【父子#2】

「ね、ね、父さん」

「誰が父さんだ」

「え? あ! 親父だった! ごめん!」

「素直でよろしい。で、どうした?」

「これなぁに?」

 まだ若く、顔立ちの整った男が息子から受け取ったのは、物置の奥に段ボールに詰めて保管していたはずの、灰色のCDだった。正確には、曇天の中飛行する機体が半分ほど映っているもので「DELAYEDEAD」というタイトルが控えめに垣間見えた。

 男は喉の奥底に強烈な痛みを覚え、思わず首元に手をあてがった。

「吉乃、おまえ、これどこで……」

「ええ? 洗面所の鏡の所。親父昨日滅茶苦茶酔っ払ってて、なんか物置の部屋で色々やってたの覚えてない? 独り言も言ってたよ」

「ひ、独り言? おまえ、聞いてたのか?」

「聞いてたっていうか、親父叫んでたから、聞こえた。『会いてぇ』って、泣きながら」

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