閉会式

「えーこの度は」


全種目が終了し、閉会式が始まった。

全く聞く必要のない校長の長話を作業用BGMにし、先ほどまでの回想をする。


選抜リレーではタイムも図っていた。


そのタイムの結果、我が三年Eクラスは全学年の中で二位だった。

そして一位は一年Aクラス。


観戦していた赤沙汰の話によると、どうやら俺は最下位で、しかもかなり差を広げられた状態で桐乃さんにバトンタッチしたらしい。


だが、さすがは桐乃さん。


俺にバトンが渡されてすぐ、もうドーピングか試合目に自慰行為を二桁ぐらいしたと思わせるぐらいの速さで、どんどん前に走っている生徒を抜いていったらしい。


ただ、圧倒的一位を独走していた凛華には本当にあとちょっとのところで追い抜けなかったらしい。

その結果、我がクラスは二位となった。


選抜リレー後、陣地に桐乃さんが戻ってくると、クラス中からいろいろとねぎらいの声が上がった。


ただ、そのどれにも一切反応を見せることなくただ一言


「もうすぐ閉会式が始まるから列を整えて」


と。


幸いだったのは、その声のトーンが選抜リレー前と何も変わらなかったこと。

変わらなかったが、凛華を抜けなかったことに対して何も思うことがないわけがない。


おそらく今前で話を聞いている桐乃さんは過去一機嫌が悪いだろう。


「では、これより各クラスの順位を発表いたします」


あ、そうだった。

まだ各クラスの総合順位を知らされてなかった。


体育祭中は、どのクラスも正確なポイントを公表されないため、もうポイント制だということもすっかり忘れていた。


「それではまず」


最下位のクラスから発表されていく。


毎回思うのだが、このクラスの順位を発表している若干ショタっぽく聞こえる声がやけに癇に障るよな。


てか三年生はEクラス以外すべて最初の方に発表されてるし。

それに対して別に悔しそうなそぶりとかを見せないため、特にグラウンドが騒がしくなることもない。


三年生の発表が終わり、一二年生の順位が発表される。

発表されるごとに感激の声や悔しそうに悲鳴を上げる声が聞こえてくる。

中には涙を流して鼻をすする声も。


別に賞金がもらえるわけでもないのにそんなに悲しむことかね?


もうほとんどのクラスの順位が発表されて、残された上位、五、四、三位も発表されていく。


ここまでくれば大体どのクラスも発表されれば喜ぶ。

だが、二位のクラスはそうではない。


「続きまして、二位」


来ました。

今から発表される内容によって、桐乃さんのクラスに対する処遇が決まる。

もしかりにここで三年Eクラスと言われても、処遇は絶対物理攻撃でお願いします//


「一年、Aクラス」


!?

あ、でもそりゃそうか。

よく考えればちゃんとAクラスに負けたのって選抜リレーだけだったしな。


良かった、最後の種目だけ得点が大きいとか言うクソつまらないノリじゃなくて。


一年Aクラスと言われた瞬間、前にいる桐乃さんの顔が動く。

どうやら、かなり離れたところにいるAクラスの様子 (凛華の様子)を見ているらしい。


俺もそっちに目を向けるが、やはり間にかなりの列がありいくら視力が良いと言っても、表情までは見えない。


ただ、全体として喜んでいるよりも、悔しがっているといった感じだということは分かる。


「そして一位、三年Eクラス」


分かるよ、これを聞いている他クラスの生徒と保護者の気持ち。

本当は今すぐ立ち上がってブーイングしたり"不正だろっ"って負け犬の遠吠えを吐きたいんだろ?


「やったー清人君、それと皆!Aクラスに勝ったよ!!」


と、一応式の最中であるのにも関わらず、桐乃さんが煽り目的で声を上げる。


わざわざ俺とクラスを分けて呼んだもんだから、周りからの痛々しい視線が俺にも刺さる。


桐乃さんの場合は...まぁ容姿が整っているからあからさまに睨むことができないんだろう。


てか今の様子からして別に桐乃さんの機嫌悪くなってないな。

あれか?勝利の核心まで笑うのを我慢する的な。


そこからはトントン拍子で閉会式は終わり、あとは記念撮影とかの自由時間となった。


「ほら、皆写真撮るから小さい人は前に並んで。あ、ちなみに清人君と私は一番前の真ん中ね」


あ、俺の位置は決まっているのね。

というか桐乃さんは身長的に後ろじゃね?

まぁ、それを言ったら俺も前の方に来るべきだが。


「はい、チーズ」


カメラマンがそう言うと、桐乃さんが俺の肩に手を回して引き寄せ、その途中にシャッター音が鳴ったもんだから完全に桐乃さんが俺を口説いているような写真になった。

あ、でも後ろにある完全に作り笑顔も結構インパクトあるから全体的にバランスの整っている写真となった。


「あ、今日は打ち上げするけど、当然みんな来るよね?」


その言葉に、急いで朝回収された勉強用具を持ってグラウンドから去ろうとしているやつらが強く反応する。


「き、桐乃ちゃん」


「ん?何かな?」


これまた勇気のある女子が桐乃さんに質問する。


「そ、その打ち上げって...何するの?」


「ん?別に近くのファミレスでみんなで何か食べようってだけだけどね」


「そ、そうなんだ...よかった」


さっきの脅しの時に使われた"打ち上げ"とは違う意味での打ち上げと分かって安堵する。


まぁだいたい桐乃さんの疑問形は強制を意味するので、全員来ることは確定事項。

もちろん俺もいかなければならない。


あれ?でもなんか俺今日は速く家に帰らなくちゃいけなかったんだっけ...


ま、いっか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る