第14話 自衛団からのお礼

 翌日の朝に第3自衛団がいる場所へと向かった。この前と同じ部屋に案内されて目の前にはカルスミスさんとノナハさんが座っている。私の横にはオパリルとスフェキンがいて、アウイトを抱きかかえていた。


「昨日は助かった。魔獣が出現したときは全滅も覚悟したが、魔獣をひとりで倒すとはハイビリス王国でも一握りの人物しかいない。これでしばらくは魔物の脅威から解放されるだろう」

 カルスミスさんが最初に口を開く。


「予想以上にスフェキン殿とオパリル殿の強さに驚かされた。ジュムリア殿の回復魔法も神殿関係者と思わせるほどだった」

 ノナハさんも私たちを褒めてくれて、正体は明かせないけれどうれしかった。


「私たちの出来ることを実践しただけです」

「自衛団、いやサイジア伯爵家に仕えないか。お前たちなら最上級の条件で迎えることが可能だ」


 カルスミスさんとノナハさんだけではなくて、オパリルとスフェキン、アウイトも私に注目する。


「うれしい申し入れですが、私はその土地のおいしい食べ物と巡り会うために旅をしています。ですからお断りします」

「ロベンダーにも高級品から庶民向けまで、たくさんの料理があるぞ」


「知らない料理に出会いたいのです」

 本来ならオパリルが交渉を担当するけれど、食べ物に関して私は妥協しないから私がそのまま話していた。


「どうしても無理か」

 なおもカルスミスさんが食い下がる。

「ロベンダーにはまた寄るかもしれませんが、ひとつの場所にとどまる選択は考えていないです。私の考えは私たちの総意です」


 カルスミスさんが私を見つめるけれど、そのまま視線をそらずに受けて立った。カルスミスさんの中で決心がついたみたい。


「分かった。残念だがこれ以上は引き留めない。あとは報酬の空間拡張鞄についてだが、ノナハから説明をさせる」


 カルスミスさんがノナハさんへ視線を送ると、ノナハさんがテーブルの上に2種類の鞄をおいた。ひとつは両手に乗るくらいの大きさで、もうひとつは二回りほど大きく、肩からかける鞄くらいの大きさだった。


「2つの鞄とも小容量の空間拡張鞄で、入れられる量は同じだが、それぞれに特徴がある。小さい鞄は持ち運びしやすいが小物しか入らない。大きい鞄はその逆だ。鞄の口よりも大きいものは入らないから、選ぶ上での基準にしてほしい」


 どの程度が入るかノナハさんへ聞くと、小さい鞄は見た目の20倍、大きい鞄は見た目の4倍くらいで、背中に背負う荷物くらいを入れられるみたい。

 私には大きな荷物はなくて、宝石や鉱物も小さいものが多い。

「私は小さい鞄をもらいたい」


 私が答えると、オパリルとスフェキンも希望を話す。

「わたしはいろいろな品物を入れられるように、大きい鞄が希望です」

「俺も大きい鞄だ。いくつかの料理道具が入りそうだ」


「小容量の空間拡張鞄は熟練冒険者レベルなら持っている人物も多いが、珍しい品物には変わりないから注意してくれ。普通の鞄のように使うのが望ましい」

 ノナハさんが話ながら、私たちに空間拡張鞄を渡してくれた。

 最後にカルスミスさんが依頼完了のサインをしてくれて、依頼が完了となった。


 カルスミスさんとノナハさんと別れてから冒険者ギルドへ行って、カウンターにいるミクリザさんへ依頼書を渡す。

「完了を確認しました。こちらが報酬の金貨3枚です」

 ミクリザさんが私たちの前に金貨をみせる。


「たしか金貨1枚と小金貨5枚だったと思う」

 私の記憶間違いかともって聞き返した。

「当初の予定ではジュムリアさんが話した金額でしたが、昨日の夜にカルスミス様がいらして、2倍の報酬と指示しました。魔力だまりの探索で何かあったのですか」

 興味深そうにミクリザさんが聞いてくる。


「ちょっと強い魔物が出ただけよ」

「そうですか。冒険者に成り立てですから、無理をしないようにお願いします」

「気をつけながら魔物退治するね」


「それで今日は何か依頼を受けますか」

「昨日の疲れがあるから今日はゆっくり休むつもり。オパリルとスフェキンも、依頼を受けない方向で平気?」

 私が聞くと、オパリルとスフェキンが頷いてくれた。


「ではまた何かありましたら、声をかけてください」

 ミクリザさんに見送られて冒険者ギルドをあとにした。その後は商店街で買い物と昼食を食べてから、夕方前に宿屋へ戻ってきた。


 夕食前の時間帯に、サンラクさんが宿屋へ訪ねてきた。

 宿屋の1階にあるテーブルに座って、サンラクさんへ話を聞く。サンラクさんのとなりにスフェキンが座って、私の横にはオパリルがいた。アウイトはテーブルの上で休んでいる。


「ロベンダーでの商売が終わって、明後日にはマーザレントへ戻ります。以前話したと思いますが、都合があえば護衛依頼を引き受けて頂けないでしょうか」

「私は平気だけれど、オパリルとスフェキンの都合はどう?」

 ロベンダーにあった料理や食材の多くを堪能できて、新鮮な野菜も食べられて私は満足している。


「わたしは問題ありません」

「料理関係の材料は明日買えるから、明後日なら大丈夫だ」

「護衛依頼を引き受けるから、詳細はオパリルと調整してね」


「有り難うございます。助かります」

 サンラクさんがうれしそうに答えた。護衛内容や価格面について、サンラクさんとオパリルで話し合った。通常よりも高めの価格で交渉がまとまった。護衛依頼はこのあとすぐに冒険者ギルドへ提出したいようで、サンラクさんは宿屋を出ていった。


 私たちは少し早めに夕食を食べて部屋へと戻った。その日の夜はオパリルにお願いしてジュエリーを作ってもらった。そのジュエリーに心を込めて『オパール開放』と念じると小さな七色の球体が出現して、ジュエリーへ吸い込まれていった。

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