第7話 VSオーク
突然暗い森から灰緑色の皮膚に屈強な体躯、下顎から突き出た牙を持つ魔物が現れ重い足音で一歩一歩と近づいてくる。
森はその存在感で静まり返っていた。
「な、なんでこんな街の近くにオークが…!?」
アリアナは驚きを隠せない。オークがこんなに人里に近づくことは稀だ。
一瞬怯んだアリアナだったがすぐに冷静さを取り戻し行動を開始した。
彼女はユウトの方に駆け出す、がまだ距離がある。
一方ユウトは、最初は面食らったもののすぐに構えを取り直した。
日頃の訓練の成果が今ここで試される時が来たのだ。
オークが振るうバトルアックスをかわしながらユウトは銃を抜く。
太陽の光を反射して銃身が鈍く輝いた。
ユウトは一瞬の静寂の後、引き金を引いた。
銃声が森に響き渡る。放たれた光弾が真正面のオークの額を貫いた。
”ウルオオオオ!”
オークは苦痛の叫び声を上げ、地面に崩れ落ちる。
残る4体のオークが怒りに任せて襲い掛かってくる。
ユウトは冷静に次の一撃を放つと、光弾は右手のオークの胸を突き抜ける。
”グバァ!”
倒れるオーク。しかし残る3体が迫ってくる。
ユウトは身を屈めて回避し、そのまま回転しながら後ろのオークに銃口を向ける。
至近距離からの発射!光弾がオークの腹部を貫通した。
「あと2体か……」
ユウトは息を整えながら残るオークに狙いを定める。
オークは怒号を上げながらバトルアックスを振り上げた。
その瞬間ユウトは引き金を引く。
光弾が宙を舞い、オークのバトルアックスが光弾によって弾き飛ばされた。
そしてそのままオークの顔面に光弾が直撃する。
最後の1体のオークは怒りに震えながらユウトに襲いかかってきた。
”グォォォォォォ!”
オークは怒号を上げるとユウトに襲い掛かる。
その拳が今にもユウトの顔面を砕こうと狙って来る。
「く、くそっ…!」
ユウトは歯を食いしばりながら何とか回避しようとするが間に合わない。
ユウトの脳裏にジョセフとの特訓の記憶がよみがえる。
「落ち着け、焦るな。敵の動きを読んで先回りするんだ」
ジョセフの言葉がユウトの心に響く。
ユウトは深呼吸をするとオークの動きを見据える。
オークの拳がユウトの顔面をかすめる寸前、ユウトは身をひるがえした。
そのままオークの懐に飛び込むとユウトは引き金を引いた。
光弾がオークを貫通し、オークは絶命の断末魔を上げた。
巨体がゆっくりと崩れ落ち、森に静寂が戻る。
「はぁ……はぁ…」
ユウトは荒い息をつきながら倒れたオークを見下ろした。
「やった、ぜ……!」
疲労の中にも勝利の喜びが込み上げてくる。
「うおおおお!」
ユウトは雄たけびを上げ"へへん"とアリアナに向かってドヤ顔を見せた。
しかしその時だった。
倒したはずのオークの1体が跳ね起きてユウトに襲い掛かろうとしたのだ。
「ユウト!うしろ!」
アリアナの声と同時に振り向く。
そこには最後のオークが、恐ろしい形相でユウトを見据えていた。
”グオオオオッ!!”
オークは怒りの咆哮を上げると、これまでとは比べものにならないスピードでユウトに襲い掛かった。
「な、なんだ!?」
ユウトは咄嗟に銃を構えるがオークの速度があまりに速く、狙いを定めることができない。
「くそっ!」
ユウトは必死で身を翻す、オークの巨大な拳が彼の肩をかすめた。
「ぐあっ!」
鈍い痛みと共にユウトは地面に吹き飛ばされる。
「ユウト!」
オークは容赦なくユウトに迫り、その巨大な拳が今にも彼を打ち砕こうとしていた。
「くっ、こいつ…!」
ユウトは恐怖に目を見開いた。
その時一筋の光が列車の方角から放たれた。
光弾がオークを貫きオークはもんどりうって倒れる。
「え?今の…」
ユウトが驚いて列車の方を見ると、そこには巨大なスコープのついたライフル銃を構えた車掌のジョセフの姿があった。
ユウトは大きく手を振って感謝の意を表す。
しかしジョセフはやれやれといった顔で首を振ると小さく呟いた。
「あれほど油断するなって言ったでしょう……」
もちろんユウトにはその言葉は届かないが……。
「ユウト、大丈夫?」
「あ、ああ……なんとか……」
ユウトは痛みに顔を歪めながらもアリアナに向かって精いっぱい笑顔を作ろうとする。
「オークという魔物よ。こんなに街の近くに現れることは普通ないのだけど、ごめんなさい、油断したわ」
「これがオークか、小説や漫画では知ってたけど本物は迫力が違うな」
その時、木々のさざめきが森の静寂を乱した。
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