第24話 赤色怪獣レッド
太陽が昇り、怪獣の島を優しく照らし出す。
ユウトとアルプに助けられた赤い小型怪獣レッドはすっかり彼らになついてしまった。
「よし、レッド! 一緒にキュクロプスのとこまで行こうぜ!」
ユウトの呼びかけにレッドは嬉しそうに鳴き声を上げる。
赤い体が朝日に輝き、まるで炎のように見える。
一行は岩山を登り始め、ゴツゴツとした岩肌を注意深く手足を掛けて登っていく。
時折吹く風が汗ばんだ肌に心地よい。
「ユウト!」
ふと振り返ると、ミナトとアリアナが遅れている。
「もう、置いていかないでよ!」
「ごめんごめん。こいつにめんじて許してよ」
そう言ってユウトがレッドを抱き上げるとレッドは気持ちよさそうに目を細める。まるで子猫のようだ。
「まったく…」と言いつつもミナトの表情は和らいでいた。
一行はキュクロプスの近くまでやってきた。
巨大な影が彼らの前に そびえ立っている。
「うわー、近くで見るとやっぱり迫力が違うなあ」
「ねぇ、ユウト。キュクロプス、なんだか様子がおかしくない?」
ミナトが不安げにつぶやく。その瞳にはキュクロプスの異変に対する明確な懸念が浮かんでいた。
ユウトたちが見上げると、そこには先ほどまでとは明らかに様子の違うキュクロプスの姿があった。
青く輝いていた背びれは色を失い、目は血走り、口からは涎を垂れ流している。
まるで狂気に支配されたかのようだった。
「確かに普通じゃないな…!」
ユウトの声にキュクロプスがこちらを向いた。
その目はまるで獲物を狙う野獣のように鋭い。
「まずい、気づかれた! 逃げるぞ!」
その時、レッドが囮になるようにユウト達と逆方向に走り出す。
わざと声を出して自分に注意が向くようにしているようだ。
"キュキュー、キュキュー"
「レッド!」
キュクロプスはレッドに向かって山を殴り岩石を飛ばしてくる。
岩肌が砕け散り土煙が舞い上がる。
「危ない!」
ユウトたちの方にも岩が飛んでくるがアルプの体が変化して船が帆を張るように広がり一行に覆い被さる。
アルプの体でボヨンボヨンと岩石は弾かれた。
まるで岩石を弾き返す巨大なトランポリンのようだ。
しかしレッドには岩が直撃してしまい倒れてしまう。
赤い体が砂埃に包まれ、動かなくなってしまった。
するとキュクロプスは興味を失ったのか、村の方へと歩いていった。
「アルプ、助かったよ!ありがとう」
ユウトが、アルプの体を撫でる。
アルプは嬉しそうに鳴きホワイトシェパードの姿に戻った。
「レッド! しっかりしろ!」
ユウト達が倒れているレッドに駆け寄る。しかしレッドは動かない。
ユウトの顔に悲しみと怒りの表情が混ざり合う。
「ユウト、キュクロプスが村の方へ!」
ミナトの声にユウトはレッドを抱き上げ村の方を見る。
キュクロプスはその巨体でまるで地震のよう地面を震わせ、村へと向かって歩いていた。
「くそっ! レッド、しっかりしてくれ!」
ユウトの叫びにレッドの体が光り始める。
まるで内側から炎が燃え上がるかのように赤い光が体全体を包み込む。
「これは…!」
レッドの体から赤い魂のようなものが現れた。まるで炎のように揺らめき、踊るように空中を舞う。
そしてレッドの体から赤い色が消え、色が暗く変わっていく。
「レッド…?」
ユウトが呟くとレッドが目をパチクリとさせ起き上がった。
まるで深い眠りから目覚めたかのように体を震わせて立ち上がるとどこかへ走って行ってしまった。
残されたのは赤い魂だけだ。
まるで炎のようにゆらゆらと空中を舞っている。
「やっぱりこっちが本当のレッドってことなのか?」
ユウトの疑問に赤い魂はフルフルと震えて応える。
「あの魂、レッドちゃん?何かを伝えようとしているみたい」
ミナトの言葉にもフルフルと反応している。
赤い魂はウロウロと動き回っている。明らかに何かを伝えたいように見える。
「なんか、かわいい……」
ミナトとアリアナが微笑み合う。
「ついてこいって…言ってるような気がする」
動きを観察していたユウトがそう言うと、レッドが一層激しく動いてその言葉を肯定しているように見える。
そしてうろうろしていたレッドが先導するように動き出した。
「行ってみましょう。きっとなにかあるはずだわ」
アリアナの言葉に一同は頷き、レッドに続き歩き出した。
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