第29話 2024/09/22 諦め
最近、私の70台の知り合い三人が元気がない。
ひとり目は、元予備校の現代国語の先生なのだが、「先生、最近もまた韓国関係の本を出版されたんですか(今までに三冊出している)?」とメールすると、「出しました。しかし、これが最後の本になるでしょう」とのこと。「えー、まだまだ若いじゃないですか」と言うと、「うーん、もうどうでもいい」。暗いなーと思った。先生は、元左翼で大学を卒業後、アメリカに渡り、不法滞在をしながら農家の下働きをしていたというアクティブな人だった。河合塾は、毎年契約の更新があるので、実績を残さないと生き残れない。これに相当苦労したと言っていた。エネルギーをもう使い果たしたのだろうか。ブログは結構、更新されているようだが(先生のブログはココ☞https://zannsyo.blogspot.com/)。
二人目は、内科医でうつをやった人だ。最愛の奥さんをガンで失って病気になった。アルコールもかなり進んでいたようで、一度家に遊びに行った際に庭のテラスに焼酎の空いたペットボトル(5リットル入りくらいのやつ)が、整然と並べられていたのにはびっくりした。この人も元左翼で大学を一旦退学になっている。彼によると「双極のうつを治す、抗うつ剤などない」とのことで、時間と自己治癒力でしかうつは、退治できないと言っていた。今は、どうなんですか?と聞くと「四年前になんとか、脱出したとのこと」。電話で話していたのだが、風の音が聞こえる。今、外ですか?と聞くと、「リビングが広くて電気代がもったいないので、扇風機をつけている」というのには笑った。贅沢な悩みだね。
三人目は、元建築家。この人とは私の母が行っていた山登りの会のリーダーだ。やはり、元左翼。電話で雑談をして、カクヨムに文章を書いているから、良かったら読んでほしいというと実は、コンピューターは捨てたと言うので、びっくり仰天した。
「どうして捨てたんですか?」と聞くと、
「いや、もういいかなと思って」
「…………」
ただ、彼は山の会とそれから、ジャズバンドでサックスは吹いている。それが、社会とのつながりだと言う。しかし、ほんの20年前までネットなんか無かったわけだしね。なんとか、やっていけないわけではないとは思うが…。
優秀な人ほど、なんだか暗くなってきている。私が思うに環境問題。これが根っこにあるのではないだろう。諦め。そういう心境に彼らは至ったのだろうか。私も彼らのふりをして諦めてみようかな。
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