第25話 怪獣大決戦

 村が見えてきた時、ユウトの目に飛び込んできたのは信じがたい光景だった。

 キュクロプスとゴッドディラが、村の入り口で激しく戦っているではないか。

 二体の巨大怪獣のぶつかり合う音が大地を揺るがしている。

 

「なんだこれは…!」

 

 ユウトは息を呑む。キュクロプスの目は血走り、全身からは狂気すら感じられた。

 一方のゴッドディラは、その雄大な姿で立ち向かっている。

「まずい、このままじゃ村が巻き添えになる!」

 アリアナが危機感を募らせる。

「なんとかしなきゃ…!」

 ユウトは拳を握りしめた。


 怪獣同士の戦いはすさまじいものだった。

 キュクロプスは鋭い爪を伸ばしゴッドディラに切りかかる。

 ゴッドディラは咆哮を上げながらその攻撃をかわしていく。

 キュクロプスの爪がゴッドディラの漆黒の鱗をかすめ、火花が散る。

 ゴッドディラは低く唸ると、巨大な尻尾を振り上げた。

 

 ズシンッ!

 

 尻尾がキュクロプスの腹部を強烈に打ち据える。

 キュクロプスは苦悶の声を上げながら数メートル吹き飛ばされた。

 しかしすぐに起き上がり、再びゴッドディラに襲いかかる。

 牙むき出しで飛びかかってきたキュクロプスに、ゴッドディラは素早く応戦する。

 

 ガブリ!

 

 ゴッドディラの鋭い歯がキュクロプスの肩に食い込む。

 

「グギャアアア!」

 

 ゴッドディラは強靭な顎の力でキュクロプスを持ち上げると、そのまま地面に叩きつけた。

 

 ドガァンッ!

 

 大地が大きく震える。

 砂煙が立ち込める中、キュクロプスはよろめきながらも立ち上がった。

 両者一歩も引かない。

 凄まじい形相で睨み合う二体の怪獣。

 次の瞬間、両者は再び激しくぶつかり合った。

 尻尾と尻尾が地響きを立てて打ち合う。

 まるで山が激突しているかのような光景だった。

 ユウトたちはその凄まじい戦いに言葉を失っている。

 

「すごい…」ミナトが震える声で呟く。

 

「ああ、これが怪獣たちの戦いか…!」ユウトも息を呑んだ。

 

 二体の怪獣はさらに激しく咆哮を上げながら戦いを続ける。

 激しい格闘が続く中、キュプロクスは赤く燃える目でゴッドディラを睨みつけ、その目から強力な光線が発射される。

 その光線を打ち消すようにゴッドディラが決定打を放った。

 口から稲妻をまとった熱線がほとばしる。

 熱線がキュクロプスを直撃し怪獣は大地に倒れ伏した。

 

「やったぁ!」ユウトが歓声を上げる。

 

「ゴッドディラが勝ったわ!」ミナトも喜びを隠しきれない。

 

 アリアナは安堵の表情を浮かべ、ほっと息をついた。

 レッドは飛び跳ねながら、体全体で喜びを表現している。

 アルプもまた、尻尾を振りながら楽しげに吠えた。


「しかし、すごい迫力だったなあ!」

 

 ユウトが興奮冷めやらぬ様子で叫ぶ。

 

「ゴッドディラの熱線、まるで稲妻みたいだったぜ!ビリビリってなって、ドカーンって!」

 

 ユウトは両手を広げ、熱線の軌跡を身振りで表現する。

 

「キュクロプスもあっという間にやられちゃったもんな〜」

 

 ユウトは満足げにうんうんと頷き、レッドに向かって話しかける。

 

「なあ、レッド、すごかっただろ?」

 

 レッドはユウトの言葉に合わせ自分も戦っているかのように飛び回って、興奮冷めやらぬといった感じだ。

 おのおのがゴッドディラの勝利をよろこんでいたが次の瞬間、予想外の事態が起こった。

 倒れたキュクロプスの体からユラユラと黒い影が立ち上がったのだ。


「な、なんだアレは…!?」


 黒い影が立ち上がると、そこには大きな悪魔とも鬼ともつかないような醜悪な顔が浮かび上がった。

 その眼光は血に飢えたように赤く輝き、歪んだ口元からは粘つくような漆黒の霧が漏れ出している。


"カカカカカカカカ"

 

 影は声とも音ともつかない不気味な笑いを響かせた。

 その音は耳を通り越して直接脳に響くかのようで、聞くものの背筋を凍らせる。

 ゴッドディラは再び咆哮を上げる。

 

「ギイャオオオオオン!」

 

 その轟音は大地を揺るがし、空気を震わせた。


 巨大な怪獣の口から眩いばかりの熱線が放たれる。

 青白い光が闇を切り裂き、影に向かって飛んでいく。

 だが熱線はすり抜けるだけで影にはなんの傷もつけられない。


"カカカカカカカ"

 

 影は再び笑う。その姿はさらに大きく膨れ上がり、ゴッドディラを包み込もうとしているかのようだ。

 怒りに任せてゴッドディラは影に殴りかかる。鋭い爪が闇を切り裂く。

 

「ギャオオオォォン!」

 

 しかし、その攻撃もむなしく影をすり抜けるだけだった。


"カカカカカカカ"

 

 影の笑いが一層大きくなる。

 その音は耳を刺すように鋭く、聞くものの心を締め付ける。


 そして、ついに影はゴッドディラに絡みついていく。

 漆黒の触手のような影が、巨大な怪獣の体を這い上がっていった。

 

「グギャアアアア!」

 

 ゴッドディラが苦悶の叫びを上げる。

 影は徐々に、ゴッドディラの体を飲みこむかのように覆っていく。

 周囲の空気が重く、冷たくなっていく。

 影の笑い声が勝利を確信したかのように響き渡った。

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