第三十四話 私は中々の高評価?

 ガサガサ、ガサガサ。


「「「グルルルル!」」」


 茂みの中から、まず四頭のオオカミが私達目掛けて飛び出してきた。

 しかし、私達は既に迎撃の準備を整えているので冷静に対処します。


「しっ!」

「えい!」

「えやっ」


 トールさん達の連携は流石で、一番近くに寄っていたオオカミの頭をマナさんがウォーターバレットで打ち抜き、やや遅れてきた残りのオオカミをトールさんとカナさんで迎撃します。

 トールさんはダガーで確実にオオカミの心臓を貫き、それに対してカナさんは派手に二頭のオオカミの首をショートソードで切断していきました。


「凄い、トールさんもカナさんもマナさんの魔法を見ないで迎撃していたよ」

「いやいや、凄いのはマイの方だろう。この短時間で、残りの四頭を倒すとは」


 私も、ワンテンポ遅れて襲ってきた残りの四頭を撃退しました。

 トールさんが私の方を見て思わず苦笑していたけど、これはトールさん達が先の四頭を倒してくれたから残りの四頭に専念できたのもあります。

 さて周囲を探索してっと、もう大丈夫ですね。

 グミちゃんが、さっそく私が倒したオオカミの血抜きを始めました。


「あの、グミちゃんがトールさん達が倒した四頭の血抜きをすると言っています。どうしますか?」

「そのまま血抜きをやってくれ。血抜きをしたオオカミは、マナの魔法袋に入れておくぞ」


 トールさんの許可も得たので、グミちゃんは残りの四頭のオオカミの血抜きをしていました。

 そして、タマちゃんは大興奮しながらカナさんマナさんのところにいました。


「アン! アオン!」

「いやあ、ここまで褒めてくれるとちょっと照れくさいね」

「でも、タマちゃんも私達が凄いって分かるんだね」


 タマちゃんは、カナさんマナさんに頭を撫でられてとっても上機嫌です。

 タマちゃんはまだ戦闘に参加できないけど、戦闘を見て常に勉強しています。

 だからなのか、タマちゃんも最初の頃よりも棍棒の素振りが良くなっています。

 さて、私はトールさんにちょっと気になった事を聞きます。


「トールさん、三人で戦う時は何かルールを決めているんですか? 先ほど、何も打ち合わせをしないのに綺麗に連携ができていました」

「マイは、一回の戦闘でそこまで見えていたのか。詳しくは教えられないが、俺達の中でルールを決めている。そのうち、マイもあのコボルトとスライムと連携方法を決めておくことだな」


 トールさん達は前衛後衛がはっきりしているので、作戦が組みやすいのかもしれない。

 私達は前衛専門のタマちゃんは分かるけど、私もグミちゃんも両方とも前後衛できるんだよね。

 暫くは、タマちゃんの成長具合によりますか。

 さて、グミちゃんの血抜きも終わったので、薬草採取に戻りましょう。

 こうして、午前中だけでもかなりの薬草と私達が倒した獲物を集める事ができました。

 私達は、昼食を食べるために一旦街道そばまで戻ってきました。


「もっしゃもっしゃ」

「タマちゃんって、本当に可愛いわね。行動がいちいち癒やされるよ」

「毛並みももふもふで、とっても気持ちいいわ」


 今度は、マナさんがタマちゃんを抱っこしながらもふもふしていました。

 タマちゃんは、ホットドッグに夢中になっています。

 さて、この後はどうするんだろうか。


「トールさん、午後はどうしますか?」

「できれば、早めに切り上げる。ブライアンさんに、色々話をしたいからな」


 トールさんは見た目は軽そうな性格に見えるけど、中身はとってもしっかりとしています。

 手のかかる幼馴染がいれば、自然としっかりとしそうです。

 私としても、午前中で結構な成果がでたのでとてもありがたいです。


「マイは、派手さはないが確実に成果を出すタイプだな」

「冒険者はリスクのある職業ですから、手堅く依頼をこなしますよ。そりゃ、相手によっては派手に動きますけど」

「そりゃ、冒険者は舐められちゃいけない仕事だからな」


 というか、あえて危険なリスクを負わなくても薬草採取でも結構な金額を得ることができるし、動物や魔物と良い手合わせにもなる。

 まだひよっこ冒険者だから、一攫千金なんてものは目指すつもりはない。

 どちらかというと、トールさんは私に似た考えみたいです。


「さて、腹ごしらえもしたし、午後もやりますか。あと二時間で切り上げるぞ」

「頑張るぞ!」

「アオン!」


 トールさんがお尻をはたきながら立ち上がると、カナさんとタマちゃんが元気な声を上げていました。

 こうして、午後も私達は薬草を集めつつ時々現れる動物や魔物を倒していきました。

 キッチリと、三時前には森から切り上げて街に帰ります。


「ふしゅー、ふしゅー」

「マイさん、タマちゃんを抱っこしていると赤ちゃんを抱っこしているみたいですね」


 森から上がるタイミングで、タマちゃんはお昼寝タイムに突入しました。

 私はお手製の抱っこ紐でタマちゃんを胸に抱いているけど、確かにマナさんの言う通り赤ちゃんを抱っこしているみたいに見えるかも。

 冒険者ギルドに戻っても、ブライアンさんに同じ事を言われちゃいました。


「マイは、コボルトの母親みたいだな。トール、マイはどうだった?」

「レベル的にはルーキーの枠ではないですね。経験を積めば、中々面白い存在になるかと」

「ふむ、やはりそうか。分かった、ご苦労さん」


 ブライアンさんは、トールさんから私の話を聞いて一人で納得していました。

 ブライアンさんは新人教育で忙しいから、こうして信頼の置ける冒険者に新人冒険者の力量を改めて確認しているのだろう。

 私は手持ちの資金不足なので、暫くは指名依頼と薬草採取を続ける予定です。

 因みに、明日の午後は教会で治療を行う予定です。

 という事は、午前中は時間が空いています。


「マイ、明日の午前中はまた再教育対象の新人冒険者の相手をするぞ」

「えー! そ、そんな……」


 私は、ニヤリとしたブライアンの笑顔を見て思わず崩れ落ちてしまいました。

 落第寸前の新人冒険者の相手ほど、面倒くさいものはないです。

 トールさんがご愁傷さまという視線を私に向けてきたけど、残念ながら手伝ってくれるとは一言も言いませんでした。

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