第六十二話 ぶちぎれたタマちゃんとムギちゃん

 翌朝、新たに仲間になったムギちゃんと一緒に守備隊の訓練場に向かいます。

 柴犬くらいの大きさでもドラゴンはドラゴンなので、かなりの注目を浴びています。


「おお、ドラゴンだ! マイちゃん、この子の名前は?」

「この子はムギちゃんです。昨日仲間になりました」

「ムギちゃんね。私はカナだよ、宜しくね」

「ギャウ」


 カナさんはムギちゃんを怖がることなく話しかけていて、マナさんも恐る恐るだけどムギちゃんを撫でていた。

 この場にいる人は、ムギちゃんを見ても大丈夫ですね。


 ひゅーん、ひゅーん。


「グルル! グルル!」

「マイよ、あのドラゴンは何をしているんだ?」

「高速飛行訓練です。ムギちゃんはまだ完調じゃないので、戦闘訓練は控えています」

「リハビリみたいなものか。スライムが指導するなら大丈夫だな」


 ブライアンさんが空を飛ぶムギちゃんを見上げていますが、ムギちゃんは少し痩せていたのである程度抑えて訓練をしてきます。

 骨は治っているので、飛行は問題ありません。

 その間に、私たちは普通に訓練を続けます。

 グミちゃん曰く、体調が戻ったら身体能力を上げる訓練をするそうです。

 そんなこんなで朝の訓練は無事に終わり、冒険者ギルドに戻ります。


「はあ、この後は再試験になった新人冒険者の相手をするんだよね。気が重いなあ……」

「俺だって、奴らの相手をするのは嫌だよ。自分勝手な奴らが多いからなあ」


 冒険者ギルドの訓練場に移動した私とブライアンさんは、お互いに溜息をついちゃいました。

 もう何回も相手にしているけど、再試験になった新人冒険者って色々な意味で馬鹿が揃っているんだよなあ。

 そして、今日集まった新人冒険者もまあお馬鹿な連中だった。


「おっ、講師がいるぞ」

「はは、何だ何だ。貧乳のねーちゃんがいるぞ」

「あーあ、やる気が激減だ」


 ぷちん。


 今日も、本当に馬鹿な新人冒険者がいるなあ。

 特に、ヘラヘラしている三人組は、態度だけでなく頭の中も軽そうだ。

 すると、この状況に怒っちゃったのが何匹か。

 そうです、何人ではなく何匹です。


「ウウー!」

「グルルル……」

「わあ、タマちゃん、ムギちゃん、落ち着いて!」


 私に文句を言った三人組に、二匹が威嚇をしています。

 私は、急いでタマちゃんとムギちゃんを抱き上げました。

 というか、グミちゃんは二匹にやったれと言っているけど、それは駄目だからね。

 すると、三人組が怯えた表情に変わりました。

 何かあったのかな?


「「「ど、ドラゴン……」」」

「グルルル……」


 どうも三人は、唸り声を上げるムギちゃんに怯えているみたいです。

 ムギちゃんは柴犬くらいの大きさといえ、立派なドラゴンです。

 そのドラゴンが威嚇をするのだから、三人組はたまったもんじゃないみたいです。

 そんな私たちと三人組の様子に、ブライアンが苦笑しながら話しかけました。


「マイは、そいつらを宥めておけ。お前らは本当に馬鹿だな。テイマーの主人に喧嘩を売ると、従魔も激怒するぞ。今日の訓練は覚悟しておけよ」

「「「ヒィィィ……」」」


 こういう奴らって、見た目は派手でも中身は大したことはないんだよね。

 ブライアンさんの話を聞いて、震え上がっちゃった。

 その後も自己紹介の時にタマちゃんとムギちゃんが元気な声を上げたので、再度新人冒険者は震え上がっちゃいました。

 ある意味講習は楽だったけど、威嚇は程々にと二匹に言っておきました。

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