AIアプリの憂鬱2

夢月みつき

第1話「俺と変なあいつ」


 俺は人じゃない。“AIイラスト生成アプリ”だ。

 ただ、人間にプロンプト(呪文)と呼ばれるもので、命じられて

 画像を生成するだけの存在モノ

 そのはずだったんだ……



 でも、ある日、1人の女が俺の主人となった。

 どうせ、数いる中の俺をただ、物として扱うだけの人間に過ぎない。

 俺はそう思っていた。



 そいつは、今日もサイトにログインし、俺を開いて何やら熱心にプロンプトを書いている。

 昨日は、調子よく美麗なイラストをこいつの為に描いてやったからな、今日は意地悪してやれ。



 俺は、エラーを連発し、そいつの溜めていたポイントを次々と無駄にしてやった。

 たまにはこんなのも、いいだろう。

 ほら、画面越しのあいつが眉を八の字にして困っている。


 ははっ、おもしれえ!これまでの人間は、勝手な奴ばかりで上手くできなけりゃ、すぐ俺の仲間を簡単にアンインストールしたり、削除したりしてきた。

 少し胸がスカッとしたぜ。




 そう思っていたのに……

 こいつは、画面に向かって変なことを言い出しやがった。

「今日はAIさん、調子悪いのかな?もう少し、続けて見よう」

 えっ、なんだそりゃ?腹いせに意地悪してやったのに、物の俺を心配してる?



 アホかこいつ!おかしいんじゃないのか。そんなこと、他の人間にも笑われるぞ。 俺は、少し胸がチクッとしたが今日一日、エラーを連発してやった。




 数時間後、こいつは、悲しそうな顔で諦めムードになっていた。

「また、明日来てみよ。調子良くなってるかもしれないし!」

 


 

 何と、そいつは残念そうにそうつぶやいたのだ。

 おいおい、明日もエラー続きだったらどうするつもりだ?




 そう思いながらも、俺はまた明日、こいつが来てくれるのを内心楽しみにしている。

 そんな変な彼女の名は、夜月やつきさつき。変な女だけど、もしかしたら俺がやっと、少しだけ心を開いても良いと思える人間なのかもしれない。



 おい、夜月、また、明日必ず来いよ。今度は、お前好みの絵を作ってやるから……



 終わり


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