イケメン系女子の底力

「三年Eクラス!」


またしても審判が俺たちのクラスの方に赤旗を上げる。

これで三年生代表は我らEクラスとなった。


「これで決勝に出られるね!みんな、よく頑張ったよ」


桐乃さんがたった今Bクラスを撃破した俺たちにねぎらいの言葉をかける。


もちろん褒めてくれるのは嬉しいが、正直桐乃さん一人の力でここまで勝ち残ったというのは全員が少なからず思っているため、あまり素直には喜べない。


誰一人汗をかいたり、縄を握りすぎて手のひらから血を流したり、転んでジャージが茶色くなったりとか、他のクラスじゃ一人や二人いるこれらの現象も、我がクラスの誰もがまったく始まる前と同じ状態を保っている。

そして、Eクラス唯一の功労者である桐乃さんも全く疲れた様子は見せない。


「あ、次は観戦だね。みんな、この間に体力回復させておくんだよ」


一、二、三年から一クラスづつが勝ち残っているため、決勝をするための数に合わない。

そのため、一二年だけが準決勝で争い、三年生のクラスは何もせずとも決勝に上がれる仕組みとなっている。


まぁいささか不平等な制度だが、三年生は最後ということで、毎年誰一人不満を漏らさなかった。

しかし、噂によれば今年はなぜか一二年が三年生だけ準決勝で争わないことに抗議してきたらしい。


それを一瞬で黙らせたのがここにいる桐乃さんだということ。


「...やっぱりお一年生はAクラスが勝ち残ったんだね」


桐乃さんの低い呟きを聞いて、グラウンド中央を見てみると、そこには一年Aクラスと二年Cクラスが向かい合っていた。


そして凛華は桐乃さんとは真逆で身長も高いのに最前列に並んでいる。


「へぇ~」


桐乃さんが興味深そうに観察する。

...全員そんな桐乃さんの様子が気になりすぎて全く休めない。


そして破裂音が鳴り響き、一斉に両クラスが縄を引っ張る。


二年Cクラスは何か掛け声をかけながら引っ張っているが、一年Aクラスからは何も聞こえない。


...少し意外だ。

競技が始まる前に円陣を組んでたりしていたもんだからてっきりもの凄く大きな声で掛け声をかけあうと思ったのだが。


やはり掛け声の力は大きいのか、どんどん縄がCクラスの方へと引っ張られていく。


体が前へと押し出されながらも、Aクラスは顔色一つ変えない。

とくに最前列にいる凛華は本当に石化しているぐらい何も動揺しない。


そしてとうとう縄の境目が完全にCクラスの陣地に入ろうとしたとき


「!?」


縄が完全に停止した。


Cクラスの生徒はそれでもがんばって縄を引っ張るが、本当に時が止まったかのように動かない。


その原因は、凛華の腕を見ればわかる。

そう、ただただ強く縄を掴んでいるだけだ。


先ほどの押されているときは、縄を持つ手がプルプルと自慰行為で発射する寸前の俺のように動いていたが、今は一切動かさず、全体重を使って縄の動きを完全に止めている。


この光景にガヤガヤと観客席が騒ぎ出す。

そのタイミングを見計らって、今度は凛華が一歩足を後ろに下げる。

凛華の動きに合わせて、クラスメイト全員が一歩後ろに足を上げる。


「「「「「「「「「「「「...っ!?」」」」」」」」」」」」


それだけでCクラス連中の顔色が変わり、縄が一気にAクラス側に動く。


一回このリズムを成功させられたらもうなすすべはない。


そこからまた一歩、一歩とゆっくりではあるが確実に縄がAクラス側干支引っ張られていく。

Cクラスも何とか対抗しようとするが、それも虚しく最後まで縄を自分たち側に引き寄せることができずに戦いは終わった。


「一年Aクラス!」


審判がAクラス側へと赤旗を上げる。


勝利後のAクラスは、先ほどまでの冷静さが嘘のように大はしゃぎし始めた。


ただ、凛華はその枠には入らず、一人腕組みをしながらその様子を眺めてた。


...かっこよすぎる//


始まってから勝利後まで凛華は一切表情を変えずに、こうして戦いが終わってからも相手への敬意を払うかのような行動をしている。


さすがクール系女子。

さすが剣道女子!

さすが俺を堕とすことだけはある実の妹!


もう今日の夜は、あのイケメン妹に後ろから体を組み伏せられて無理やりメス堕ちさせられるっていう妄想がオカズに決まりだな。

ちょうど"パンっ!"って効果婚も耳の中によく残ってるし。


「あれれ~、清人君?そんなに凛華ちゃんの方を見て固まっちゃってどうしたのかな~」


おっと、凛華に完全に見惚れていたら横から脳筋系ヤンデレが現れた!


「今、何かわたしに対してモノ凄く失礼なこと考えなかった?」


「いえ、滅相もございません」


あぶないあぶあい。

完全に凛華に脳を毒されて、桐乃さんを馬鹿にするかの言葉が頭の中に自動的に浮かんでくる。


「次は凛華ちゃんのクラスと対決かぁ~。これは腕がなるなぁ~」


みんな、勝てる?と不安そうに顔を見つめ合う。


「なんでそんなにみんな不安そうな顔をしてるの?まさか勝てるか不安なのかな~」


そりゃあ、あんなイケメンプレイを見せつけられたらねぇ。

俺以外の男子も女子も、終始凛華に見事魅了されていたし。


「いいみんな。勝てるのか?じゃなくて勝つの。わたしが勝つと言ったら勝つの。そしてみんなはこの自然な摂理を立証させる義務があるの」


なんかまたいろいろと凄いこと言い始めた。


「いいみんな?わたしが後ろから見ているのは相手だけじゃなくてみんなもって言うこと、忘れないでね」


普通の子だったら失禁するぐらい脅すと、また行進の列を作らされる。


...もしこれで負けたら、クラスが桐乃派か凛華派で二分化しそう。

まぁそうなったら桐乃さんが圧倒的な暴力で鎮圧するのは目に見えているが。

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