訓練をしよっと。

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