第8話 冒険者への登録

 昼食後、サンラクさんに案内されて冒険者ギルドへ来た。アウイトは私の肩に乗っていて、オパリルとスフェキンが私の前後にいた。

 冒険者ギルドは2階建てで、宿屋よりも二回り大きかった。買い取った品物や魔石の保管庫、訓練場もあるとサンラクさんが教えてくれた。


 建物の中に入ると冒険者らしき人たちが何名かいた。サンラクさんはまっすぐ奥に向かって歩いて、カウンターの前で止まる。

「冒険者ギルドの受付となります。こちらで冒険者として登録できます」

 サンラクさんが説明すると、受付嬢が私たちのほうへ顔を向けた。


「こんにちは、私は受付のミクリザです。冒険者ギルドへ入会希望でしょうか」

 受付のミクリザさんが笑顔を見せながら話しかけてきた。見た目の年齢はオパリルと同じくらいで、整った顔立ちと長い髪が印象的だった。


「私たち3人が冒険者になりたい」

 私が答えると、オパリルとスフェキンが一歩前に出て、サンラクさんがうしろへと下がった。


「分かりました。冒険者へなるには基本情報の記入と犯罪歴の確認、さいごに登録料を支払えば冒険者になれます。読み書きがむずかしい場合は、私のほうで説明と代筆も可能です」


 ミクリザさんがカウンターの上に用紙をおいた。名前に性別と年齢、主な武器と魔法の有無に種類、使い魔がいるかを書く欄があった。

「問題なく読めて書けるから平気よ」


「それでは記入をお願いします。冒険者は15歳以上でないと登録できません。武器や魔法はパーティーを組むときの参考になるので、得意な種類をお書きください。使い魔は野生と区別するために、使い魔が身につける品物にギルド印をつけます」

 私たちが書く上での参考情報を教えてくれる。それぞれの項目を記入して、ミクリザさんに紙を渡した。


「魔法が基本だから、武器は空欄でも平気?」

「大丈夫です。ジュムリア様、女性で17歳、武器なしで回復魔法ですね。回復魔法を使える冒険者は少ないです。使い魔は肩の乗っている青い鳥ですか」

「その通りよ。アウイトという名前だからよろしくね」

 私が答えるとアウイトが翼を広げでお辞儀した。


「かしこい使い魔ですね。つぎはオパリル様、女性で21歳、武器は弓で水魔法も使えるのですね。さいごはスフェキン様、男性で24歳、武器は剣で魔法はなし。これで間違いないでしょうか」


「わたしの内容は平気です」

「俺も問題ない」

 オパリルとスフェキンがそれぞれ答える。


「ありがとうございます。このあと犯罪歴を確認して、問題がなければギルド証の発行と使い魔へのギルド印となります」

 ミクリザさんが奥から球体の魔道具を持ってきた。門でみたのと同じで、全員が青色に光った。アウイトの足に着けているミスリルリングへギルド印を着け終わるころに、冒険者を証明するギルド証ができあがった。


「こちらがギルド証のプレートです。依頼時や街の出入りで必要となりますので、なくさないでください。最初のランクはブロンズで、シルバー、ゴールド、ミスリル、オリハルコンとランクが上がります」

 受け取ったギルド証は銅で作られていた。表側に名前など本人の情報が書かれていて、裏側にはギルド印が彫られている。


「それぞれのランクはどの程度の強さなの?」

「ブロンズが駆け出しで、シルバーが一人前となります。それ以降は熟練、一流、達人の強さです。冒険者として活動するのなら、シルバークラスがひとつの区切りになります。ミスリルランクまでいけば、国からも一目置かれます」


「まずはシルバーランクを目指すね」

 私の質問にミクリザさんがていねいに答えてくれる。ランク以外に依頼方法や罰則なども教えてもらった。


「ほかに質問がなければ、登録料として3名で小金貨3枚をお願いします」

「魔石を売ったお金で登録料にしても平気ですか」

 私に代わってオパリルが質問した。


「可能です。どの色の魔石となりますか」

「緑魔石と青魔石をもっています。すべて換金して、その中から登録料を差し引いてください。不足分は硬貨で支払います」

 オパリルがロックベアーとブルーウルフから入手した魔石を取り出して、ミクリザさんへみせる。


「緑魔石が3個以上はあるので、登録料は問題ありません。緑魔石が1個で小金貨1枚、青魔石が1個で銀貨1枚となりますがよろしいですか」


「それで構いません」

 オパリルが答えると、ミクリザさんが魔石の確認を始めた。

 すべて本物の魔石と確認もできたみたいで、登録料を差し引いても金貨1枚以上のお金を受け取った。


「依頼は掲示板に貼られています。ひとりなら同じランクまで、3名以上ならひとつ上のランクまで受けられます。どの依頼が適しているかの相談も可能ですので、気軽に声をかけてください。これからの活躍に期待しています」

 すべての説明が終わって、さいごにミクリザさんがお辞儀した。


「説明が分かりやすくて、ありがとう。今後もよろしくね。明日に依頼を受けると思うから、そのときにおすすめの依頼を教えてね」

 私の言葉に笑顔で頷いてくれた。


 私たちは冒険者ギルドをあとにした。サンラクさんは仕事があるみたいで、冒険者ギルドの前でわかれた。今日の目的が達成できたので、ロベンダーをぶらついたのちに宿屋へと戻った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る