第3話 戦闘ですか?無理ですよ?


「ここが狂騒の森か……」


 俺が起きた初期地点から結構歩いた先、やっとの思いで森の前まで着いた。


「にしても、長かったな……またこっから森を抜けないと行けないのかよ。」


 森はなんとも禍々しいオーラを放っており、本当に行っていいの?と思わせる位だ。後なんか、すっげぇ悲鳴みたいなの聞こえる。


「ちょっと俺ホラー苦手なんだけど……」


 この世界では外見は少女なので似合っているのだが、中身が音ゲーマーコミ障陰キャなので、相当キモイ。


「はぁ、まぁ行くしかないか」


 俺は決意を決め森に歩み始める。

 森を少し入ると、なんとも言えない木やらなんやらがあるのだが、その先は霧になっている。


「これ、絶対迷うやつだよね?」


 ゲームでは定番のシチュだが実際に起きると本当にダルい。


「入ってみるか……」


 霧の中に入ると少し生臭さが鼻につくが、恐らく動物達の共食いの後なのだろう。


 

 もう少し歩くと、霧が段々と晴れていった。


「なるほどね……この霧はそういう事か」


 霧を抜けると中世を感じられる、恐らく別荘の跡があった。


「始皇帝の別荘跡……一応探しておこう程度だったのに、こんなにあっさり見つかるのか。」


 恐らくこの霧は別荘の守護をしていたのだろう。ゲームでは定番のシチュだからな。

 でも、某○○の伝説とかだと迷って元の位置に戻るはずなんだけどな。


「ま、いっか。ラッキー」


 俺は別荘の中に入る。扉の鍵は掛かっておらず、簡単に入れたのだが、中身がこりゃびっくり。本当に別荘か?と言わんばかりの豪華さ、おいマジか始皇帝。


「おぉ〜こりゃアサリがいがあるね〜」


 おっと危ない危ない、盗賊癖が……

 でも、誰しも声が出るだろうと思うほど中は綺麗だった。


「別荘と言っても絶対何かあるはず……」


 玄関を入った先にあるシンデレラ階段を上り、一番大きい扉の方に行く。


「多分ここが、一番お宝があるだろう。」


 別に厳重な所に隠すのではなく、あえてこの大きい場所に置くという、この完璧的な予想。


「ここは?王室……?」


 別荘と言っているのに、部屋に入ったら1番目に入る場所に玉座が置いてあった。


「ここの部屋に入ると、血が騒ぐような気がするな。」


 そして、玉座には服とペンダントの様な物が掛けられていた。


「このペンダント、始皇帝の物か?」


 そのペンダントは、高級感溢れる赤色で誰もが見惚れるだろう。そして真中には宝石が埋め込まれており、色合い的にはブラッドレッドと言ったところか。全体的に金の装飾がほどこされており、本当に高貴な人が着けてそうなペンダントだ。


「ま、置いていく方が悪いよね……」


 で、こちらの服は、主に薄い赤と黒を基本とした、ワンピースで所々に金の装飾もある。


「なんで俺の初期装備がこんな麻なんだよ……」


 そう、俺の初期装備は麻でてきたワンピースでちょっと着心地が悪い。だが対照的に始皇帝の物は、滑らかな触り心地でとても動きやすそうだ。


「着てみるか……」


 相当ピッタリサイズで、発注したの?と思えるくらいピッタリだ。


「ん、ここって鏡あるのかな」


 そういえばこの地についてから、一度も自分の姿を見ていない。別荘とはいえ、流石に鏡ぐらいはあるだろう。


「でも俺って、映るのかな」


 俺は今吸血姫、つまりワンチャン映らないかもしれないのだ。でもそう言うのは御伽噺おとぎばなしの中だけだろ。


 少し探索するとパスルームらしき場所に出た。勿論鏡を見つけたので早速、自分の姿を見ていこう。


「おぉ〜可ッ愛よかっわよ


 自分で言うのもあれだが、これは絶対に好きになる。薄々気付いていたが、髪は金髪で小柄で華奢な女の子だ。はぁ〜これは


「にぃーー……ちゃんと牙も生えているんだな。」


 少し長めの八重歯があり、そこも可愛い。

 やはり、ペンダントと服装がよく似合い、全国のロリコンは見ただけで倒れるだろう。


「あ、あとあれもやらないとな。」


「ステータスオープン」


 さっき手に入れた持ち物の詳細を確認しないといけない。


 ――――――――――――――


 持ち物:始皇帝のワンピース

  ・ 赤と黒を基調とし、金の装飾がある。

  ・吸血鬼の能力を最大10%上昇、その他能力は5%向上


  ロイヤル・ブラッドのペンダント

  ・始皇帝自らの血を使ったペンダント

  ・吸血鬼の能力を最大20%上昇、吸血の際にこのペンダントに溜め込むことができ、一気に解放又は、特殊な血でブラッドウェポンの使用が可能。


 ――――――――――――


「なんで、吸血鬼系なんだ?まぁでも着けてて損は無いし」


 それにめっちゃ似合ってるからな、


 30分近く探索したが、他にいいものが見つからなかったので、外に戻ることにした。

 玄関に戻り、扉を開けるがそこそこ大きい扉なので意外と力がいる。


「ジーザス、やっぱり出てきますよねー」


 勿論のこと外には、動物系の魔物がいた。見た感じ狼みたいなのが数体と、熊型の魔物が一体といったところ。


「よし初めての、戦闘だが……ま、音ゲーマーの俺なら余裕しょ!」


 言い終わると同時に探索中にちょっと練習した、ブラッドウェポンで体にあった短刀を出す。

 相手も勿論のこと、攻撃態勢に入り警戒される。


「ここまでがテンプレ……」


 古きネットスラングを言いながらも、右の狼に近づく。確かアニメで見たけど、動物全般は脊椎を破損させたら勝てるとかどうとか……


「やってみるか……よっと」


 最初に、血液操作で相手の目を奪い、ジャンプをして、斜め回転で切りつける。


「わーお」


 ブラッドウェポンの切れ味が良すぎて真っ二つになってしまった。なんと、恐るべし力……


「次に……」


 まず左右に血液の槍を用意し狼二匹に、真っ向勝負。恐らく仲間の死を見て怯え、左右に避けると予想した。


Το ήξερα.やっぱりな


 両方に命中、残りは、狼3匹と熊1匹。熊は最後に倒すとして、狼はどうやって倒そう……


「うーん、まぁ血液操作かな」


 俺は三本の槍を作る。その際追尾用に少し魔力を込める。そして、狼が動き出した途端に槍が発動する。


「そして残りは、熊だけか……」


 全長3mは優に超えている、恐らく高レベルに匹敵するだろう。


「勝てるかな……ま、行けるやろ」


 ユニークスキル:クリティカルは、一応魔法でも判定はある、だが物理攻撃の方が倍になる確率は高くなるだろう。


「俺、卓球部なんだけどなぁ」


 一気に右に飛び、相手の死角に行く。その際ちゃんと血液操作で槍を数本創っておく、そして背後からの攻撃。

 まぁ勿論の事無理だろうな、熊が勢いよく腕を後ろに振り回した。


「ふん、それは残像だ」


 よし、言ってみたいランキング上位に入る、「それは残像だ」をいえたので満足。

 槍を熊の四肢に突き刺し、身動きを止める。


「チェックメイトだ。」


 俺は真向から向かい、熊の巨体に刃を立てる。

 勿論のことクリティカルなのでワンパンKO


「はぁー疲れたぁー」


 まだ熟練度を上げていないので、相当疲労が溜まる。


 森を村の方向に抜けると、村を遠目で目視出来るまで来ていた。


「はぁ〜これ一人称変えないといけないよね?」

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