第12話 アウイトの実力
翌日の朝焼けがきれいな時間帯に、領都ロベンダーをあとにした。今回行く場所は西の森で、山に入る手前までを往復するみたい。私たちは列の中央付近で、カルスミスさんとノナハさんの近くにいる。
私の両脇にはオパリルとスフェキンがいて、アウイトは空を飛んで周囲を確認しながら、たまに私の元へ戻ってくる。
「どのあたりを中心に探索するの?」
近くにいるノナハさんへ聞いた。
「ふだん人が入らない森の奥を目指す感じだ。とくに魔力だまりは木々が密集していたり、くぼみなどの風が停滞する部分に出現しやすい。魔力だまりは黒紫色の水たまりと黒紫色の霧が特徴だから、もし見つけたら知らせてくれ」
「アウイトには空から探索させるから、見つかったら連絡するね」
「あの青い鳥か」
ノナハさんが上空を見上げた。
「その通りよ」
「森の中からでは見つけにくいから期待している」
人がふだん通らない森の奥へと進んでいく。木々の合間からみえる山は、きもち大きくなってきた。途中で魔物が出現するが第3自衛団で対処してくれたので、私たちは魔物が倒されるまで待っていれば済んだ。まだ魔力だまりは見つかっていない。
森の奥まで来て遅い昼食の時間となった。干し肉に硬いパンとおいしい食事ではなかったけれど、これが旅で食べる普通の食事とノナハさんが教えてくれた。
食事が終わってアウイトが飛び立って、出発の準備を始めているうちに、アウイトがすぐに戻ってきた。
『魔力まだり、見つけた』
とうとう探していた魔力だまりが見つかった。
「さすがアウイトね。どの辺りに魔力だまりがあったの?」
『西側、ひとつ、大きい』
「ノナハさんに知らせるから、みんながみえる高さで先導してね」
片付けをスフェキンにお願いして、オパリルと一緒にノナハさんの元へ急いで向かう。私たちの表情がさきほどまでと違ったのか、ノナハさんが動きを止めた。
「どうした? 何かあったのか」
「魔力だまりが見つかったよ。早めに確認したほうがよいと思う」
「本当か。準備ができたら、すぐに案内してくれ」
ノナハさんがカルスミスさんの元へ駆けだした。私たちはいつでも移動できるように、スフェキンの元へと戻った。
アウイトを先頭に移動を開始する。
誰も無駄話をしている人物はいなくて、黙々とアウイトの後を追いかける。森の中へ進むにつれて、魔物が強くなって数が増えていく。進行速度を落としながらも進み続けた。
日が傾きかけたころに、私にも異変が分かった。前方の木々の間から黒紫色の霧が見え隠れした。
「魔力だまりだ。全員配置につけ」
カルスミスさんの声があたりに響くと、第3自衛団のみんなに緊張感が走った。風魔法を使うと思われる団員が集まりだして、周囲を盾持ちの団員が守っている。
3名の団員が魔力だまりに向かって走り出したが、すぐに戻ってくる。
「魔物の数が多くて近づけません。ロックベアーと思われる魔物もいました」
戻ってきた男性のうちひとりがカルスミスさんへ報告した。
「俺が先頭で道を切り開く。道を確保しながら魔物を殲滅だ。最後尾はノナハだ。後方の判断は任せる」
カルスミスさんが前方へ動き出すと、私はノナハさんも元へ向かった。
「私たちはどうしましょうか」
「自分と一緒に最後尾にいてくれ。強い魔獣や魔物を見かけたら、すぐに対応してほしい。ジュムリア殿は怪我人を見かけたら回復を頼む」
「分かりました。オパリルとスフェキンはみんなが危険になったと判断したら、私の判断を仰がずに対処してほしい」
ノナハさんに答えたあと、オパリルとスフェキンへ指示を出した。
「ジュムリアちゃんを守りながら対処します」
「魔獣や魔物は俺に任せてくれ」
オパリルとスフェキンも武器を構えた。カルスミスさんが移動を開始すると、全体が動き出して魔力だまりへ向かう。
魔物が強くなって数も多いけれど、オパリルとスフェキンとの戦闘訓練による成果が現れたのか、陣形を崩さずに奥へと進んだ。
「魔力だまりがみえたぞ。もう少しだ」
カルスミスさんの声が私たちまで届いた。
順調に進んでいたと思ったときに、上空からアウイトが急降下してきた。
『魔獣、右側、見つけた』
私たちには見えないけれど、きっと右側の奥に魔獣がいるはず。
アウイトの声を聞いたと同時にスフェキンが駆けだす。オパリルは私を守るように立ちはだかった。私は近くにいるノナハさんへ声をかける。
「魔獣が現れてスフェキンが向かったよ。右側を注意してほしい」
私の声で立ち止まったノナハさんはこちらへ視線を向けた。私は黙って頷いた。
「魔獣が右側に出現した。スフェキン殿が向かったが警戒を怠るな」
ノナハさんの声が全体の行き渡ると、カルスミスさんも足を止めた。
「この場所で魔物を退治する。深追いはするな」
『スフェ、魔獣、戦闘』
アウイトの声が戦闘開始を知らせてくれた。
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