第14話 アリアナとミナト

 アリアナと合流するために、はぐれた時に落ち合う約束をしていたホテルへミナトと一緒に向かう。

 道すがらアリアナの事や列車について色々と話しながら歩いた。

 

 アリアナは、待ち合わせ場所に指定された豪華なホテルのロビーに佇んでいた。

 大理石の床に、高級感漂うシャンデリア、クラシックな家具が配された空間の中でも彼女の美しさは際立っている。

 ゆったりとしたソファに腰掛け、アリアナは片手に本を持ちページをめくっている。

 時折、入り口の方に視線を向けているのはユウトの到着を待っているからだろう。


 そんな折にユウトが同年代の美少女を連れてホテルに入ってきたのだ、アリアナは驚きと共に感心していた。

 

「こんな綺麗な子をいきなり連れてくるなんてすごいじゃない」

 

 どんなもんだいとでもいう様に胸を張っておどけて見せるユウトだが、すぐに真顔に戻りミナトのことを話した。


 「お願いします!私も旅に同行させてください」

 

 ミナトの気持ちは伝わってくる。しかしアリアナは躊躇した。

 

「……その論文をちょっと見せてくれる?」

 

 論文や設計図を一通り見た後

 

「なるほど、これはすごいわね」

 

「さすがアリアナ、わかるのかい?」

 

「もちろん全てわかるわけじゃないけど、極簡単に言うとエネルギー効率を極限まで高めたエンジンってところかしら」

 

「はい!そうなんです!でもここでは認めてもらえなくて……」

 

「確かに保守的なこの世界ではこれは難しいかもしれないわね。それにいくら効率がいいと言ってもそのために必要なもののハードルは高いわ。まずエネルギーとなるものに何を使うのか」

 

「はい、今の次元船の燃料などでは到底無理ですけど、でも今までのようなあり得ない数字ではないと思うんです」

 

「他の世界なら何か見つかるかもしれないと……」

 

「はい」

 

「それと、もう一つ別の問題があるわ。もしかしたら落選したのはそっちの意味の方が大きいかもしれないわね」

 

「そんな大問題があるのか?」

 

 ユウトがも驚きを隠せずにいる。いったいそれはどう言うことなのか。

 

「これを完成させたら、きっとあらゆる勢力に狙われることになるわ」

 

「それはいったい……」

 

 ミナトは不安そうに尋ねた。

 

「特に次元宇宙の覇権を狙っている勢力なんかはノドから手が出るほど欲しいでしょうね」

 

 そう言いながらアリアナはユウトに向かって目くばせした。

 

「なるほどそういうことか、確かに長距離船ができれば大量の兵器や兵士を乗せてどこまでも行けるもんな」

 

 ユウトは合点がいったと言う感じだ。

 

「そう、そういった連中から狙われるようになるのよ。それでもいいのね?」

 

 ミナトは一瞬苦しそうな表情をした。しかし彼女は搾り出すように自分の気持ちを語る。

 

「それでも、それでも私は父との夢を叶えたい!だから、たとえ一人でも私は行くわ」

 

「ユウト、どうする?」

 

 アリアナはミナトが一人でも行くと言っているけどいいの?といいたいのだ。

 

「ミナトを一人で行かせるわけにはいかないなあ」

 

 ユウトの返答は早かった。彼にはすでに覚悟ができていたからだ。

 ミナトが行くというなら列車の話をした自分にも責任がある。

 彼の目には決意の光が宿り、アリアナに向けて微笑んだ。

 

「二人にその覚悟があるなら私に異論はないわ」


「いいの?」

 

 ミナトは改めて二人に問いかける。


「いずれオレにも船を作ってくれよ」

ニッコリ笑ってユウトは答えた。


「もちろんよ!」


 二人は改めて固く握手を交わした。

 ミナトの心に、新たな仲間への喜びが芽生える。

 

 こうして、ミナトの夢への冒険が幕を開ける。

 次元超特急での旅が、彼女に何をもたらすのか。

 未知なる世界が、ミナトを待っていた。

 翌朝に駅前で待ち合わせることにしてその日は別れた。

 ミナトは部屋に戻るとベッドに腰掛けて深く息を吐いた。

 これから始まる旅に期待と不安が入り混じる。

 未知の世界への扉が開かれようとしていた。

 彼女の心は高鳴りを隠せない。

(父さん、私は夢に向かって一歩を踏み出すよ)

 ミナトは父の遺した本を大切に胸に抱いた。

 次元超特急での旅が彼女に何をもたらすのか。

 想像するだけで胸が躍る。

 そう、旅の準備!

 ミナトは我に返ると、慌てて立ち上がった。

 旅に必要なものといえば、父の遺した本や資料ぐらいか。

 彼女はリュックに、大切な資料を丁寧に仕舞う。

(よし、これで準備は万端!)

 新しい自分との出会いに、心が弾む。

 未知なる世界が今、彼女を待っている気がした。

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