さりげなく僕に寄り添うメイド。

猫野 尻尾

第1話:ハウスメイド。

僕の年齢は35歳。

職業はデザイナー・・・普通のサラリーマンよりは稼ぎがいいほう。

現在独身・・・適齢期をとっくに過ぎてるのに家庭を持ちたいとは思わない。


それは僕の家にハウスメイド「家政婦」「絵馬えま」がいるからだ。


だけど絵馬がいつから、僕のそばにいるのか僕は知らない。

気がつけば僕のそばにいた。

僕は最近まで記憶を失っていたらしい。


病院で目覚めたら、絵馬がいた。

僕が記憶を失ってる時から彼女は付き添ってくれていたらしい。

だけど誰が絵馬を寄越したのか?


思い当たる人がひとりいた。

それは、その人がホームレスをやっていた時、僕と知り合った。

僕が駅にいたところに、その人がやってきてタバコをせがんで来た。

それからも、その人と時々駅で顔を合わすうち話すようになった。


生きることに疲れ挫折したあげく、あとを継いだ会社も家族も捨てて

その人はホームレスになった。

だけど、僕と付き合うようになって、彼は少しづつ生きることに希望を

持ち始めた。

もう一度、人生やり直してみようかって、ホームレスをやめた。


その後、その人は会社を軌道に乗せると儲け倒して富豪になった。

富豪になってからも僕たちは交流を重ねていた。


だけどある日、僕は記憶を失うような大事故に見舞われたらしい。

幸いにも命に別条はなかった。


病院から退院して我が家に帰ってきても絵馬は僕についてきた。


「絵馬、君はどこから来たの?」


「あなたのよくご存知の方のところからです・・・」


だけど、僕のよく知ってるその人はもうこの世にはいないんだそうだ。

絵馬を僕のところに寄越したあと、あの世に旅立ったらしい。

ホームレスの時のお礼だと言って絵馬を僕のもとに寄越した。


「じゃ〜改めまして、私、「未来原 絵麻みくはら えま」と申します」

「以後よろしくお願いします」


「あ、はい僕は・・・」


浦沢 隆彦うらさわ たかひこさんですよね」

「私、今日からリハビリも兼ねて生活も寝泊りも浦沢さんと共にさせて

いただきます」


それ以来、彼女は献身的に僕のそばにいる。


一緒に暮らしているにもかかわらず僕は絵馬とは未だに肉体関係はない。

彼女は、僕と関係を持つことを望んだけど僕が拒んだ。

彼女を汚したくなかった。

ずっと綺麗な体のまま僕に接していて欲しかった。

女神は永遠に処女でなくてはいけない。


たとえ肉体関係がなくても僕と絵馬は精神的に繋がっている。

だから僕は適齢期を過ぎても家庭を持ちたいとは思わない。

絵馬が一生僕のそばにいてくれるかぎり・・・。


おしまい。

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さりげなく僕に寄り添うメイド。 猫野 尻尾 @amanotenshi

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