第15話 幸運のジュエリー

 翌日の朝に冒険者ギルドへ行って、サンラクさんの依頼を受けた。

「初めての護衛依頼ですが大丈夫ですか」

 ミクリザさんが心配そうに聞いてくる。


「私たち以外にも、護衛の冒険者パーティーがいるから不明点は聞くつもりよ」

「分かりました。魔物や盗賊に気をつけてお願いします」

「ところでしばらくはマーザレントで過ごすつもりだけれど、依頼達成は向こうの冒険者ギルドでも平気?」


「ハイビリス王国内の冒険者ギルドでしたら、連携が取れていますので平気です。もうロベンダーへは戻ってこないのですか」

 寂しそうな表情をミクリザさんがみせた。


「いろいろな土地を旅したいから定住は考えていないけれど、機会があればロベンダーへ寄るつもりよ」

「寂しいですが、各地をまわる冒険者は多いです。またロベンダーへくるのをお待ちしています」

 ミクリザさんと別れて冒険者ギルドをあとにした。


「このあとはどうしますか」

 オパリルが聞いてくる。私にはあとひとつ寄りたい場所があった。

「第3自衛団へ挨拶に行くつもりよ。私だけで平気だからオパリルとスフェキン、アウイトは用事があるなら別々の行動で構わない」

 みんなに視線を向けた。


「わたしは用事が終わっているので、ジュムリアちゃんと一緒に行きます」

「俺は料理道具や食材を見て回りたい」

「僕、スフェ、一緒、行く」


「ここからは別行動ね。お昼前には宿屋へ集合して、ロベンダー最後の昼食をみんなで一緒に食べましょう」

 私はオパリルを引き連れて、第3自衛団がいる場所へと向かった。


 第3自衛団は訓練中で中庭に案内してもらった。ちょうど訓練の合間で休憩しているカルスミスさんとノナハさんをみつける。

「ロベンダーへ残る気持ちにでもなったか」

 カルスミスさんが声をかけてくれた。


「明日にはロベンダーを出発します。短い時間でしたがロベンダーでの出来事は忘れません。さいごにカルスミスさんとノナハさんへ渡したいものがあります」

 私は空間拡張鞄からジュエリーを2つ取り出した。オパリルに作ってもらって、オパール開放を念じた小さめのブローチだった。花びらをオパールで葉っぱはエメラルドで作り、地金はロベンダーで入手したゴールドを使っている。


 カルスミスさんとノナハさんへそれぞれ渡す。

「無数の色がみえるオパールが素晴らしい。エメラルドも品質が高くて、ジュエリーの作りも見事だ。ありがたく頂こう」

「自分ももらえるとはうれしい。大切にさせてもらう」


 ふたりとも喜んでくれた。オパール開放の能力である幸運上昇がどの程度かは不明だけれど、すこしでもふたりに幸運が訪れればと願った。地上に追放された目的でもある、人間とのふれあいに繋がると思っている。


「気に入ってくれてよかったです。また会える日を楽しみにしています」

 別れの挨拶をして、その場をあとにした。


 宿屋に戻るとスフェキンとアウイトがいたので、みんなで街中へ向かった。まだ食べていない料理を探すために屋台をまわって、少量ずつみんなで食べ歩いた。

 私自身の消滅を回避するために地上へ追放されたけれど、おいしい料理を堪能できるのはうれしかった。


 翌日は朝食を済ましたあとに宿屋を引き払って、サンラクさんに指定された場所へ向かった。サンラクさんからはほかにいる護衛の冒険者パーティーを紹介してもらって、馬車に荷物が積み終わるとロベンダーの門をくぐった。


 向かう先は北の方角にある街マーザレントであった。どのような人間たちとの出会いがあるのか、きれいな宝石とおいしい食べ物に巡り会う旅でもあった。


(了)

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神々に愛されて地上界へ追放された ~宝石女神は気ままな旅を満喫する~ 色石ひかる @play_of_color

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