第9話 対人戦ですか?EZですよ?

今や過去といっていいほどの事、俺は得意としていたゲームがあった。それは音ゲー、MMORPG、チェス。どれも今の生活に大きく関わりがあるゲームばっかりだ。

  音ゲーは動体視力、MMORPGは様々な戦闘パターンと人との対戦、チェスは圧倒的な戦略性。

 今となればどれも俺の人生に欠かせない能力だ。で、その能力たちを生かす、初めての対人戦が……


「出たぁ〜噛ませ犬系冒険者〜」


 異世界アニメの醍醐味の1つの噛ませ犬。まぁこの世界の常識を知るのにはもってこいなのだが……


「別にいいけど、流石に賭け無しって言うわけじゃないよね?」


「あぁ勿論さ!お嬢ちゃんは何を賭けるんだい?」


「ん〜そうだなぁ……魂を賭けようッ!」


「くぅ〜賭け事は楽しいぜ!俺様も魂を賭けようッ!」


「ルールは?」


「どちらが戦闘不能、もしくは敗北を宣言したら勝利だ。」


 まぁオーソドックスなPVPのルールだな。

 決闘と聞きつけて、周りの冒険者たちも決闘用の空間を開ける。

 恐らくこの世界でも決闘は手袋を投げつけるルールがあるらしい。本で見たんだけど、決闘前の詠唱がかっこいいんだよね。


「わかった、早速始めようか。あ、武器は好きなの使っていい?」


「あぁいいぞ。魔法も自由に使ってもらって構わない。」


「じゃあ早速始めようか。名前は?」


「グリーザーだ」


「私はリムだよ」


「じゃぁアイリス、立会人を頼んだよ」


「は、はい!では詠唱を!」


『聞け、我手を取りし汝、洗礼名リムなる者よ。我洗礼名グリーザーはリムなる汝の決闘を受けし、またいかなる意味にてもこの罪に値せず。神よ聖者よ。ここに我、汝に対し我が身体を以て身の証を立つる者なり』


 決闘開始だ。まぁ最初は様子見で、間合いをとる。


「俺の勝ちだ!」


 グリーザーは疾走を使い速攻で詰めてくる。だが、こっちは動体視力向上があるので、遅く見えるまでだ。接近戦の基本は、魔法をいかに早く展開できるか、隙のない物理攻撃をするか……

 まぁ魔法は展開も早く強いのだが、周りの評価を高める為に物理攻撃をするか……


「ブラッドウェポン︰大鎌」


 俺は素早く詠唱を唱える。さっき丁度練習をしていて、熟練度が上がり使えるようになった新武器だ。色は赤黒く、形はアニメの様な鎌で、大きさは少女が持てるほどの大きさを超えている。


Αυτήείναιηγραμμήμας.それはこちらのセリフだ


 俺は鎌の大きさを感じない程の可憐さ、そして刹那の速さでグリーザーの首を斬った。

 まぁ死ぬのではなく、再生し気絶するのだがな。


「よし、終わり!」


「いやいや!何があったんですか!?」


「いや何って、首を斬っただけですけど?」


「全然見えなかったんですけど!?」


 あれ?俺、何かやっちゃいました?

 まぁこれでわかった事がある。俺の能力がチートレベルという事が……まぁチートはクリティカルと、種族ぐらいだろうな。


「まぁ終わった事だし?お金も増えたから、ね?」


「ね?じゃあないですよ!吸血鬼ってそんな強いんですか!?」


「いや私、吸血鬼の女王様ですから」


「え!?待ってください!?情報量が多すぎます!」


 閑話休題一旦落ち着いて



「ハァハァ、なんか疲れました……」


「なんで?」


「……貴女あなたのせいですよ?」


 「そういえば、貰ったお金ってどれくらい?」


「そうですね、金貨1枚と銀貨、銅貨が5枚づつですね」


「おぉ〜結構持ってたね」


 まぁ大体この世界のお金が、日本円でどのくらいか分からないが、まぁ金貨1枚100万ぐらいだろうなぁ。……なんせこれ、純金だろうから。

 まぁ銀貨もくだらないだろうな……


「他に何かある?」


「あ〜そうですねぇ、魔法石やら魔具がちらほらあります」


「魔具かぁ……まぁ使わないし売るか」


「そうですね、私も魔具ではなく杖ですから」


「あ、そういえばアイリスの杖ってどんなのなの?」


「私のヤツは安いやつです。いわゆる初心者用ってヤツですね」


「あ〜じゃあ今度、アイリスの杖買いに行こう?」


「え?良いんですか?ありがとうごさいます!」


 まぁ俺の隣にいる限り強くなってもらわないと、今後の学園生活が大変になるからな


「ん〜、大体杖ってどのくらいなんだろう?」


「そうですね……高い物ですと、金貨2,3枚ぐらいでしょうか?」


「あ〜意外と……?」


「安いって言わないでくださいよ?」


 まぁ大体、狂騒の森の魔物2体といったところか……簡単だな。


「よし!じゃあ明日狂騒の森に行こう!」


「何でそうなるんですか!?おかしくないですか!?」


「対魔対策兼クエストみたいな?」


「あ〜なんか説得された感じがします……」


 まぁ、狂騒の森は意外と攻略は簡単だ。動物系の魔物なのでパターンは簡単だし、レベルが高くても熊のような魔物が現れるだけだ。


 今日は一旦アイリスの杖を探す事にしようかな。


 ――――――――――――――――


「失礼しまーす」


 この街一番という魔道具店に来たが……


「誰もいませんね……」


「いや、奥に1人いるね」


 血の気配が分かる……ような?気がする……


「なんだい?若い女子が来たと思ったら、すぐバレるじゃぁないか」


 奥から古めかしいおばぁちゃんが出てきた。恐らく、この人は物凄く強い


「ほぉ?今時こんな子達が来るねぇ」


「それはどういう?」


「気づいているんじゃぁないのかい?吸血鬼のお嬢ちゃん?」


 この人……やりおる!見ただけで吸血鬼だと分かった。つまり、吸血鬼特有の匂いや気配が分かるということだ。


「なるほど?おばぁちゃんも中々凄いですね……エルフさん?」


「え!?何がなんなんですか!?」


「ハッハッハッ……お主中々のものじゃよ」


 おばぁちゃんが段々と声や身長が高くなり、髪色も変わって行く。

 1分も経たずに背の高い美貌になる。髪は薄緑で長く、瞳はエメラルドよりも綺麗な色をしていた。


「で?こんな所に何か用かい?エルフのハーフちゃん?」


「何で私の事まで!?」


「そりゃぁわかるさぁ、私はこう見えてもエルフだよ?」


 いや、どう見たら間違うんだよ……


「あの、杖を見に来たんですけど……」


「ほう……どんなのがいいんだい?」


「精霊使いの杖はありますか?」


「精霊使い……なるほどそういう事か……」


「どうしたんですか?」


「いや、なんでもないよ。杖はこっちにあるよ」


 精霊使いの杖、それは通常の杖よりも作るのが難しく、魔力の密度も高い。初心者用の杖でも相当高くなるのだ。


「これらの杖だよ……」


 綺麗に並べられた杖たちは神秘的で、どれも高級なものだと肌で感じる。


「あ、後ここの中で一番高い杖ってどれ?」


「これだよ。……金貨30はくだらないね」


「ふぁ!?30!?流石に盛ってない?」


「ほう?この私が?この杖はな、世界樹を基礎とし、天使の羽、精霊の血が使われているんだ」


 は?世界樹?天使の羽?精霊の血?なら普通に30以上かかるものだな。え?逆に何でここにあるんだ?


「それってやばくないですか!?」


 ちなみに何がやばいかというと、そもそも世界樹なんて伝説上の話だし、天使の羽なんて普通取れるわけないし、精霊の血なんて夢のまた夢……

 因みに精霊は普通触る事もできないが、上級の精霊等は人型や、動物型等があり知能が高い。


「本当に30で売るのか?」


「あぁ、本当だ。ワシの魂を賭けてもいいぞ?」


 本当にらしい……なんともお得なのだ!よし!明日は一日森の中にこもるとするか!


「リムちゃん!?なんでこっち向いて笑ってるんですか!?言いたいことは分かりますが、絶ッ対に行きませんよ!?何で手を掴むんですか!?」


「よし!行こっか?♡」


「あっ……」

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