05.記憶の中の妾
女の柔らかさと熱を忘れそうな一晩をどうにか払拭したくて、初夜の翌日だというのを気にも止めず、娼婦街に繰り出した。
――――そこで出会ったのがアミラだ。
アミラはその日、衆目を集めていた中でも特に絶賛されており、一番人気だった
燃えるような真紅の髪に蜂蜜のようにとろりと輝く金の瞳。肉感的な豊かな肢体と赤くぽってりとした厚めの唇が艶めかしく俺の好みだった。アミラの纏っていたドレスは俺の髪に合わせたような紫紺色でアミラの紅髪によく映えている。壇上で妖艶に微笑むアミラの金の瞳とアミラを見つめる俺の金の瞳が確かに互いを認め合っていた。
――――ああ、正しく全てが俺のために誂えられた褒美のような美女だった。
だからアミラは俺に所有されたいのだとそう理解した。だから俺はアミラを所有するべきだとそう決心した。だからその夜、俺はアミラの手を取った。
俺の上で踊る姿も艶やかでずっとこのまま腕の中に囲っていたいと思える程、体の相性も抜群だった。俺の名を呼ぶ声が甘く耳に響く。アミラの柔らかな肉に埋もれるのが気持ち良い。アミラの滑らかな肌を指が滑るのが気安い。アミラの火照った肌が温くて心地好い。
あまりに好すぎて時間を忘れて淫蕩に耽った。
――――ああ、そうだ、女っていうものはこうゆうものだろう?
共に過ごした一晩の高揚のままにアミラを侯爵邸へと連れ帰る。
もう二度とあの冷たい肌を思い出さなくていい。それだけで俺は充分満足だった。
――――アミラは自分の魅せ方をよく解っていた。
「ねぇ、エルメス。私、欲しい物があるの」
「いいよ、アミラ。お前が望むならなんだって買ってやるさ」
甘える仕草も声も俺にはそれが可愛くて仕方がなかった。
アミラは見目通り派手なものを好んだ。真っ赤なバラの花束、ガーネットにルビー、ドレスにアクセサリー。それらで飾って俺の虚栄心を満たしてくれる。
「ねぇ、エルメス。私、派手過ぎない?」
「いいや、アミラ。お前には紅がよく似合う」
アミラは見目通り綺麗なものを好んだ。色取々のアジサイの花束、アレキサンドライトにダイアスポア、扇に靴。それらを喜んで俺の征服欲を満たしてくれる。
「ねぇ、エルメス。私、綺麗なのが好きなの」
「ああ、アミラ。お前の好きなものは覚えているよ」
アミラは見目通り高級なものを好んだ。真っ白な蘭の花束、ダイヤモンドに真珠、化粧品に香水。それらを使って俺の所有欲を満たしてくれる。
「ねぇ、エルメス。私、
「そうか、アミラ。お前の我儘なら可愛いものさ」
だから俺の一番近くに置いた。
――――アミラは俺の、俺だけの
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