第14話 ダンジョンですか?絆が試されます……


「中ってこんな感じなんですね〜」


 入口は綺麗に整備されているのだが、入口付近を過ぎるとちゃんと洞窟型のダンジョンになっていた。


「中は意外と綺麗なだね。トラップとかあるかもだから、気をつけてね」


「分かりました。リム様も重々気をつけてください」


「ありがと……アイリス?」


「ここだけ、色変じゃないですか?」


「ここですか?」


「あっ多分それトラッp」


「「へ?」」


 遅かったか……転送型のトラップかぁ。これもう1回押したら同じところに出るのかな?まぁ押すしかないか……


「えい!」


 ――――――――――――



「ん?ん〜ここは?」


「大丈夫ですか?」


「セレネさんか、ここは?」


「恐らく深層部でしょうね。壁の地質が上と違いますし、整備が行き届いていません」


「すごい、探偵さんみたいだぁ」


「いえ、それほどでもありません。ですが困ったものです……抜け出せる方法が分かりませんね」


「リムちゃんを待つっていう選択肢もあるけど……」


「その選択肢はとても嬉しいですが、助けに来る確率が低いです」


「どうして?リムちゃんなら、こんなダンジョン余裕と思うけど……」


「それはそうなんですが、我々の居るこの場所にピンポイトで助けに来るか?と言われれば確率は必然的に低くなりますし、そもそもここが本当にダンジョン内ということもあやふやですから」


「……なるほど」


 ここがダンジョンじゃなくて、他の所っていう可能性もあるのか……セレネさんはすごく頭がキレるんだな……


「まぁ積極的に動いていくのが妥当ですが、食料がありませんし……」


 そう、訓練用のダンジョンなので食料はいらないと思い持ってきてないのだ。


「でも、飢え死ぬよりはマシだし、動こうか」


「それもそうですね……出来るだけ、上に続く道を探しましょう」


 まぁでもここまでは、勉強で習ったが今実践で挑戦できるのかも怪しい……困ったものだ。


 ――――――――――――


 しまった……油断していた、まさか範囲系のトラップだったとは。

 出来るだけ、リム様の所へ合流しなければ……


「大丈夫ですか?」


「ここは?」


「恐らくダンジョンの深層部、と言ったところだ思います」


 深層部は石の色や生えている植物を見れば大体わかる。そして今居るここは、その条件が一致しているのだ。

 まぁ今大事なのは食料の確保だろう。そしてついでに出口を見つける目的で探索に出よう。


「先ずはここら一帯の探索ですね。私の後ろか隣にいてください」


「は、はい!」


 ここは恐らく未確認の場所、つまりマップが無い。ここはひとまずマイナーな左手法で行くのが妥当だ。


「何をしてるんですか?」


「これは左手法と言って、最終的にゴールに辿り着くと言う迷路の裏技です。これはダンジョンにも適応されており、最終的には必ず上に行き着きます」


「す、凄い……でもそれじゃあ時間かかりません?」


「はい、とてつもなく時間がかかるでしょう。ですが、これが確実であり最も最速で上に上がる方法です」


 だが、食料の問題などがあるので早く上がりたいところだが……


「気をつけてください……」


「へ?」


「ウギャ!ウギャー!」


「ゴ、ゴブリン!?」


「私とした事が、囲まれてしまいました……」


 ゴブリン、オーガ族とは違い知能が低く初心者がよく倒す相手なのだが、囲まれると少々厄介になる。

 血液操作を使ってもいいが……


「アイリス様、炎属性の範囲魔法お願いできますか?」


 ゴブリンは水、炎が苦手な種族なのでこの場で高火力を出しやすい炎が妥当。


「は、はい!」


 血液操作は出来るだけ上の方に出たら使う事にしよう。


「いきます!」


 精霊魔術は詠唱がほとんどなく、展開する時間が早い。なので積極的に使ってもらいたい。


 「ありがとうございます。では行きましょうか……」


 ――――――――――――


 セレネさんは何事にも冷静沈着で流石従者と言うべきか……

 ん〜話す話題がないなーセレネさんって確か始皇帝に仕えてたみたいな事を言っていたような気がするけど……


「セレネさんって確か始皇帝さんに仕えていたんですよね?」


「はい、そうですね。この力も始皇帝様から授かったものです」


「始皇帝さんってどんな人でした?」


「そうですね……髪が長く月のように綺麗な銀の神でした。血のような冷血な赤でそれでも暖かさがある目で、誰もが振り向く美貌でした」


「凄い綺麗な人だったんですね」


「はい、誰にも気配りができとても優しいお方です」


「そうなんですか……今では愚王やら色々言われてて、ろくでなしな人なのかと思ってたんですけど凄いお優しいですね」


「はい、今になっては罵詈雑言ですが当時はとても人気があり全ての始まりと言っていいほどでした」


「当時の国ってどんな風景だったんですか?」


「そうですね……昔は市や村がとても賑やかで森や草原がとても多かったです」


「いいですねぇ……そういう風景好きです」


「確か昔は吟遊詩人等の職業が多く、とても音楽や詩が様々な色で輝いていましたね」


 詩かぁ今もあるけど昔のは一味違うのかな?


「昔の詩ってどんなのがあるんですか?」


「詩ですか……文学はあまり得意では無いですが、始皇帝様の詩を一つ」


『月色が夜に耀く日に紅き眼の蝙蝠こうもりが1人。口からはあかき液が滴る。眼を見れば虜となり、赤き姿を見ればいのちは消えると言う。』


「この様に当時の始皇帝様の力を示す詩が多く歌われていました」


「凄くカッコイイです!」


「かっこいいですか?そうですね……どれもかっこいい物だらけです」


「そうなんですか!?もっと聞いてみたいですね!」


「恐らく図書館に行けばあるんじゃないですか?」


「確かに……今度リムちゃんと行きますね!あとセレネさんも!」


「そうですね。私も始皇帝様の勇姿が書かれている本を見てみたいです」


「あっ、始皇帝さんの本はあまり多くないと思いますが……」


「どうしてですか?」


「始皇帝さんと魔王さんが勇者を裏切った、と今は語り継がれています。なので、あまり人気は……」


「裏切った……そうですか……」


「で、でも!リムちゃんなら共感がしてくれますよ!もちろん?私も共感しますし」


 セレネさんはそこまで始皇帝さんを愛していたんだ……


「セレネさんはそこまで始皇帝さんを愛していたんですね……」


「愛していた……確かにそうですね。私はとても愛に執着していたと思います」


「愛の形は人それぞれですもんね。私もリムちゃんが他の女の子と話していたら…………」


「それは怖いですね。でもそうですね……本当に私は愛に執着していたと思います」


「あ、ここでなんですが悲報があります」


「え!?急になんですか!?」


「このまま行くと上に上がります。ですがそう上にボスがいます」

―――――――――――――


 この子は……人を堕とす天才なのだろうか?


 (リム様も堕とされる理由が分かりました)


 尊すぎる!内心こんなキャラでは無いことは分かってはいる。だがこの子の前だと体が火照ってしまうな。(実は2人になった時から)


「このまま行くと上に上がります。ですがそう上にボスがいます」


「!?」


「私はそのボスを倒すしか選択肢がありません」


「達!?」


「その為にも血が欲しいのです。分かって貰えますか?」


「って事は...///」


「はい、そういう事です」


 ボス戦の為に血を吸う。これは口実なのだが、ボスがいるのは事実。まぁその為にも血を補充するのは当然。だが、ここまで興奮するとは……何年ぶりでしょうか?最後にこんな気持ちになったのは恐らくあの人との……


「分かりました……でも優しくシてくださいね?」


「ん゙ッ……はい///」



 ――――――――――――


 えー!私セレネさんとヤるの!?嫌では無いけど、なんなら是非!って感じだけど……

 セレネさんの衣装と言い声と言い、どれも好きだから……

 決してリムちゃんを裏切る訳では無いけど!ヤれるなら嬉しいなぁ、みたいな?


 それにしてもリムちゃんはいつ来るんだろ?私達が転移してから結構時間がだっていると思う。ここは深層部だから遅くなるのは分かるけど……

 何か他の用事があるのかな?


「やっと戻ってきたー!」


「そうですね、少々疲れました」


 そんな事を考えている内に元の場所に戻ってきた。


「では早速……」


「そうですね……」


 2人とも服を脱ぐ。両方共に下着姿で、ダンジョン内とは思わない程の空気感だ。


「あ、あのぉ?どっから始めれば?」


「大丈夫です。私から血を吸いますから」


 セレネさんが近づい来る。段々と身体が触れ合い、手首を掴まれる。

 ほんの少し声が漏れる。恥ずかしさもありながら心地良さもある。リムちゃんと同じ感覚だ。初めてリムちゃんとヤッた日と同じような感覚がする。


「今は私の事だけ考えて下さい。お願いしますよ?」


「ひゃい!」


 呂律が回らず噛んでしまう。恥ずかしい///


「ハァ〜……」


 セレネさんが首元に息を吹きかける。吸血鬼の吐息には媚薬効果と麻酔効果があると言う。


「頂きますね」


「んッ...///んッ〜」


 牙が首元に刺さる。痛さは感じない、痛さと言うより痛気持ちい感覚に似ている。


「いいですよ、遠慮せずに来て下さい」


 私がそういうと吸血の勢いが増す。それ程血を欲しているのだろう。言葉無くとも分かる、心の底から血が欲しいと言う感覚が。


「んッ...///気持ちいい…です」


「気持ちいいですか……それは何よりで」


 私は押し倒され抵抗出来ずにいる。セレネさんは口元に付いた血を腕で拭う。カッコイイよりクールと言う言葉が似合う。そんな女性だった。


「私は今、セレネさんの魅力に気づきました」


「私も今アイリス様の魅力に気づきました……」


「」

 ――――――――――――――

 

 可愛い。服がはだけてアイリス様の魅力を引き立てる。ほのかに香るアイリス様の甘い匂いと、鼻につく色濃い血の匂い。両方好きで気持ちを紅潮させる。


「アイリス様、もう一回いいですか?」


「うん、もっと来ていいよ」


 アイリス様が手を広げる。全てを受け入れてくれる気がしてならない。もし、もしいいのならもう一度事を出来たらな……


「どうしたの?」


「いえ、何も。少し昔を振り返っていただけです」


 いつだったか?あれは物凄く昔の話。今は語られることの無い、1人の吸血姫のお話。この人達に似ていて、でもそれでも何が違う。


「昔を振り返ると虚しい気持ちになりますね」


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