第15話 助けに来ました!え?ナニしてるの?


「んッ...///ん〜」


「アイリス様ぁ……」


「美味しい?」


 はぁはぁ...///セレネさん……凄い包容力がある人だな……


「アイリス様……リム様……」


「寝ながら舐めてる……可愛い!」


 いつもは冷静沈着で、こういう時だけ可愛くなる女の子ってイイよね。

 リムちゃんもそうだけど、長髪でクーデレってほんとに刺さる〜


「大丈夫だよ、私はここにいるよ」


 ゆっくりと語りかける。この声が聴こえているかは分からないが、それでもセレネさんが安心してくれるのなら……

 リムちゃんには申し訳ないことをしたなぁ。でもリムちゃんも確かセレネさんとしてたよね?じゃぁウィンウィンじゃない?


「別にそんなことは無いけど」


「んっん〜……」


「起こしちゃった?ごめんね?」


「…………!?」


「どうしたの!?そんなびっくりして!」


「す、すみません!私はてっきり地べたなどと思って……」


 ちなみにさっきの構図は私の腕を枕にしてセレネさんが寝ていると言うなんとも、カレカノみたいな構図なのだろうか


「いいよいいよ!気にしないで?いつもリムちゃんにしてるから笑」


「いつも?ですか……」


「どうした?」


「いえ、なんでもありませんよ?」


「え?絶対何かある言い方だよね!?教えてよ!」


「いえ、そこまで気にする事じゃないので」


「まぁセレネさんが言うのなら?」


「では行きましょうか」


「そうだね!よっしゃ〜ボス戦だー」


「はい、準備万端です」


 ボス戦かぁ本格的にやるのは初めてだなぁ。リムちゃんとの練習で何回かセレネさんと戦ったけど……それ以来ずっと魔力コントロールとか微妙な練習だけだし、行けるかな?


「安心してください。アイリス様はリム様の大事な人なので死守します。それと恐らく私抜きでも倒せると思いますが……」


「え?私ってそんなに強いの?」


「そうですね……王国魔導兵士50人位じゃないですか?」


「そんなに!?私いつも地味な練習しかしてないけど!?」


「いえ、地味ではありませんよ。リム様はアイリス様の出来ていない所、後もう少しな所を常に見て分析をしています。更には皆様なお帰りの後、1人で自己分析、私を含め2人の分析をノートにまとめ重点的に練習をしています」


「そんな細かな事まで!?リムちゃんは凄いですね……」


「そうですね……リム様はいつもタイミングを重視しています。リム様がいつも言うのは「たとえ威力が弱くともタイミングさえ合っていれば誰でも最強になれる」といつも仰っています」


「だから繊細な魔力コントロールを重視していたんだ……」


「はい、この事を教えてもらった時は驚きました」


 本当にすごいなリムちゃんは……状況把握能力がスゴすぎる!


「では、お話はここまでにしてそろそろ……」


「そーですね、気合い入れていきますか!」


 私たちは気合いを入れ前進する。

 数分歩くと、目の前に自然に作られた感じがある階段が出てきた。


「この上ですか?」


「はいこの上にボスがいますね」


 この上にボスが……セレネさんとの戦いは私なんて補助だったけど、今日は前線に出るのか……


「緊張していますか?」


「はい、少し……」


「大丈夫ですよ、何がなんでも死守しますし。それか1度戦闘を自力でやり遂げるのもあり……?」


「流石にね!?1人はまだキツイかなー!?」


 少し笑いながらも階段を上がる。階段を上がり終えると、少し大きい体育館位の広い空間に出た。


「あれは?」


 空間の中心には石碑とそう上に大きいクリスタルが浮いていた。


「あれがスポーンする魔具ですね」


 リムちゃんから聞いた事がある。ダンジョン内のボスは常に居るのではなく、挑戦者がボス部屋に入ればスポーンされると……


「準備はいいですか?」


「もち!頑張ろ!」


 私が気合いを入れ終わると同時にボスが現れた。ボスの姿はケンタウロスだった。


「ケンタウロス!?」


「そのようですね」


 ケンタウロスはS級の魔物で、魔物の中でも屈指で頭が良いと言われている。個体差があるが会話が出来るものまで……


「攻撃が来ます!気おつけて下さい!」


 ケンタウロスが前足を思いっきり上にあげ手に持っている槍を地面に突き立てる。するとケンタウロスを中心にドームが展開される。


「これは!?」


「これは、デバフ効果のある領域です。気おつけてください。デバフの効果が分からないうちは安易に動かない方がいいです」


 す、すごいリムちゃん並に状況把握ができている!しかも冷静で最善を選んでいる!尊敬できるぜ!


「分かりました!私は後方で魔法でサポートします!」


「はい、それでお願いします。ひとまず私が近距離で戦います!」


 私は後衛でサポート魔法と遠距離魔法を使う事に専念しないと……


「行きます!」


 先にセレネさんの身体能力向上させる魔法を……

 サポート魔法の精霊は風と水、2匹の精霊を混合する……実はとても繊細な魔力コントロールが必要になる技なのだ。風元素を丸く形成し、その中に水の元素を少量づつ入れる。


「サポート魔法行きます!」


 掛け声が1番大事と言われるボス戦……今みたいに掛け声無しにサポート魔法を発動すると相手が混乱する場合があるので、特にボス戦では大事になってくる……らしい


「ありがとうごさいます、ではこちらからも……」


 セレネさんはっや!一瞬で近づけたじゃん!


「血液操作……」


「私もッ!」


 私も急いで魔法を展開する。攻撃魔法は基本炎の精霊を使う。ここでリムちゃんから教わった事を一つ。「魔法はイメージとタイミングだ。これだけしておけばどんな相手でも勝てる」イメージ……タイミング……まずはイメージ、炎を大きく矢の形で。タイミングは1番大きくなるタイミングで……


「行きます!セレネさん!」


「お願いします」


 大きい炎の矢がケンタウロスの腹部に一直線に行く。


「グォォ」


 ケンタウロスが低い声で唸る。恐らく私の矢とセレネさんの血液操作が同タイミングで入ったのだろう。大ダメージだと思うが……


「ダメージが軽減されています!」


「軽減!?じゃあ相当なダメージを与えないと……」


「そうですね、ここはひとまず私が囮になりますので、アイリス様は上級魔法の準備を」


「は、はい!」


 上級魔法、セレネさんとの戦いで使った物の通づる魔法だ。炎元素が1番ダメージが高いので炎元素で魔法を形成していく。

 上級魔法だけ詠唱が必要であり、その分ダメージは精霊魔法の方が強くなる。


 イメージ……炎の大剣……烈火……


「ここッ!」


 炎が最も大きく靡くとき、魔法を形成する


「赫き聖剣よ、白き精霊よ、黒き力よ我に力を貸さんとする。『|Ιερό σπαθί της φωτιάς《炎の聖剣》』」


 目の前に巨大な大剣が現れる。少し遅めだが、ケンタウロスに刃が降りていく。


「セレネさん!お願いします!」


「任せてください」


「リム様の技を借ります。『|βροχή με αιματηρή λόγχη《血濡れた槍の雨》』」


 セレネさんを中心にケンタウロスを囲うように何槍も巨大な槍が出現する。


「これなら!」


「可能性は高いです!」


 一斉に攻撃がケンタウロスに当たる。ケンタウロスは領域を展開しているので、防御どころなのでは無いのだろう。全ての攻撃が当たるとケンタウロスは血だらけになっていた。


「これでも倒せないとは……」


「少しヤバめな状況です」


 リムちゃんらこんな時どうする……?必ずケンタウロスの弱点を見つけ重点的に攻撃するだろう。だが攻撃をし続けたとしても防がれると思う。リムちゃんはいつも魔法を設置し発動していた。どんな戦いであっても最低限血液操作で罠を設置していた。


「やるしかなのか……」


「どうしました?」


「形勢逆転する方法があります。ですがどれもセレネさんが鍵になります。」


「…………成程、それならいけるかもしれません」


「じゃあ早速……」


「はい、やりますか」


 セレネさんの掛け声で二手に別れケンタウロスに近づく。まずは私が精霊魔法で気を引かせる。その隙にセレネさんは血液操作で槍を形成する。だがこの時に見えるようにではなく、見えないやり方で罠を設置する。


「完了です!」


「わけりました!3…2…1…今です!」


 両方が同時に魔法を放つだが恐らく相殺か半減させられている。だが気を引くだけでいい。

 私はダッシュでケンタウロスに近づく。そしてケンタウロスが前足を上げた時に下を潜り抜ける。


「せーの!」


 一斉に罠と魔法を放つ。壁が揺れる程の騒音が鳴り響く。


「やったの?」


「いえ、まだです。大ダメージは与えられたはずですが……」


「この状態ってヤバくない?」


「そうですね……まぁ一言で言うなら万事休すです」


「じゃあ逃げよっか!」


 ――――――――――――


「あいつヤバすぎ!なんなの!?永遠に追いかけてくるんだけど!?」


「あれ!扉じゃないですか!?」


「ほんとだ!」


 2人で走り回ると大きな鉄扉があった。これって入口だよね?


「重すぎ!ねぇ!これ本当に押すタイプのやつ!?」


「多分そうです!分かりませんけど!」


 私達が奮闘している後ろでケンタウロスが大技を出そうとしている時だった。


「「へ?」」


 ギィィと壮大な音を立てて扉が開く。ちゃんと押すタイプの扉だったらしい


「あれ?何してんの2人とも?」


「リムちゃん!?」


「リム様!?」


「2人ともなんで抱き合ってるの?」


「いえ、これは最前の策です……多分」


 リムちゃんが助けに来てくれた!これは勝ったな!


「リムちゃん助けてください!もう無理ですぅ〜」


「はいはい、そんな事だろうと思ったよ。でも私の教えを理解してくれたかな?」


「そりゃーもちろんですよ!リムちゃんのお陰でここまでダメージを追わせることが出来ました」


「そうです、なので後は任せました……」


 「ボスはケンタウロスか……少しダルめだな。ま、私にかかればEZなんですけどね〜」


 かっこいい!流石リムちゃん!いつものテンションから一変してちゃんとした戦闘モードになるの刺さるなぁ


「これからどうやって闘うんですか?」


「簡単だよ。ケンタウロスは行動が遅めだがらこっちが俊敏に動けば、アイツもいつかは倒れるよ」


「なんですか、その強引なやり方は」


「強引?戦略と言ってくれたまえ。ハッハッハッ!」


「うわ〜そういう人いますよね〜」


「はい、確かに世間一般的に見れば……」


 「んっん〜さぁ五文明五種族で決闘デュエルせよ!」


 リムちゃんが大きい声で高らかに宣言すると、リムちゃんの中心から円形に血の領域が広がっていく。


「リムちゃん、これは?」


「これはバフとデバフ効果のある領域だよ。つまり、ケンタウロスのデバフを無効化しバフをサークル内の人にバフをつけるんだ」


 どこでそんなの習得してきたの!?え、だって私達が別れてからそこまで経ってないよね!?成長速度半端なくない!?


「それ最強では?」


「いやいや、そこまでなんだよ。まぁバフの発動速度とかもあるからそこまでなんだよね」


 それでもでしょ!?バフを常時つけるって相当の魔力量がいるよね!?


「驚きすぎて、疲れてきました……」


「まぁ私もゆっくりと話したいし、早く片付けるか」


「アイリスぅ〜決闘デュエルを宣言しろ〜!」


「それ、色々引っかかりません?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る