第三十五話 どんどんと指名依頼が増えていく
翌日、私は精神的に疲労した状態で教会に向かいました。
そんなヘロヘロな私を見て、シルクさんが怪訝そうな表情をしていました。
「おや、随分と疲れ果てているぞ。どうしたのだ?」
「午前中、色々とありまして……」
午前中の色々とは、昨日ブライアンさんに言われた落第寸前の新人冒険者への再教育です。
今回の落第寸前の新人冒険者も、まず人として常識を知らなすぎだった。
あまりの馬鹿さ加減に、グミちゃんどころかタマちゃんも呆れかえっていました。
流石に説教はしなかったけど、生活魔法の洗礼は受けて貰いました。
この世界では、魔法使いは畏怖の存在だと再認識しました。
因みに、タマちゃんは訓練場の端っこでグミちゃんと簡単な手合わせをしていました。
私も、馬鹿な新人冒険者の相手をしないでタマちゃんの相手をしたかったなあ。
さて、ここからはしっかりと治療をしないと。
私が気合を入れ直していると、シルクさんが改めて私に話しかけてきました。
「お主には、息子と孫が世話になった。流石に、息子も自分の乱れた生活を反省していたよ」
「ギルドマスターも、孫を抱っこできないのではと危機感を持ったみたいですね」
「孫を抱く尊さは、私もよく分かっておる。息子も、暫くは改めた生活をするだろうよ」
シルクさんは、ギルドマスターが改めた生活をするのは限界があると思っているみたいです。
流石母親ってのもあるけど、無理をしない程度に生活を改めて貰えれば相当良くなる気がするけどね。
ということで、シルクさんと雑談をしながら私は治療をしていきます。
面倒なお金の計算は若いシスターさんがしてくれるので、とっても楽ちんです。
「しかし、ねーちゃんが馬鹿な新人冒険者に一発ぶちかました話は、酒場でも良いネタになっているぞ」
「あの、それってこの前私に絡んできた冒険者グループに対応した時の話ですか? さっき別の冒険者を治療していたら、同じ事を、言われました」
「その話もあるが、再講習の時の話もあるぞ。ねーちゃんが弱いって話じゃねーし、別にいいんじゃねえか?」
うう、この前の三人組の阿呆な冒険者を成敗した話も含めて、私の色々な話が出回っているみたいです。
冒険者としては強くても問題ないけど、がさつな女性だと思われるのはちょっと避けたい。
もう、手遅れだろうけど。
「しかし、ねーちゃんはテイマーでもあるのか。スライムがコボルトを鍛えているってのも、かなり面白いがな」
「うーん、別に従えている訳ではないんですよ。どちらかというと、同じチームメイトって感じです」
「強くなりたいコボルトを鍛えているって話だろう。良い話じゃねーか」
そして、教会の治療に使っている部屋の端っこで、またもやタマちゃんがグミちゃんの指導を受けていました。
どうもグミちゃんもタマちゃんも少し有名になっているみたいで、私という存在も相まってマスコットみたいに扱われていました。
冒険者としても、真面目に訓練をしているタマちゃんには好印象みたいです。
「えっとシルクさん、ずっと雑談ばっかりで良いんですか?」
「お主はキッチリと治療しているし、ストレスを吐き出すのもある意味治療の一つだ。ストレスを溜め込んで爆発させてしまった奴を、過去に何人も見てきたのでな」
含蓄のあるシルクさんの言葉に、私も共感できた。
ストレスが爆発して周りを巻き込んだ事故があったのを、過去に何回も見ていたんだ。
愚痴を聞くのも、聖職者の仕事の1つだと思っているみたいです。
こうして、教会での治療も無事に終わりました。
完了手続きをする為に冒険者ギルドの受付に行ったら、今度は別の指名依頼が入りました。
「はい、これで依頼完了です。ところでマイさん、明日は何か受ける依頼は決まっていますか?」
「えっ、何も無ければ薬草採取に出かけようと思っていました。まさか、講習の補助ですか?」
「講習補助の指名依頼もありますが、明日は街の警備にあたる守備隊の治療になります」
講習補助の指名依頼、午前中やったばっかりなのにもう次の依頼がきているんだ。
私はがっくりとしつつ、受付のお姉さんの話の続きを聞くことに。
「巡回に行く部隊もいるので、できれば一日いて欲しいそうです。空いた時間に、手合わせもして欲しいとの事です」
「えっと、それだと私もかなりありがたい条件ですよ」
「マイさんが、剣士ではなく格闘家兼魔法使いというのもあるそうです」
そっか、守備隊はあらゆる対象に対応しないといけないから、複合タイプの私みたいな存在と相手をしたいんだ。
そういうことなら、私もできる限りのお手伝いをしよう。
しかし、今度は守備隊からの依頼か。
どんどんと指名依頼が増えていくのはありがたいけど、スケジュール管理をしっかりしないと。
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