第11話 ボス戦ですか?戦います!


色々ヤり終わったあと、俺達はテントの片付けをしていた。


「いや〜にしても相当狩りましたね」


 確かに、色々含めて10時間ぐらいしていただろう。


「確かにね、でも楽しかったしいい勉強になったよ」


 そう、沢山勉強になった。新しい戦術や戦技など、次の戦いに生かせるような技が沢山考えついた。とはいえ、戦技は習得しなければ使うことが出来ないので入学前には取っておきたい。


「そうですね、リムちゃんの事をいっぱいしれました……」


 まだ余韻に浸ってるよ。こっちは恥ずかしい思いをしてるっていうのに……


「ん?」


「どしました?」


「いや、今森の奥から気配が……」


 俺の能力で五感強化というのがあるが、優れているものでもないので、気配ぐらいは分かる。

 だがこんなに過剰に反応するものだろうか?


「ちょっと行ってみよう」


「そうですね、ここはAランクなのでそこまで多くの魔物はいないので……」


 ランク毎に魔物の出現率が限られており、高くなる程遭遇率は低くなる。


「この先か……」


 霧は濃く、木なども不気味な形をしている。


「ここは恐らく最深部ですね……」


 ダンジョンの最深部。それはボスや宝などがあり、最も死亡例が多い場所だ。


「ヤバッ!」


「どうしたんですか!?」


 俺は急いでアイリスを押し倒し隠れる。


「恐らくボスだ。見た感じ百は喰ってる。」


「ボ、ボスですか!?倒せません!逃げましょう!」


 ボス、なんとも心からゲーマーをくすぐる言葉のだろう。やるしかない。


「ダメだ、さっきの霧は恐らく一方通行ワンウェイだ。逃げてもアイツの餌食になる。ここに隠れても時間の問題だ」


 ボスの見た目はモン〇ンの雷狼竜のような見た目だが、確実に血だ……


「あいつの属性はと一緒だ……」


「俺……?」


「アイリス、いいかよく聞け。お前は絶対に動くな。俺が合図するまで今ある最大の魔力を使い、炎の塊を作れ」


「リムちゃんは?」


「ちょっとばかし、臨場感溢れるリズムゲームをしに行ってくる」


 戦闘とは音だ。音を聞き分け攻撃を読む。相手の鼓動、筋肉の緩みや視線、これらを的確に読み攻撃する。


Αρχίζει το παιχνίδι!ゲーム開始だ!


 先手必勝!血液操作の槍を百十展開、アイツをドーム状で囲むように展開する。


「ブラッドウェポン:大鎌」


 大鎌を創り、速度をつけ接近する。


「これで傷ついたら嬉しいのだが……」


 宙を飛び回りながら斬撃を食らわす……がもちろん食らうはずもなく……


「コレだとどうなる?」


 事前に展開させておいた槍を一斉に放つ。


「いや〜むりぽ」


 壮大な音をたて突き刺さるが、恐らく吸収とかをしているのだろう。


「だが不味いだろう?の血はよぉ!」


 俺達の、つまり俺とアイリスの混合の血だ。美味しいはずがない。しかもアイリスはエルフのハーフときた。エルフの血は魔を殺すと言われている。


「まぁ俺は吸血鬼の祖なんで、効かないんですけどね」


 でもこいつにとっては、擦り傷程度なのだろう。最初は物理攻撃を基本として来たが、魔法攻撃に変更したな。


「お前の魔法、しかと見届けようではないか!」


 心の底から楽しいと思える。戦闘はこんなにも楽しいのか……


「ほう?お主も我と同じ攻撃をするのか?」


 アイツも百十展開だろう、またはそれ以上か……だがそれは裏目に出ることだろう。


「我を誰と思っておる?」


 全身に急速な魔力を流す、全身が熱くなる。今ならなんでも出来る気がする。全能感というのか?分からないが、今の俺がのようだ。


「血と吸血鬼を総べる吸血姫じゃよ?」


 飛んできた血槍を、自身の魔力で上書きする。それと同時に槍から珠に、珠から十字架に変換させる。さらに脊椎から出た言葉が……


「血液強化:Χρυσό αίμα黄金の血


 首のブレスレットから感じたことの無い魔力が流れる。その魔力はとても繊細で、とても綺麗に輝いている。黄金の血は恐らく種族の名でもある、赤き皇帝の血のことだろう。


「お主は耐えきれるかのぉ?」


 ボスは避けながらも俺の攻撃を相殺してくる。流石はボスと言ったところか……だが俺らの方が一枚上手だった。


「頼んだぞ!アイリス!」


「任せてくだい!」


 アイリスがために貯めた魔力が放出され魔法が形成されていく。


「汝は精霊を従えしものなり。太陽神ヘリオスの名において、ここに烈火の如く全てを無に帰す魔を現出せよ!フロガ・テンピード!」


 長文詠唱+上級魔法というこの構成は流石のヤツでも怯むだろう。

 じゃあなぜ火属性の炎にしたのかと言うと、血は沸騰すると全身が爆発する様に熱くなるという。吸血鬼の能力で瞬時に全身の血液を熱くして、全ステータスをあげるという技があるが、上げすぎると流石に死ぬので、それを利用した技だ。


「どうだ?流石にお主でも怯むか……長引くと面倒なので終わらせるとするか……」


Κόκκινη βασίλισσα紅き女王


 とっさに出た言葉で、服装が変わる……赤を基準に金と黒。本当に吸血姫を思わせる衣装で、誰もが見惚れる程の綺麗なゴスロリ衣装だった。


Ρουά ματ.チェックメイトだ


 ブレスレットと全身の血と魔力を全て出し切る。


βροχήμεαιματηρήλόγχη血濡れた槍の雨


 文字通りと言うべきか、千、いや万ぐらいはある槍の数……

 これが紅き女王の力……恐ろしいな……


「お主の戦いは血が沸き立つ程の戦いだった…………」


 一斉にボスに突き刺さる。その姿はとても綺麗で、色々考えさせられる。傍から見れば少女が1人で倒したような画だ。


「お主よ、我の眷属にならないか?」


『久しぶりだな……』


「喋れたんですか!?」


 アイリスがヨロヨロしながら近づき驚く。


「久しぶり?俺とお前は初めて会ったんだが?」


『あぁそうだったな。過去にお前に似たヤツが俺と戦ってな』


「勝ったのか?」


『いや?ボロ負けだよ。ヤツは恐らくこの世界で最強だった』


「だったってなんですか?」


『ヤツは仲間に裏切られ死んだんだよ。可哀想に、この力もヤツから貰ったものだ』


「そうだったのか……じゃあそいつも吸血鬼だったのか?」


『あぁそいつ吸血姫だったよ』


「それはさぞかしだな……話を戻すが、俺の眷属になれ」


『あぁいいだろう。ただし条件などはあるのか?』


「いや、特にはないが……眷属になるには俺が血を吸うか、血を与えるかだが……どうする?」


『血を与えてもらっても?』


「わかった」


 俺はボスの口に行き、手首を切る。ドバドバと残り少ない血が落ちていく。手首が熱くなる感覚がよく分かる。これがいわゆるリスカってやつか?まぁ俺の為じゃなくてコイツの為なんだが……


「どうだ?」


『あぁ全然だ。汝、お主に仕える事をこのセレネの名にかけ、一生ついて行くことを示す』


 セレネが詠唱を終えると、セレネの体が青白く光る。数十秒もかからずに人の形になる。


「おぉ〜凄いです!メイドさんですか?」


「ごめんだけど、理解が追いつかない。それが本当の姿か?」


「いや、これは仮の姿でさっきのが本当の姿だ」


 セレネは少し暗めの赤を基調としたメイド服を着ていて、髪は銀髪の長髪で背は高めで意外と癖にストライクしてる。


「名はセレネか……月の女神と一緒なんだな」


「あぁ、月楼竜という名は聞いた事があるか?」


「え!?あの月楼竜ですか!?」


「有名なの?」


「もちろんですよ!あの伝説上の魔物ですよ!まさか本当にいるなんて!びっくりです!」


 伝説上の魔物なんだ。で、その伝説の魔物がメイド服なんだ?


「人目を避けるためだ。あと貴方様に仕える身として、この様な姿になっております」


「つまり、私はセレネの主人って事?」


「はい、そうでございます。我が主よ」


「凄いです!メイドさんですか?」


「アイリス様もリム様の花嫁ということで、アイリス様も主人でございます」


 おぉ〜すごーいちゃんと役になりきっている。


「では、戻りましょうか」


「どこに?」


「ん?もちろん家ですよ?」


「誰のだ?」


「それはもちろんリム様のお家ですよ?」


「なんでそうなるんだよ!?」

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